末永く
影宮
第1話
「デートに行くんだ。」
そのとびっきりの笑顔を向けられたらきっと彼女は幸せなことだろう。
一年に二回だけのデート、今日はその一回目だと思う。
珍しく早起きをして支度をして慌てたように玄関に走って行ったんだ。
先ずはロマンチックな花束を買いに花屋さんに行くのだろう。
一年に二回だけ見せる笑顔とその花束を見るたびに悔しさと喜びを噛む事になる。
顔も知らないその彼女に勝れることと言えば彼との物理的な距離が近い時間が彼女よりも長くて、彼の無表情を見ている時間が彼女よりも長いこと。
好きと伝える前に聞いたんだ。
「デートに行くんだ」って。
それでも諦めきれていない自分が滑稽で彼が出掛けた後は泣きながら笑うんだ。
頬を伝う涙が数を増やしていき、膝の上を濡らしていく。
「末永くお幸せに。」
彼女と彼に言ってやればいいのに居ない時に呟くんだ。
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