第245話 戦場を支配するは氷炎の魔導師
「「合体完了! 超魔導合体〈グレートブレイズホーク
さっきの攻撃で〈グレートブレイズホークV〉自体はダメージを受けたけれど、アリシア狙いだったからか〈ブレイズホークV〉の方はダメージが最小限だ。
そこで例によってぶっつけ本番でルークの〈ブリザードファルコンV〉と合体した。ルシアとロマンという強敵二人と渡り合うには、これしかない。
「それにしてもすごい色合いですわね……」
確か私とルークの機体は基本的に同系統のフレームなのよね? だからいつもと違って〈ブレイズホーク〉にパーツがつく様式じゃなくて、二機が左右に組み合わさるように合体している。
右が青で左が赤だ。なんかもうすごい彩り。アメリカのパトライト感。でもフォルム的にはローブをまとった魔法使いっぽい。
「さあ、やるぞレイナ!」
「ええ、でも待ってルーク。今回は近くに設計した本人がいるのだから、どういう戦い方をすればいいか聞けば良いと思うわ。よね、エイミー?」
今までの合体もそうだけれど、ぶっつけ本番で戦ってきた。でも今ココには設計者のエイミーがいる。なら本人に聞きましょうそうしましょう。
『どういう機能か私にもわかりませんよ?』
「え?」
『私は合体できるようには設計しましたけれど、その後の事はあんまり考えていませんから』
なんなのそれは。この土壇場で聞かされるマッドな発言。
『魔導機は搭乗者の力量によるところが大きいですからね! ある程度得意戦法を活かせるようにはしていますけれど、後はお任せしてますわ。大丈夫、レイナ様ならやれますよ! 気休めですけどね』
正直か。確かに勢いが全ての魔法バトル感あるけれど、謎の信頼感が辛い。私の人生にブレーキという文字は存在してはいけないのかな?
「おもしれえ、やってやろうぜレイナ!」
すごいやる気たっぷりねルーク。まあ細かいところはさておき、私もアリシアの為に気合を入れますか!
「リオとエイミーは援護を。無理はしないでちょうだい!」
『わかったよお嬢!』
『わかりましたわ!』
「さあルーク、真の魔法の使い手とは誰かは見せてやりましょう!」
「おう! 俺達の魔法に負けはないぜ!」
ルシアとロマンは不思議とこちらに手を出さずに距離を置いている。出方を窺っている……?
「お待たせしましたわ、お二人とも。さあ、二回戦といきましょうか!」
「レンドーン、今度はルーク様と? とんだ尻軽女ね!」
まず攻撃を仕掛けてきたのはルシアの〈ワルキューレスヴェート〉だ。その瞬発力を活かして、ハルバードを構えもはやおなじみに突撃だ。
「ルーク!」
「おうよ! 《氷刃》!」
「これで! でやあああっ!」
私が引き抜いた剣は〈アヴァランチブレイド〉。そこにルークの魔法で複数の氷の刃が形成され、時には剣として時には鞭として振るわれる。私は鞭状にしならせてハルバードの柄の部分を絡めとり、動きを封じた。
「はい! お願い二人とも!」
『《激流掌》!』
『《疾風弾》!』
「くううっ! レンドーン!」
そこにリオとエイミーのが攻撃を叩き込む。体捌きと機体の魔法防御能力で受けているみたいだけれど、少なくないダメージをルシアは受ける。
「ルシアさんはやらせないよ! 《雷撃》!」
「《炎のマント》!」
空中から迫るロマンの魔法を、《炎のマント》で受けながらこちらも飛翔する。
「《熱線》!」
「おっと! その攻撃は既に見切ってある!」
生き残りの〈バーズユニット〉と共に多方向から《熱線》を浴びせるけれど、上手くかわされる。〈クロノス〉は剣を握り接近戦の構えだ。
「狙い通りよ! ルーク、敵の動きを!」
「わかった! 《氷結》!」
「――ぐうっ!?」
「どうかしら“氷の貴公子”さんの魔法のお味は?」
ロマンの〈クロノス〉が消えるトリガーはわからない。けれど以前の戦闘の際、アリシアの《奈落の魔手》には一瞬であるが捕縛できた。だからとりあえず捕まえる。倒すよりも捕まえる。
「確かにこれは……身動きがとれないね……」
「大人しく降伏なさいな! あんたの手品はわからないけれど、ルークの本気の氷魔法から簡単に脱出できると思わない事ね!」
「確かに動けない。……
「――!?」
――消えた。
今まさに身動きとれないと自白していた、ロマンの〈クロノス〉が目の前から消えた。どうして? 完全に動きは封じたはず。これだけじゃ不十分……?
