魔法勇者ユウ

閻魔カムイ

プロローグ~第1話

          プロローグ



「私はシモン・マグス。ラジオのDJ、探偵、道化師、作家、魔術師を兼任してる男さ。巷じゃ怪人41面相と噂されてるが、本当の正体は誰も知らない。何故なら、私でさえ自分の正体を知らないのだからね」


「今回話すのはかつて愚者であった私と、その愉快な仲間達が織り成す青春狂騒劇。笑いあり、涙あり、暴力ありのルール無用エンターテイメント。それでは、舞台の幕を開けるとしよう。」


           第1話


         青年が夢見る日

         左門家 3/11


なにをやってもつまらない。退屈だ。


ガキの頃からやってたテレビゲームも、昔から好きだった漫画やアニメも、好きな哲学者の本や小説も、色を失ったように退屈だ。


何か面白ぇことでもないかな。例えば古典的かもしれないが、空から女の子が降ってくるとか、ある日特別な力に目覚めて皆を救うヒーローになるとか。


うん、これもありきたりでつまらない夢だ。昔はそういう空想に浸るのが好きな夢見がちな子供だったが、今は違う。


今は1日中ネットに張り付いて、下らないニュースや議論に意見を投稿、喧騒と花を咲かせるだけのつまらない引きこもりのインターネット弁慶だ。


何をやってもつまらないのは、自分自身がつまらないからと巷ではよく言われるが、その通りなのかもしれない。


何でもいいので部屋から出る口実が欲しい。そう思った時だった。


「勇、何かあんた宛に変な手紙が来てるわよ」


嫌いな母の声だ。いつもTVやお偉い方の先生の言うことを鵜呑みにする権威主義者。俺が引きこもりになったのもこの女が原因だ。


具体的に記すと、偉い先生方の営業妨害に成りかねるから省く。


まあ、俺を虐待して離婚したクズ親父よりはまだマシな部類だ。


面を会わせるのも億劫な俺は無言で部屋のドアから腕だけ出す。


虹色の包装紙に包まれた妙な手紙に、虹色の紙で造られた妙なキューブがくっついてた。ちょうど首に引っ掛けてたヘッドホンを耳に掛け、音楽を再生しながら封を切った。


拝見 左門勇様


「突然お忙しい所失礼します。ワケあって私の名前は名乗れませんが、貴方に夢と希望を与える為にこの手紙を送りました。胡散臭く思われるかもしれませんが、この喫茶店で待ち合わせましょう。 喫茶店カロン 住所 東京〇〇区 〇〇町 〇-〇〇-〇」


とても胡散臭い。だがその時聴いていたクイーンのdon't stop me nowも相まって、俺は妙な高揚感と期待に身を震わせていた。ちょうどサビに掛かり、スマホ画面のフレディが最高潮に達した時には、もう既に俺は財布と定期券を鞄に詰め、家のドアを開けていた。強い陽射しが差し込んで、俺は今が俺にとっての夜明け前なのではないかと夢想した。

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