10:潮大和
「あれー!? よく見ると、君はこの前の子じゃないかー!? 君は変態を引き寄せる匂いでも発してるのかね・・・」
騒ぎを聞きつけて交番からやってきた若い警察官は、野菜に埋もれる先輩警官を掘り出すと、レイを見つけて言った。交番勤務の潮大和は、つい先日もこの子供を交番で事情聴取したばかりだったのだ。
「人を野グソみたいにゆーな!!」
「野グソとか言うな」
新は軽くコツン、と鉄パイプでレイの頭を小突く。
大和は、感心するように息を吐いた。
「はえー、君が頭を叩かれるなんて行為をされて暴れださないなんて、珍しいねー」
「てめーポリ公こら、なんだと思ってんだよこの佐久間様のことをよー。」
そういいながらも、レイは怒ることなく、むしろすり寄るような形で新たに近づいた。新はあまり子供に懐かれるようなこともないため、少しもじもじとしながら、金井の姿を探した。こういうのは金井の方が得意だからだ。
しかし、そんな新の様子を意に解することもなく事もなく、レイはにやっと笑った。
「あんた、なかなかやるな! この佐久間様には分かるぜ!!」
「それはどうも」
「あんたを兄貴と認めよう!! 一人前の男前になるまで、ついていくぜ!」
「いや、遠慮しておく」
「んあっ!?」
自信満々にガッツポーズを決めたレイは、本人的には予想だにしない返答に、思わずずり落ちた。
「悪いな、神居流では弟子の募集は行ってないんだ」
そんな流派はない。
「そんなー。弟子をとってないとなると引くしかないけど・・・」
この子供、どうやら口の悪さの割に、人の言葉を信じやすい。
「せめて奴隷に!」
見た目ではどうみてもロリコン御用達のパツキン美少女ないし美少年にしか見えない子供の発言に、散り始めていた主婦たちがひそひそと盛り上がり始める。コツン、と鉄パイプがレイの頭にはねる。
「おいこら、ばーか、変なことを大声で言うな」
「奴隷もだめなら・・・、身体で・・・」
すすす、とブラウスのボタンを外し、うなじを露出するレイに、とにかく刺激的な噂が大好物のギャラリーは大盛り上がり。買い物そっちのけで聞き耳を立てている。聞き耳をたてるというか、完全に三人を取り囲み、決して小さい声量とは言えないこそこそ話で盛り上がる。
「でーい分かった!! 分かったから変なことすんじゃねー!!」
ブラウスの襟元を両手でむんずと持ち上げると、レイはしめた、と笑った。
襟首ごと持ち上げられたまま、レイは笑顔で話す。
「改めて、僕は佐久間レイ。兄貴は?」
「・・・新、神居新だ。その兄貴ってのはやめてくれ」
「んじゃなんて?」
「下の名前でいいから」
「じゃ、新さま! よろしくな!」
新は深いため息をつき、レイを下した。
「・・・てか、お前男か?女か?」
レイはくるりと回ると、悪戯な笑顔を浮かべて言った。
「秘密が似合う方だよ!」
いや、どっちだよ。
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