第411話 ユフラ
「ちょっと先輩どうしたんれすか飲み過ぎですよー! ヒッ、そんなにフラッ、フラになるまで飲むなんてハメをはじゅししゅぎでしゅよ〜」
どこからどう見ても飲みすぎているのは貴方だろう。というか、千鳥足になった自分の視点から私を見ることによって、私がフラフラしていると捉えるのはもはや逆転の発想すぎるだろう。
もし私がいなかったら地面が揺れていると感じるのだろうか。仮にそうであるなら彼女が古代にいたらもっと早く地動説が立証されていたかもしれない。
バタっ
そんなことを考えていると後輩が見事に寝落ちした。こんなにも綺麗に寝落ちって決まるものなのだろうか。滅多に後輩とお酒なんて飲まないから、珍しく飲んだ時はその酒癖の悪さを忘れている。私もいい加減学ばなければ。
「おーい、起きろー」
なんとか近くの公園まで運び、パタパタと心許ない風を手を使って送りながら後輩をなんとか起こそうと苦心する。
いくら品がなく大食漢の後輩といえど一人の女性である以上、手荒な真似はできないし、放置して自分だけ帰ってしまうわけには行かない。
むしろ意識がないこの状態が最も女性らしいタイミングとも言えるからな。
ただ、こちらが彼女を最も女性だと意識するタイミングでもあるから非常に扱いに困るのだ。
この絶妙な状況がこうして私を手で仰いで起きるのを待つ、という非常に消極的な対応を押し付けてくるのだ。もはや自分がどうやって公園まで連れてきたかも不思議なくらいだ。いや、普通に肩を貸して無理やり歩かせただけだが。
はぁ、それにしても今回の彼女は全く起きそうにない。
これはどうしたもんかな。後輩の後輩を呼ぶというのも一つの手だが、私自身はそこまで関係性があるわけでもない。それに彼女からしたら今の状態は醜態なはずだ。それを勝手に自身の後輩に見せられるというのも嫌なことだろう。
「へんぱ〜い。えへっ」
くそ、夢の中だからと言って呑気に過ごしやがって。一体そっちはどんな状況なんだ? こちとら一歩間違えれば職質ものだぞ?
私が頭を抱えようとした瞬間、
グラグラグラグラ
地面が揺れた。これは本物の地震だ。これは不味い。早く避難しなければならないのに、彼女が意識を失っている、いや寝ている。これはどうすればいいんだ?
私は一秒未満の熟考の末、彼女を背負う決意をした。そして、
ドスッ
盛大に床ぺろをしてしまった。
特に鍛えてもいない中肉中背の中年男性が人一人を担いで揺れる地面の中、まともに歩けるわけもなかった。そして、最悪な事件は重なる。
「先輩? 一体これはどういうことですか?」
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サブタイの変遷
ユラユラフラフラ→ユラフラ→ユフラ
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