第311話 火属性の魔石の採掘
「これは……」
「火属性の魔石の原石、火山の影響で生まれたと思う」
「そうか、これが魔石なのか……何度か見た事はあるけど、本当に火山で採掘できるんだ」
こちらの世界の火属性の魔石は主に熱帯地域でしか採掘されず、特に火山のような場所では良質な火属性の魔石の原石が発掘される。この原石を持ち帰って加工すれば火属性の魔石へと変わるという。
レイナはこの世界の魔石の価値は良く分からないが、仮にも魔術師であるネコミンは壁や天井に埋め込まれた原石の数や大きさを見て驚きを隠せず、鼻息を鳴らす。
「むふ~っ……これは凄い、これだけの量の魔石を持ち帰れば私達は金持ちになれる。大きな屋敷だって建てられる」
「そんなに凄いの?」
「火属性の魔石は人気が高い、だからいくら持ち帰っても売れ残るなんてことはない。魔術師以外の人たちもよく使う魔石だから」
「そっか、この世界では魔石を使って火を扱っているんだっけ」
この世界では魔石を原料にして生活が成り立っているといっても過言ではなく、例えば一般人でも火を扱いたいときは特別製の魔道具を使用して火属性の魔石を利用し、火を起こす。前にレイナはリル達が所持するガスコンロ型の魔道具を見たことがあり、あの時はガス缶の代わりに火属性の魔石を設置して火を点けていた事を思い出す。
魔術師だけが別に魔石を扱えるというわけでもなく、一般の人間でも特別な魔道具を扱えば魔石の力を引き出す事は出来る。例えば水属性の魔石を使えば生活に必要な水を生み出し、地属性の魔石の場合は細かく砕いて肥料にすれば大地に栄養を与え、農作物も良く育つらしい。
「レイナ、ツルハシを持ってる?これだけの魔石、持ち帰ればきっと皆喜ぶ」
「ツルハシか……でも、刺激して壊したら爆発とかしない?」
「大丈夫、魔石は簡単には壊れる事はない。それに壊しても問題ない、火属性の魔石は火や熱を近づけなければ反応する事はないから」
「なるほど……でも、どうしてこんな場所にこんな洞穴があるんだろう?」
ネコミンの言葉を聞いてレイナは鞄の中から適当な道具を取り出し、文字変換の力を使って採掘のための道具を作り出そうとするが、ここで疑問を抱く。どうして火竜が住み着くような場所にまるで火属性の採掘が出来る洞穴が存在するのか疑問を抱く。
(昔、誰かがここで火属性の魔石の採掘を行っていたのかな?でも、それにしては……)
レイナは足元に視線を向け、地面に落ちている魔石の破片に気づく。魔石の破片を拾い上げたレイナは周囲を見渡すと、地面のあちこちに魔石の残骸が散らばっている事に気づいた。
洞穴の一番奥には大きな空間が広がり、地面の至る場所に魔石の破片が散らばっている光景を見て不思議に思う。仮にこの洞穴が人間が作り出したとしたら、大迷宮が封鎖されてから相当な年月が経っているはずである。しかし、岩壁や天井を確認すると最近まで誰かが採掘を行っていたような痕跡が残っていた。
(この壁の部分、明らかに壁が削り取られている。けど、何か道具を使ったというよりも、まるで動物の爪のような跡だけど……まさか、ここって)
壁際に刻まれた爪痕を発見したレイナは猛烈に嫌な予感を覚え、この洞穴の正体が人間が作り出した物ではなく、他の生物の仕業ではないかと考えた。その直後、最後尾を移動していたシロがうなり声を上げる。
「グルルルッ……!!」
「シロ君?どうしたの?」
「……レイナ、構えて」
ネコミンも何かを感じったのか、彼女は珍しく目つきを鋭くさせてネイルリングを装着し、緊張した面持ちで自分達が通った通路を睨む。すると入口の方から足跡が響き、レイナはアスカロンを引き抜きながらも懐中電灯で照らす。
――姿を現したのは先ほどレイナが遭遇した火竜と同じ姿をした生物であり、外見の方は瓜二つだが身体の大きさは大きく違い、恐らくは火竜の幼体だと思われた。だが、それでも大きさは2メートル近くは存在し、翼の方は親と比べるとまだ小さく、背中に折りたたんでいた。
洞穴の中に入り込んできた火竜の子供を見てレイナ達は身構えると、火竜の子度は自分の「餌場」に存在するレイナとネコミンとシロを見て首を傾げ、不思議そうな声を上げる。
「シャアッ……?」
「か、火竜……まだ子供みたいだけど、見つかった」
「これが火竜……」
「ガアアッ!!」
火竜の子供と相対したネコミンは獣人族特融の優れた本能が危険を知らせ、猫耳と尻尾を逆立たせる。一方でシロの方も戦闘態勢に入って威嚇を行うと、火竜の子供は黙って見つめる。
動こうとしない火竜の子供に対してレイナは戸惑い、どうするべきかを考える。ここで火竜の子供を殺せば親が怒り狂って暴れるのではないか、一度引いて体勢を立て直すべきか、色々と悩んでしまう。だが、そのレイナの考えを読み取ったように火竜は口を開くと、大きな鳴き声を上げた。
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