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「ん……?」
椿が目を覚ますと、ふかふかなベッドの上にいた。
「ここ、は?俺、昨日何して……」
ズキッと頭が痛む。昨日の記憶が曖昧だ。
周りを見ると、床で毛布にくるまり、すやすやと寝ている橘の姿があった。
「昂鷹?お前、どうしてここに」
——とりあえず、こいつから話を聞いた方が良さそうだ。
椿はそう思い、橘をおこしにかかった。
「昂鷹?おい、起きろ。起きろって」
「んー」
驚いた。こいつ、全然起きない。
「おい!起きろよっ!」
「つば、き?」
眠そうに目を擦りながら起きる橘。
こんなやつが社長だなんて、信じられない。
「お前、これはどう言う事だ?どうしてお前と俺が一緒にいるんだ」
「もうすこし、ねかせてくれ」
「寝させねーよ!?お前、今何時だと思ってんだ!」
現在時刻は、午前10時。
仕事ならもう出勤している時間だ。
「おやすみ」
「寝るなって!マイペースか!!……ああもう!」
どうにかして、橘を起こす方法は無いだろうか。
そうだ。あの秘書に聞いてみよう。
秘書なら、橘の扱いにもなれているはずだ。
「携帯、借りるぞ」
椿は橘の枕元に置いてあったスマートフォンを手に取り、大和に電話をかけた。
『もしもし?しゃちょ……』
「おい、秘書。お前の上司が起きないんだが」
『え?そんなの、休みの日はいつもの事ですよ。っていうか、貴方、誰ですか』
当たり前のように言われ、これが普通なのかと驚きを隠せない椿。
「椿だ。どう言うわけか、お前の上司と一緒にいるんだが」
『社長と?仲直りしたんですね。よかったです』
「いや、そうじゃなくて」
『他に何か?』
「起こす方法、何かないのか」
『社長を起こす方法、ですか。簡単ですよ。ちょっと社長と変わってもらえます?』
「あ?ああ……」
何がなんなのかわからないまま、橘にスマートフォンを渡した。
すると、今までの寝ぼけていた顔が嘘のようにシャキッとなった。
(一体、秘書は昂鷹に何をしたんだ)
「最悪のモーニングコールだね……おはよう、大和く……ん?」
「さて、どう言う状況か説明してもらおうか」
まるで珍しいものを見るかのような目で椿を見ている橘。
「椿が私の家にいる?夢かな……ああ、思い出した。椿が酔ってたから持って帰ってきたんだった」
「だいぶ語弊があるんだが」
「あー、うん。椿がだいぶ酔っちゃってね。椿の家に行くより私の家に泊めたほうが早いなと思って」
一体、昨日の自分は何をしてしまったんだろう。
嫌いな相手に恥ずかしい所を見られてしまったのだろうか。
そう思い、椿は昨日の自分を恨んだ。
「昨日の記憶がないのはそう言うことか。それより、さっき秘書になんて言われたんだ。全然起きなかったのに一瞬で起きた」
すると、橘は苦笑いをして答えた。
「起きなかったら家燃やすって脅されちゃってね。大和君は怒らせちゃダメだよ。怖いから」
「どうして上司より部下の方が強いんだよ……あと、放火は犯罪だ」
「ああ、そう言う言い訳があるか。今度そう言ってみよう」
自由奔放な橘に、一番苦労しているのは秘書の大和なんだろうなと椿は察した。
今度愚痴にでも付き合ってやろう。そう椿は思うのだった。
「で、昨日はなんでお前に呼ばれたんだ?」
「そこから覚えてないんだね……。三浦咲のことについて、話したいことがあったんだ。全部話したけど、覚えてない?」
「話?うーん……」
昨日の事が何も思い出せない。
それを悟ったのか、橘は昨夜椿に話した事をもう一度話した。
「咲が殺人、ねぇ。そんな事、しない奴だと思うんだが」
「昨日も同じような事を言っていたね。彼女は相当真面目だとわかる」
話をしながら身支度を整え終わった2人。
橘は椿にご飯を食べていかないか、と提案した。
「遠慮しておく」
「残念だなぁ。椿の好きなプリンがあるのに」
「今日くらい、休ませろ。二日酔いで頭いてぇし、寝たい」
——今朝、路地裏にて女性の遺体が見つかりました。遺体付近のものから、死亡したのは三浦咲さん、24歳であると思われます——
三浦咲が死亡したと、後に椿は昼のニュースで知るのであった。
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