第184話 合流、しかし……
――街道にて得体の知れない強い気配を持つ大男とすれ違った後、レアは無事に王城の近くに存在する路地裏へと辿り着く。
周囲を注意しながら路地裏に入ると、既にチイとネコミンが存在し、その傍にはクロミンを抱えたサンがシロとクロを追いかけ回していた。
「きゅろろっ♪」
「ぷるるんっ♪」
「「キャンキャンッ♪」」
「おお、なんか微笑ましい光景だな……結構緊迫した状況なのに」
「むっ!?その声は……レアか!!」
「……全然気づかなかった」
レアが声を掛けるとチイとネコミンは驚いて振り返り、二人の目には唐突にレアが現れたように見えたのだろう。もう姿を覆い隠す必要はなく、技能を解除してレアは二人の元に近付くとサン達もレアに気付いて駆け寄る。
「きゅろっ!!れあっ、おかり!!」
「おおっ、サンが喋った!?でも、おかりじゃなくておかえりだよ?」
「おかえりっ?」
「少しずつではあるが、私達の会話を聞いて人の言葉を話せるようになってきているようだな。いや、それよりもお前も無事だったのか……良かった」
「チイ、さっきまでレアの事を心配しておろおろしていた」
「こ、こら!!余計なことを言うんじゃない!!」
二人とも無事に追跡者を撒いて王城に戻って来たらしく、これで全員が合流を果たす。だが、重要なのはここからであり、王城に入っても安全とは限らない。
「よし、城へ向かうぞ。私達から離れるんじゃないぞ」
「襲われたりしないかな?」
「その可能性はあるが、ここまで来たら引き返す事は出来ない。絶対に私達から離れるんじゃないぞ」
「怖いなら手を繋ぐ?」
「いや、いざという時に戦えなくなるから遠慮しておくよ」
「そう、残念」
チイとネコミンと共にレア達は王城へと向かい、その後ろをシロとクロに乗り込んだサンとクロミンも続く。城門は閉じられているが見張りの兵士は待機していたため、チイが話しかける。
「白狼騎士団、副団長のチイだ。今、任務を終えて戻って来た」
「おお、チイ副団長!!御帰りが遅いので心配していましたよ!!」
「勇者様はお連れになりましたか?」
「ああ、ここにいる」
見張りの兵士の質問にチイはフードで全身を覆い隠したレアを促すと、兵士達は緊張した面持ちで頭を下げ、即座に城門を開く。
「さあ、中にお入りください!!国王様は玉座の間でお待ちになっています!!」
「いや、その前に私はリル様の元へと戻る。それと、ここへ来る途中に浮浪児を見つけた。この子供の保護はネコミンが行うから、お前達も手を貸してくれ」
「え?浮浪児ですか?」
「きゅろっす!!」
チイの言葉に兵士は戸惑うが、クロミンを抱えたサンが片手を上げて兵士達に挨拶のような声を上げる。サンを見て兵士達は戸惑うが、ネコミンが彼女の後ろから抱きしめて説明した。
「どうやら頭を強く打ったみたいで、記憶が混濁して上手く言葉が話せないみたい。だから、しばらくの間は私が面倒を見る」
「え?いや……なにも白狼騎士団の方々がそこまでしなくても……」
「この子の肌と耳を見て、もしかしたらダークエルフかもしれない。ダークエルフの子供は奴隷商人に狙われやすいから放置は出来ない。それにリルだったら気に入って騎士団に入れるかもしれない」
「あ~……」
「確かにリル様ならあり得そうだよな……」
リルの女好きの性格は兵士達にも伝わっているらしく、サンを連れ帰って来たネコミンに対して彼等は特に注意もせずに先に通す。本来ならば一刻も早く国王の元へ向かうべきなのだろうが、チイとネコミンは先にリルへと報告するためにレアの事を兵士達に任せた。
「勇者殿の案内はお前達に頼む。くれぐれも言っておくが、失礼な態度を取るんじゃないぞ?この国の力となり得るかもしれない人なんだからな」
「は、はい!!分かりました!!」
「ですが、勇者様だけをお連れするのは問題があるのでは……」
「当然だ、だからお前達は勇者殿を客室の方に案内すればいい。すぐに私達は戻ってくる」
「そ、そうですか。そういう事ならお任せください」
「では、こちらへどうぞ勇者様」
チイの言葉に兵士達は戸惑うが、本当に二人はリルの報告のために城内の彼女の部屋に向かい、残されたレアは見張りをしていた兵士の二人組に案内してもらう。移動の途中、兵士達はちらちらとレアの様子を伺い、自分達が思っていた以上に綺麗な顔立ちをした少年に戸惑う。
レアの方は特に兵士達に顔を向けられても愛想笑いを浮かべるだけで言葉は口にせず、黙って二人の後に続く。ここまではリルの作戦通りであり、敢えてチイとネコミンと離れたのは隙を作るためであった。レアは城内の廊下を歩く途中、他の兵士や使用人に見られて驚いた顔を浮かべられる。
(……今の所は作戦通りだな。さて、上手く引っかかってくれるかな)
敢えて護衛の二人と別れ、城内の人間達に姿を晒しながらレアは兵士達の案内で廊下を歩いていると、案の定というべきか彼の前にある人物が立ちはだかる。
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