月の兎(掌編)
月には兎が住んでいるのだろうか。夜風に当たりながら月を眺める。国によっては
今宵は満月、適当にウィスキーロックを傾けながら月を眺める。元々お酒に強いわけでもないので、すぐに顔が
手で熱を確かめながら思うのは月の兎の幸せだ。
笑顔で月を見ている奴なんて初めて彼女ができた男や、天文オタクくらいではなかろうか。そんなことはどうでもいいのだが、どうもお酒のせいで
そろそろ頃合いだと思って、ポケットにしまっておいた白い封筒を取り出した。好きだった人から貰った手紙だ。「別れたら捨てて」と言われてはいたが、そうもいかないのが男の
か弱いが芯のある綺麗な文字からは想いが
私は死んだら月に住むって決めてるんです。
ですから私が死んだら、
たまに月を見上げてみてください。
そのとき微笑んでくれたら、
またどこかで会えそうな気がします。
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