第340話 第五階層の合言葉
「皆、大丈夫?」
「あ、ああ……」
「いったい何が起きたでござ……いや、起きたんだ?」
「危うく漏らす所だった」
「きゅろろっ……(←雨に打たれて風邪ひきそう)」
「ぷるる~んっ(雨のお陰でテンションMAX)」
他の者たちの様子を確認すると、どうやら全員に怪我はなく、そもそもゴーレム・キングに直接接触する事もなかったので被害は受けていない。しいて言うならば全員が雨に打たれて水浸しになってしまったが、死ぬよりはましだろう。
ゴーレム・キングの残骸の方は完全に凍り付き、雨水に打たれた状態で放置されていた。露出した核の方に関しては流石に体長が30メートルも存在しただけはあって軽く1メートルを超える巨大な核が露出されていた。
「うわ、見てくださいよ!!この核の大きさ……凍ったお陰でどうにか爆発は防げたようですけど、これだけでもきっと凄い価値がありますよ!!」
「まさか、これを持っていこうと言い出すつもりじゃないだろうな……」
「いや~……流石にこれは持ち帰れませんよ。下手に刺激すれば大爆発を引き起こしそうですからね、残念ですけど諦めましょう」
リリスはゴーレム・キングの核を前にして非常に残念そうな表情を浮かべるが、いつ大爆発を引き起こすかもしれない危険物を持ち帰るわけにはいかない。レイナ達はゴーレム・キングの脅威から逃れる事には成功したが、問題はまだ残っていた。
「へくちっ……ううっ、流石に寒くなってきたな」
「おい、お前らも瓦礫を退かすのを手伝え!!このままだと風邪をひくぞ!!」
「ああ、悪い悪い……」
「あと、もう少しだ。皆、頑張ってくれ」
オウソウの言葉にレナ達も転移台が存在する洞穴の出入口を塞いだ瓦礫の撤去を手伝い、多少時間は掛かったが全ての瓦礫の撤去を行う。流石にこれだけの人数の戦闘職の人間がいると大きな瓦礫でも運び出すのには時間は掛からず、どうしても運び出せない瓦礫の場合はレイナがデュランダルで破壊を試みる。
雨が降っている中で全員が力を合わせて瓦礫を運び出すと、運が良い事に洞穴の奥部は崩れておらず、中に入る事が出来た。全員がまずは洞穴の中に入って雨宿りすると、リルがレイナに耳打ちを行う。
「レイナ君、疲れているだろうが悪いが皆より先に行って転移台の修復を頼む」
「あ、はい……でも、多分ですけど直さなくても俺なら合言葉を見抜くことが出来ると思いますけど」
「本当かい?それなら助かるが……」
レイナの言葉にリルは驚くが、解析の能力を転移台に使えばレイナは合言葉を読み取る自信はあった。レイナはそれでも念のために転移台が存在する洞穴の奥へと進み、皆より先に洞穴の最深部へと辿り着く。
前回に訪れた時は意識を失っていたのでよく確認できなかったが、火竜の幼体によって遊び場と化していた転移台を確認してレイナは頬を掻く。確かに合言葉が刻まれている箇所は火竜の鉤爪らしき物で削り取られ、解読は不可能な状態だった。
(これは酷いな……修復できるといいけど。よし、解析!!)
とりあえずは解析の能力を発動させ、レイナは転移台の修復を試みた。視界に詳細画面が無事に表示されるのを確認すると、まずは合言葉の確認を行う。
『転移台――かつて勇者が作り出した転移装置。行き先は他の転移台のみに限られ、合言葉を用いなければ発動しない。第一階層は「草原」第二階層は「荒野」第三階層は「砂漠」第四階層は「密林」第五階層は「宝物」』
「あれ……これって、もしかして転移台に解析を使用していれば最初から合言葉が分かったの!?」
視界に表示された画面を見てレイナは驚き、最初から全ての階層への合言葉が表示されているという事実に愕然とする。今まで苦労して各階層を攻略してここまで辿り着いたというのに、まさか解析の能力だけで他の階層の合言葉を見抜くことが出来るな予想さえしていなかった。
今までの苦労は何だったのかとレイナは項垂れてしまうが、とりあえずは合言葉が存在する事は幻の第五階層が実在した事が証明された。合言葉が判明した以上は修復の必要もなく、早速だがレイナは他の人間を呼び出す事にした。
――それからしばらくした後、調査隊の全員が転移台へと辿り着くと本当にこんな洞穴の中に転移台が存在した事に誰もが驚き、同時に第四階層に転移台が存在した事から第五階層が存在する事が証明された。幻の第五階層が実在したというだけでも驚愕だが、リルは改めて今回の大迷宮に挑んた理由を話す。
「我々の目的はこの巨塔の大迷宮の第五階層を攻略し、大迷宮の完全制覇と素材を手に入れる事だ!!この大迷宮の攻略を果たしたとなれば我々の存在はこの国だけではなく、他国にも知れ渡るだろ!!」
『はっ!!』
リルの言葉に全員が遂に第五階層へ向かう事を意識すると、疲れが吹っ飛んでしまう。大迷宮の攻略を果たせば彼等は英雄として凱旋出来る。全員が転移台に乗り込むと、早速レイナが合言葉を告げた。
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