第196話 国王の狙い
「滋養強壮の効果が強い料理だと何か問題があるのでござるか?別に身体に悪い影響を与えるとは思えないでござるが……」
「ふっ……これだからハンゾウは子供」
「何をっ!?ネコミン殿だって拙者とそう変わらないではないでござるか!!」
「こら、声を抑えろ……聞き耳を立てられていたらどうする?」
人間よりも聴覚が鋭い獣人族ならば扉越しに部屋の中の様子を音で知られる可能性もあり、出来る限り声を抑えてレア達は話し合う。この状況で使用人の中でも若く、容姿が整った女性達を向かわせ、更に食事が滋養強壮の高い料理を用意する辺り、国王の目的が伺えた。
「大方、レアさんに滋養強壮の効果がたっぷりの料理を食べさせた後、女性使用人達に世話をさせてあわよくばレアさんの方から女性使用人に手を出させようとしたんでしょうね。さっきの人達の服装も見てました?露出が多い恰好をしてたでしょう?」
「そういえばそうだったような……でも、どうしてそんな事を」
「恐らく、肉体関係を築いた相手がいればこの国からレアさんが離れがたい状況を作り出します。それにもしもレアさんの子供が授かれば国にとっても大きな利益になりますからね。昔から勇者の子孫は優秀な方ばかりですから……」
「子供を利益って……なんか、嫌な言い方だな」
「まあ、今の言い方は私が悪かったですね。ですけど、国王が勇者であるレアさんを歓迎するように見せかけてこの国から離れさせないようにしているのは事実です」
「むうっ……という事はレアがここにいる間は女の人にもてもて?」
「う~ん……こんな形でもてもてと言われても嬉しくないな」
勇者という存在を引き留めるため、配下とはいえ女性使用人を送り込んできた国王のやり方にレアは眉を顰めるが、国王としては国の利益のために勇者であるレアはどうしても国に留めておきたいのだろう。方法はともかく、他の国に渡したくないという気持ちはリル達も同じである。
だが、今後も城にいる間は女性使用人に誘惑されたり、あるいは食事に精力剤のような効果を持つ料理を用意され続けるのはレアの精神的にも辛い。そこでリリスは早急に手を打った方が良いと考え、リルに顔を向けた。
「王女さん、こうなる事はもう予測してたんでしょう?ここへ来る前にもう良い方法を考えてるんじゃないですか?」
「ふっ……お見通しだったか。流石は軍師だ」
「リル様、何か思いついたのですか?」
リルの意味深な表情に良案があるのかと全員が顔を向けると、リルは頷いて部屋の中の面子を振り返る。そこにはリルが集めた美少女たちが勢ぞろいしており、彼女達を利用してリルはとんでもない作戦を語る――
――その日の夜、国王の命令によって深夜を迎えた時刻に王城内でも綺麗どころの女性の使用人が集まり、中にはわざわざ城下町から呼び寄せた娼婦も存在した。彼女達はレアの部屋の前に集まり、誰が最初に入るのかを話し合う。
「ここに勇者様がいらっしゃるわ……それで、まずは最初にお相手するのは誰かしら?」
「その前に聞きたい事があるのだけど……本当に勇者様と関係を結んで子供が出来たら手厚く出迎えてくれるのよね?」
「国王様が直々に言ってくださったのよ。もしも勇者様と子供が出来た物は貴族に取り立てるとね……それに勇者様の顔立ちを見たでしょう?ちょっと女っぽいけど、中々綺麗な顔をしてたわ」
「ええ、お姉さんもそそられるわ……年齢も若いし、一番の食べごろね」
この場に集まった女性達は国王に命令され、強制的に集められたわけではなく、自分達の意思で訪れてきた者達ばかりである。レアは顔立ちは女性のようだが、逆に言えば綺麗な顔をしており、しかも年齢が若いという点もあって年下好きの女性からは人気が高かった。
相手は勇者というだけもあり、国王も彼との子供が出来た女性は貴族にして迎え入れると約束してくれた。千載一遇の好機に数多くの女性が希望するが、その中でも綺麗所の5名を集めて彼女達をレアの使用人として送り込んだのだ。
「さて、それじゃあ誰が最初に入る?あの料理を食べたのならきっと今頃は眠れずにベッドの中で悶えているはずよ」
「ふふっ……もしかしたら我慢出来ずにもう自分で致してるかもしれないわね」
「それは駄目よ!!そんな事をしたら無駄な体力を使っちゃうじゃない!!」
「落ち着きなさいよ、こうなったら全員で行くのはどうかしら?これだけの面子なら、きっと勇者様の好みの人もいるはずよ」
「それもそうね、じゃあ中に……ん?ちょっと待って、何か声が聞こえない?」
女性の一人が鍵を用意して開けようとすると、中の方から声が聞こえ、聞き耳を立てる。すると何故かレアではなく、複数人の女性の声も聞こえてきた。
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