「レイナ、後ろから来るぞ! 《氷壁》!」
後ろから斬りつけてくる〈クロノス〉を、ルークの魔法が受け止める。しっかりしなさいレイナ。動揺している暇はないわ。
「レンドーンッ!」
「ええいっ!」
今度は地上からリオ達を振り切って上がってきたルシアの攻撃を、〈フレイムピアース〉で何とか受けきる。一撃が重い。そう何度も真正面から受けることはできないわ。それにロマンも相当な剣の使い手だ。接近戦は不利。なら――。
「ルーク、もうむちゃくちゃ魔法撃つわよ! リオとエイミーは退避!」
「おう! 多連魔法発生装置、フルパワー!」
「《火球》、《火球》、《熱風》、《大火球》、《獄炎火球》!」
「《氷弾》、《氷弾》、《氷嵐》、《剛氷弾》、《
十、二十、いやそれ以上。私とルークの炎と氷の魔法が、多連魔法発生装置の力であらゆる方向に放たれる。最初から照準なんてつけてない。
「くっ……なんて無茶苦茶な……!」
「そんなに魔法を見せびらかして……!」
あら、ごめんなさいね。そんな気は特になかったけれど、ルシアのコンプレックスを刺激したみたいね?
私たちの魔法の乱射に、たまらず二機は距離をとる。グッドウィン王国ツートップの魔法を舐めんじゃないわよ!
「ルーク、なんかバーンと大技でいくわよ!」
「なんかバーンって、もう少しイメージをくれよ……」
「ええっとじゃあ……、前菜は色々出したし、そろそろドーンとメインディッシュって感じで!」
「わからんけどわかった。合わせる!」
さすがはルーク。私の意図を察してくれ魔力を練り上げてくれる。ちょっと説明下手なのは御愛嬌ということで。オホホ。
「全てを焼き尽くす私の魔力よ! 吹き荒れなさい炎の渦よ!」
「全てを凍てつかせる俺の魔力よ! 吹き荒れろ氷の渦よ!」
〈グレートブレイズホークV〉の右手から氷の大渦が、左手からは炎の大渦が出現し、どんどんと大きくなる。それはだんだん重なっていき――。
「「必殺《
ただ焼き尽くすのではない。ただ凍り付かせるのではない。炎と氷が合わさった巨大な大渦は、〈クロノス〉と〈ワルキューレスヴェート〉を飲み込みさらに蹂躙する。
厄介な〈クロノス〉を凍り付かせ、焼き尽くし、手足を奪う。これだけの範囲を支配する魔法だ。そう抜け出せるものじゃないわ。強化魔法で硬い〈ワルキューレスヴェート〉にも、ガンガンとダメージを与える。防御魔法を展開しようにも、炎と氷の相反する二種類の魔法を同時に防げはしないわ。
エースの二機でそんな調子なんだから、少し離れた戦場にいて無警戒だった一般兵の〈スカラー〉なんて成すすべなく飲み込まれていく。これが神に祝福されているとか、天賦の才を持って生まれたとか言われる二人の力だ。その二人が放ったこの世界暫定最大の魔法。それがこれだ。
「なんて威力だ……! これがお嬢たちの本気……!」
「ええ、レイナ様とルーク様が私の造った魔導機を最大限に活かした戦い……!」
もはや暴力そのものの顕現といった大渦が治まった時、かろうじて動いている敵はルシアの〈ワルキューレスヴェート〉だけだった。
「伊達に“紅蓮の公爵令嬢”だとか呼ばれていませんことよ? オーホッホッホッ!」
「そういうことだ。”氷の貴公子”と称されるのはハッタリじゃない。俺たちを――魔法の力を甘く見るな!」
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