明日の空(掌編)
あれはなんだろうか。
空を見上げると、真っ青な草原で白い羊達が草を食んでいる。地球の裏側で誰かが眠りにつこうとしているのだろうか。そんなに眠れないのだろうか。ただ暑くて眠れないのか、それとも鼓動が鳴り止まないくらいに悲しいことがあったのか、はたまた次の日は好きな子に告白するのだろうか。こんなにたくさんの羊は中々お目にかかれない。僕はただ、どこかの誰かが安らかに眠れることを祈ろう。
あれはなんだろうか。
空を見上げると、茜色に染まったを海を魚達が泳いでいる。どうしてこの魚達は同じ方向を向いて、あてもなく泳ぐことができるのだろうか。その旅の目的を知ってか、知らなくてか、同じ速度で泳ぎ続ける。お腹が空いたりしないのか。僕は少し空いている。そんなことを考えながら、この海の色に少し目頭を熱くした。今はただ、遠い日の郷愁に耳を澄ませてみる。
あれはなんだろうか。
空を見上げると、黒い幕が降り、異邦人たちの舞踏会が行われている。きらきら瞬くドレスを見に纏い、華麗なステップで舞う。そんな光景に誰かさんを重ねながら、僕も舞踏会に参加する。君はベガで、僕はアルタイル。すりガラス越しから溢れる光のように輝く舞台の上で踊りながら、誰かが君と僕を線でつなぐ。そんなことをくるくると描きながら、目を閉じる。今はただ、思い出と思い出をつないで遥かな空へ投げてみる。
明日は何をしよう。いつかの夢の数を数えながら、思い出の輪郭をなぞり、まだ見ぬ景色に
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