第245話 合流
キングボアの亡骸の前に移動したレアは様子を調べ、まずは死因を調べた。だが、調べてみてもボアの肉体に損傷など見当たらず、まるで唐突に心臓が停止したかのようにキングボアは死んでいた。
「……本当に死んでるな」
「うん、でも仕方なかった。倒すしかなかった」
「そうだね」
第二階層の階層主と思われるキングボアを倒した事は喜ばしく、これで次の階層主が現れるまでは第二階層の最大の脅威は取り払われた。だが、問題があるのはキングボアがあまりにも巨大すぎて素材の回収に苦労しそうだった。
キングボアというだけはあって通常種のボアよりも毛皮も牙も骨も当然ながら肉の方も価値は高く、持っていけるだけの素材の回収は出来れば行いたかった。だが、あまりに長居すると他の魔物達に気付かれる恐れがあり、その場合は戦闘を避けられない。
「さてと、どうしようかな……俺達の鞄だと持ち込める量は問題ないけど、ある程度は切り分けないと鞄の中に入らないからな……」
「仕方ない、必要な物だけ持って帰る」
レアは切断力に優れたアスカロンを取り出し、とりあえずは解体を行う。ボアの最大の武器であるのはやはり牙であり、この牙は通常のボアでも研ぎ澄まされた鋼鉄の如き強度を誇るため、ボアの肉よりも実は価値が高い。
ボアの中でも最上位種のキングボアの牙となると更に価値は高まり、どうにかアスカロンを使ってレアはキングボアの牙を切り離す事に成功したが、流石に体長が30メートルも超えたボアの牙となると相当に大きかった。
「ふうっ……どうにか切り取れたけど、凄い大きさだな」
「持って帰るのが大変そう……先っぽの方だけ切って持って帰る?」
「そうだね、それしか方法がないかも……」
地面に倒れた牙を見てレアはどう見ても鞄に入る大きさでもなく、持ち帰るにしてもこれほど大きいとなると運ぶのも難しい。そこでレアは牙の先端部分をアスカロンで切り裂き、どうにか鞄の中に入れた。
「そっと入れてね……よし、どうにか入った」
「残った牙はどうするの?」
「とりあえず……ここに置いていくしかないかな。勿体ないけど持ち帰れないしね」
牙の先端部だけを回収すると、残りの牙に関しては残念ながら放置するしかなかった。運び出す方法がなければ素材の回収は無理に行わず、次にレアはキングボアの毛皮の一部を剥ぎ取り、最後に肉の回収を行う。
「肉を切り取ったらすぐに祭壇に向かった方が良い。他の魔物が血の臭いを嗅ぎつけてやってくる前に」
「そうだね、じゃあ必要な分だけ……」
「お~い!!そこにいるのはレアさんですか~!?」
「やっと見つけたでござる!!」
「ぷるる~んっ!!」
「きゅろっ!!」
解体の作業中、レア達の後方から聞き慣れた声が響き、二人は笑顔を浮かべて振り返るとそこには自分達の元に駆けつけるリリス達が存在した。4人とも無事だったらしく、全員が合流出来た事を喜び合う。
「クロミン!!それにサンとハンちゃん!!あとリリスさんも……無事で良かった!!」
「あれ、私だけなんかおまけみたいな感じで言いませんでした?ねえ、ちょっと」
「レア殿とネコミン殿も無事で良かったでござる!!それにしても……これはどういう状況でござる?」
「このボア、でっか!?」
「ぷるるっ……(涎を垂らす)」
「私とレアで倒した。それで解体作業中」
再会を喜び合うのも束の間、リリス達はキングボアの亡骸を前にして唖然とした表情を浮かべ、一方でクロミンの方は牙竜だった頃の本能が蘇ったの巨体な獲物を前にして涎を垂らす。
レアはここまでの経緯を話すと、リリス達は第二階層の階層主と思われるキングボアを倒した事に驚いたが、しかも倒した方法がレアの解析と文字変換の能力と思い知らされて更に動揺する。
「ステータスの「状態」を即死にしたって……それ、最早状態じゃないですよ。もう死んでるんだから状態どころじゃありませんよ」
「いやはや、こんな大物を一瞬で倒すとは……流石は勇者殿でござる」
「うん、でも文字変換が使えなければまずかったと思う」
「でしょうね、こんな化物とまともに戦っていたら私達が居ても勝てなかったでしょうしね」
「それでもレアは凄い!!」
「うん、レアは凄い!!」
「ぷるるんっ(えっへん)」
「なんでクロミンが偉そうにしてるんですか」
キングボアを倒したというレアに仲間達は称賛の言葉を浴びせ、そんな彼女達にレアは内心では安堵した。
(良かった……皆、俺を怖がってないや)
解析と文字変換を使用すればどんな相手だろうと一瞬で殺す事が出来ると判明したレアに対し、特にリリス達は怯える様子もなく、今まで通りにレアに接してくれた。自分の側に相手を瞬時に殺す能力を持つ存在が居れば恐れられるのではないかと思ったレアだが、彼女達の反応が変りない事に安心する。
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