下校

「はーーー。ほんとに何なんだろ…。」


「え?」


「加藤さん…。私はただ事実を言っただけなのに

なんで私が叩かれるのって感じだし…。やっぱあの子怖い、なにするか分かんないもの。佐藤くんも

あんまり関わらない方がいいよ、!」


「いやでも、あいつは根は良い奴っていうか…

その…。」


「佐藤くんは加藤さんの味方するの!?

私が悪いって言いたいの!?ねぇ!!!!!」


うぉっ…なんだこの勢い。

叩かれた後に大人しくしてた佐倉とはまるで別人だ。


「いや、あの、そういう訳じゃ…。」


「じゃあなんでそんな言い方するのよ!

悪いのは全部加藤さんじゃない!!!」


「全部っていうのは…その…なんか…」


「もうじゃあいいわよ!

でも!前言ったことはほんとなのよね!?」


「前言ったことって…?」


「もう……加藤さんに認められたら私と付き合ってくれるって話よ。」


「はぁ!?俺そんな事…」


「言ったわよ!!!はっきりとは言ってないけど

あれは付き合ってもいいよっていうことでしょ?」


「いやあれは、その時の流れっていうか…。」


「流れでも言ったことは事実じゃない!!

それに、加藤さんは私のことを叩いてまで佐藤くんの事は好きじゃないって言ったし、もうこれで

加藤さんに認められなくても私達が付き合える条件は揃ってるわ。」


「いや、ちょっと待ってよ!俺は…」


「…佐藤くんの嘘つき……付き合ってくれるって

言ったのに…。」


佐倉が涙ぐみながら言った。まずい。

周りから視線を感じる。ゔっ…。


「そこの君!」


へっ?俺?

そう思って声のする方に振り向くと通りすがり

っぽい杖をついたおじいさんがいる。


「そう、男の方だよ。いいかね、

男は女の子を泣かすもんじゃないぞ!」


「あっ、いえ…。でもあの、」


「言い訳をするんじゃない!

全く…これだから若いものは…。」


このセリフ生で聞いたの初めて…。

そう思っているとおじいさんは佐倉の方にも声をかけた。


「お嬢さん、大丈夫かい?

一体何をされたと言うんだね…。」


「大丈夫なんですけど…あの、この子が付き合ってくれるって約束したのにそんなこと言ってない

とか言い出して…。」


佐倉は相変わらず涙ぐんでいる。

完全に俺が悪いみたいじゃないか…。


「おい!!」


ひっ!


「はっ、はい!」


「近頃の若者はほんっとに女の子を大切に……。

女の子を泣かせるなんて……どうのこうの…。」



長かった…。たぶんほんの10分くらいなんだけど外で立ったまま説教されるとさらに長く感じる。


「…で、わかったか!!」


「はっ、はい!!!!わかりました!!!!!

とっても!!!!!!!!」


「よろしい。じゃあこの子を大切にしてしっかりとした彼氏になるように!!!!」


「はっ…かっ!?彼氏!?!?」


「もちろんだ。お嬢さんはそれでいいんじゃな?」


「はい…。約束したので…。」


なんで俺の気持ちは聞かないんだよ…。


「よし。決まりだ。

少年よ、命をかけてもこの子を守るように。」


いや、あの…結婚式でもないのに……。


はっ!佐倉あいつさっきまで涙ぐんでたのに

笑ってやがる、!おじいさんほら後ろ!!女は怖いんですよ!!


「返事をしろ!」


「はいっ!!!!!!」


「ゴホン。結構。ではさようならお嬢さん。」


「さようなら。おじいちゃんありがとう。」


佐倉がいつもの笑顔で見送る。

てか俺…返事しちゃったじゃんどうしよう…。


「じゃあ私達も帰ろっか!今日は記念日だー!」


「うん…泣」


あぁ…佐倉と付き合うなんて先が思いやられる…。


そういえば付き合う…付き合うのか…。


加藤はこの事どう思うだろう?


いや、なんで加藤なんだよ!!


てか一応佐倉が初めての彼女な訳だけど、

これからどうなるんだ…。


「さぁてと!付き合った記念にどっか行こうよ!

あっ、あと親しくない女の子とは喋らないこと。

本当は加藤さんとは絶対話して欲しくないけど、佐藤くんが気に入ってるみたいだから最低限は許す!

それと毎日必ず連絡してね。

おはようとおやすみは絶対!

あとは友達より私を優先すること。

それと…私に関係ないスケジュールでも私に

教えること。あとはえーっと…」


まって多すぎじゃない…?

そういえば佐倉ってほんと独占欲強いよな…。


「うーん、あとは家帰って考えとくね!

とりあえず今日は遊園地行きたい!!」


「今から!?!?」


だって今4時半だろ?一回家帰って準備して

行くのに1時間と考えて…6時…。


「いいじゃない!だって今日という記念日は1度しかないのよ!」


もうだめだ。ついていけない。


俺は拒否する気力もなくなっていた。


「あぁわかった行こう…。」


「やったー!じゃあ、家帰って5時に駅集合ね!」


「了解…。」


俺はこんな調子で大丈夫なのだろうか。


本当に先が思いやられる…。

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