第194話 今後の白狼騎士団の方針

「……まあ、確認しようにもハンゾウなんて名前の人は簡単には見つかりそうにないでしね。とりあえず、レアさんの能力の凄さはよく分かりました」

「そ、そうでござるな……それにしてもこの聖剣、凄いでござるな。流石はヒトノ帝国の大聖剣でござる」

「あ、それ返さなくていいですよ。俺はもう持ってますから、それはもうハンゾウさんの物です」

「なんとっ!?」



レアに聖剣を渡そうとしたハンゾウであったが、既にレアは自分のフラガラッハを所有しており、そもそもハンゾウのフラガラッハの所有者は既に彼女の名前になっているので逆に受け取ると拒絶反応を引き起こす危険性もある。


まさか自分が聖剣を受け取る日が来るとは夢にも思わなかったハンゾウは戸惑うが、フラガラッハ自体は気にいったのか嬉しそうに抱き上げる。



「ほ、本当にいいのでござるか?後で返せと言われても返さないでござるよ!?」

「そんな事言いませんよ……」

「おおっ……感謝するでござる!!これで拙者も立派な女騎士になれそうでござる!!」

「いやいや、ちょっと待ってください。それをそのまま使うのはまずいでしょう、フラガラッハは有名な聖剣ですからね。そんな物を使っていたら絶対に怪しまれますよ」

「あらっ!?」



ハンゾウの言葉にリリスがツッコミを入れると、確かに彼女の言葉は一理あり、本来はヒトノ帝国のアリシア皇女しか所持していないはずのフラガラッハをハンゾウが使うの問題があった。


フラガラッハは有名な聖剣なのでその形状も能力も知れ渡っており、ハンゾウは普段からフラガラッハを使用しているところを見られれば面倒な事態んい陥ってしまう。



「そ、それならば拙者はこのフラガラッハをどうすればいいのでござる?」

「とりあえず、背中にでも装着しておいて普段は別の武器で戦えばいいじゃないですか。装備していても攻撃力3倍増の効果はあるんでしょ?」

「うん、それは間違いないよ」

「ううっ……女騎士らしく、やっと剣で戦える日が来ると思ったのに残念でござる」

「といっても絶対に使う機会がないとはいえないさ、いざという時は聖剣を抜いて戦う日がくるかもしれない。そう考えればその聖剣はハンゾウの奥の手と言えるだろう?」

「おおっ……確かにそんな風に考える事も出来るでござるな!!流石はリル殿!!」

「そんな事で納得するのかお前は……」



リルの「奥の手」という言葉にハンゾウは目を輝かせ、そんなハンゾウにチイは呆れてしまうが、とりあえずはハンゾウに渡したフラガラッハは彼女に管理を任せる。話が終わるとリリスは再び考え込み、レアに訪ねた。



「レアさん、もう一度聖剣を作って貰えますか?」

「え?リリスさんも欲しいの?あ、でも名前の文字数が一緒じゃないと無理だと思うけど……」

「違いますよ、今度はレアさんが知らない聖剣を作り出せるのかどうかを試して欲しいんです」

「俺が知らない聖剣を……?」

「そうですね、レアさんが作った事がない聖剣を試しに「剣」という一文字だけで作り上げてください」



リリスの言葉にレアは戸惑いながらも新しい皿を取り出すと、それを解析の能力で詳細画面を開き、今度は自分が作り出した事がない聖剣の名前を思い出す。



「俺が今までに作った事がないというと……デュランダルとかレーヴァティンかな。どっちが作って欲しい?」

「そうですね、もしも作り出す事に成功するとデュランダルの場合だと扱いが難しそうですし、ここはレーヴァティンにしましょう」

「分かった。じゃあ、やってみるね」



詳細画面を確認してレアは指先を向けると、先ほどの要領で名前を「剣」と変更させる。但し、今回の場合は存在も知らない聖剣を作り出す事になるため、上手く行くのか不安を抱きながら文字変換を行おうとすると、画面が更新された。



「おおっ!?また光ったでござる!!」

「まさか、レーヴァティンを作り出したのか!?」

「……いえ、これは」



皿が光り輝き、別の形状へと変化を果たすが、出来上がったのはシンプルなデザインの長剣だった。それを見て他の者達は呆気に取られ、作り出したレア自身も剣のデザインを見て唖然とする。


どうみても外見は普通の剣にしか見えず、それにレアは過去に武器屋で販売していたレーヴァティンのレプリカを購入した事があるが、外見は全く似ていなかった。



(これが……聖剣?いや、まさか……解析)



レアは作り出した長剣に解析を発動させて内容を調べてみるが、表示された画面の確認を行う。



――ロングソード――


能力


・無し


詳細:鋼鉄製の長剣、特に能力は無い。


―――――――――



表示された画面はあまりにも簡素な説明文しか記載されておらず、しかも能力も何も付与されていない。どうみても聖剣とは思えず、状況的に考えてもレーヴァティンの製作に失敗したのだろう。



「えっと……ごめんなさい、失敗したみたいです」

「なるほど……どうやら存在その物を詳しく把握していない武器の場合はいくらレアさんでも作り出せないようですね」

「で、でもフラガラッハの時は成功しましたよ?」

「それはレアさんが「フラガラッハ」という文字を打ち込んだからじゃないですかね?つまり、初めての聖剣を作り出す場合は名前をちゃんと打ち込むか、あるいは模造品を利用して「模造」を「本物」に書き換えるしかなさそうですね」

「あ、確かに……それならいけると思う。元々、俺が持っていた聖剣もそれで作り出したし」



リリスの言葉にレアは自分の文字変換の能力の条件を思い知らされ、改めてリリスの推理力に驚かされる。流石はリルが「軍師」と評するだけはあり、知略においては彼女に勝る人間は騎士団の中には存在しないという。

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