平穏なはずの朝

いやぁ、昨日は色々あったなぁー。


そのせいでまだ疲れが残っているような気がした。


学校に着き、自転車を停めようとすると

加藤が自転車を停めているところだった。


加藤が俺に気づき手を振る。


「おっは…よーう!!!」


加藤は昨日のことを思い出したのか笑った。


「おはよう!!」


自然と笑顔になる。


今日はさっちんとやらはいないのか。


という事で教室まで一緒に行く流れになる。


加藤がなにか言おうとしたが声を出す代わりに

周りをキョロキョロと見渡した。


それから小声で言った。


「ねぇ」


「何?」


「あのさ、昨日のあれ、絶対わざとだよね?」


「あれって?」


「佐倉よ。私達が話してんのが気に食わなくて

あえて佐藤に話しかけてきたんだよ。」


「いや、そうかな…。」


「絶対そうよ!」


たしかに俺もそんな気がした。

…したけどここで俺が否定しなかったら

この2人の仲は悪くなるばかりだ。


「考えすぎじゃないかな…。 」


「…そうなのかな……。」


「…。」


「あっ、そうだ!近くにタピオカ屋できたの!

知ってる?」


「そうなの?どこら辺?」


「駅の近くよ。美味しいらしくてさー、

今日放課後一緒に行ってくんない?」


「うん、いいよ。今日は暇だし。」


「やったー!あ、佐倉には絶対言わないでよ。

なんか言われそうだし。」


「そしたら3人で行けばいいよ。」


「えっ嫌よ!私佐倉のこと苦手だし!

絶対無理!!」


「えーーー。」


「一緒に帰ろうとか言われたらてきとーに用事が

あるからとか言うのよ。わかった?」


「はいはいと。」


「あっ、しょうがないから付き合ってやろうみたいに思ってるでしょ!?私、あんたが甘党なの知ってんだからね!それでわざわざあなたを誘ってあげたんだから。」


「そんなこと思ってないよ、!俺は…」


「おはよう佐藤くんと加藤さん、今日は一緒に来たの?」


「あっ、おはよう佐倉…。ええっと違うよ、

駐輪場でたまたま会っただけで…。」


「ふぅん…。」


えっなんだよ怖いな…。


そう思っていると佐倉はクスッと笑って言った。


「なんか不倫した夫が妻に言い訳してるみたい笑」


「えっ、いやそんなつもりじゃ…。」


そう言って続けようとすると加藤が割り込んできた。


「なんなのよさっきから!…っ不倫とか!妻と夫とか意味わかんない!私達が悪いことしてるみたいじゃない!私がこいつと一緒に登校しようがあなたには関係ないでしょ!!!?」


あっ…。やばい。加藤がキレた……。


「あら、関係あるわよ。私は佐藤くんの事とっても気に入ってるもの。」


「だから何よ!やっぱり関係ないんじゃない!」


あぁどうしよう…。また周りのみんなが見てるよ…。こんな教室で……もうやめてくれ…。


「じゃあ何!加藤さんは私より佐藤くんの事が

好きだっていうの!?!?」


おいおいなんだよ、好きとか…照れるじゃないか…じゃなくて!!!おい何言って、!!


「はぁ!?冗談じゃないわ!なんで私がこんなやつとの事好きになるのよ!冗談もほどほどにして!」


おいおい、皆がなんだなんだと見てるじゃないか…。どうしようどうしようどうしよう…。


「好きなくせに!!!」


「いい加減にしてっつてんでしょ!!!!!」


パァン


周りはその瞬間静まり返り音が響く。


加藤が佐倉の頬を思いっきり叩いていた。


俺は主人公のように佐倉をかばって…とかそういうことも無くただ呆然と立って見ているだけだった。


周りは静まり返っていたがやがてザワザワし始めた。

先生が教室に入ると佐倉の赤くなった頬を

見るなり近寄って佐倉に話を聞いていた。


加藤にも色々聞いていたようだが加藤は

何も答えずただ下を向いている。


俺は衝撃すぎてずっとその場に立っていた。

どうすればよかったんだろう。


周りにはざわざわと人がいるはずなのに俺は孤独な気がした。1人で広い世界にぽつんと立っていた。


俺がやっと自分の席に着くまでには5分経ったか

経たないかくらいの時間があった。


席に着いて落ち着いてからやっと気づいたのは、両隣の2人の席はどちらも空席になっていたという事だ。


先生もいなかったので朝のホームルームはやらずに1時間目が始まる。


今日の1時間目は現代文だ。

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