第152話 解析の進化

(今までは解析を発動させるときは詳細画面は1つしか出来なかったと思うけど……)



これまでのレイナは「解析」を発動させた際は詳細画面は一つしか表示できず、解析を繰り返して発動させる際は前の段階で表示した画面は自動的に消えてしまう仕組みだった。しかし、現在は詳細画面を2つも同時展開を行えるようになり、視界にはリルとチイの詳細画面が表示されていた。



(よし、なんだかよく分からないけど……とりあえずはあの男も解析しよう)



一番厄介そうな暗殺者の男に視線を向け、レイナは解析を発動させる。すると視界に3つ目の画面が表示され、男の正体を見抜く。



―――メイ・ルン―――


種族:人間


職業:暗殺者


性別:男性


年齢:27才


状態:健康


レベル:37


特徴:ヒトノ帝国出身の暗殺者、元々は冒険者ではあったが仲間内から名前の事でいじめられ、冒険者家業が嫌になって名前を変えてケモノ王国へ移住する。現在は盗賊に雇われ、人攫いを行っている


―――――――――――



「ぶふっ!!」

「あっ!?」

「レイナ?どうかした?」

「い、いや……何でもない」



視界に表示された画面を見てレイナは驚きのあまりに堪え切れずに噴いてしまい、画面に表示されたあまりにも可愛らしい名前に動揺を隠せない。


シャドと呼ばれている男の名前が「メイ・ルン」である事、そして今までは表示されていなかった「職業」の項目まで表示されている事にレイナは驚く。



(解析の能力も変わってる……もしかしてレベルが上がった事で能力も強化されたのか!?)



詳細画面が以前よりも解析した人間の内容を表示するようになった事にレイナは驚き、ここで自分のレベルの事を思い出す。色々とあって現在のレイナのレベルは「30」を超え、その影響なのか「解析」の能力も変化していた。


より進化した解析の能力によって開いた詳細画面を確認すると、レイナはメイ・ルンという男のレベルと職業を確認する。そして色々と考えた結果、この男を無力化するためにレイナは指先を画面のある部分に近付けた。その様子を見てシャド改め「メイ」はレイナに警告を行う。



「待て、動くな!!動けばその女を殺させるぞ!!」

「……もう遅いよ、メイさん」

「なっ!?何故お前がその名前を!?」

「メイ?」

「どうしたんですかシャドさん?そんなガキに……」



レイナがメイの名前を口にした瞬間、彼は慌てふためいてどうしてレイナがその名前を知っているのかと混乱に陥った。その隙にレイナは指先を動かしてレベルの項目を「37」から1文字だけ変換して「36」にする。その直後にレイナはメイに掌を伸ばして虚勢を言い放つ。



「俺の魔法を喰らえっ!!」

「はっ!?何の真似……だぁあああっ!?」

『えっ!?』



掌を向けられたメイは訝し気な表情を浮かべたが、直後に詳細画面が更新されてレベルの項目が変化すると、メイは全身の力が抜けたように倒れ込む。身体が思うように動かず、気力さえも奪われたように動けなくなった。その様子を見た3人の盗賊は驚くと、レイナは続けて彼等にも手を伸ばす。



「さあ、次は誰が俺の魔法を喰らいたいんだ!?」

「こ、こいつ……魔術師だったのか!?」

「そんな馬鹿なっ!!杖も魔石も持ってないじゃないか!!」

「止めろ、その手を向けるな!!この女がどうなってもいいのか!?」



レイナが掌を向けると盗賊3人は倒れ込んだメイを見て怯えた表情を浮かべ、チイを人質にしてレイナを大人しくさせようとした。だが、それを予測していたレイナは解析の能力を発動して今度は3人分の詳細画面を一気に開けるのかを試す。



(解析!!)



心の中で解析を発動すると、次の瞬間にレイナの視界に3つの画面が表示され、盗賊達の名前とステータスが明かされた。視界の端には先に詳細画面を開いた3人の画面が開いたままのため、合計で6つの詳細画面を開く事に成功する。


画面が多すぎて少々視界は悪くなったが、今までは一度に1つの物しか詳細画面を開く事が出来なかったが、どうやら複数人の場合でも現在のレイナならば画面を同時に開く事が出来るようにもなっていた。



(実験成功、やっぱり解析の能力も強化されてるんだ!!)



レイナは心の中で喜ぶ一方、すぐにチイを助けるために3人のレベルの項目に人差し指を伸ばし、瞬時にレベルを上昇させた。その結果、3人は悲鳴を上げて倒れ込む。



『ぎゃああああっ!?』

「ふうっ……危なかった」

「おおっ……流石はレイナ」

「た、助かったよ……がくっ」

「あ、リルが死んだ……手遅れだった」

「いや、生きてるよ!!」



意識を失ったリルにネコミンが質の悪い冗談を告げる中、どうにか暗殺者と盗賊3人組を無効化する事に成功したレイナはすぐにチイとリル、それとシロとクロの治療を行うために行動を開始する。




――ちなみにテントの下敷きになったクロミンは完全に眠っていたのでレイナ達のピンチには気付かず、結局は後でテントを片付ける時にネコミンに保護されるまでずっと眠りこけていた。




※クロミン「(˘ω˘)zzz」

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