第25話 前略、魔術師と呪術師と
「やったぁーー!」
かなり際どいジャンプだったけど見事に成功。これもみんなで力を合わせた結果だね。
石像の腕は切り離され、バランスを崩す。
「残りの接合部も刈り取る!」
己の身体を支えきれず倒れ込む石像の弱点は、あたしの目がなくてもハッキリとわかった。
あたしたちは思い思いに手足を狩る。さんざんやってくれた落とし前をつける!
すぐさま石像は元の岩の集まりに戻った。
たしかに倒した、でも問題は。
「この石像は何だったのか、ですね」
考え込むようなラルム君、そうだ、そして、
「元からなのか、人によるものか、だね」
もし、元からいたのなら、入口を塞いだりするのはどうにもおかしい。
誰かがこの遺跡の為に、と考えた方がしっくりとくる。
「多分まだ近くにいるよね、探そう」
あたし達もボロボロだけど、逃せば次の被害がでる。あと少し頑張るのは、あたしの手が届く仕事だ。
「んん?」
ゆっくりと孤高なる暗黒騎士が近づいてくる。
あたしの近くで、静かに大剣を振り上げて───まさか!
「ぬんっ!」
立ちすくむ、あたしの隣にあった、石像の胴体。
その一際大きな岩を、孤高なる暗黒騎士は打ち砕いた。
こ、怖かった……
「ぐぇっ!」
カエルの潰れたような声と一緒に、岩の中から男が現れた。まぁ、カエル潰したことないけど。
「くそっ!せっかく……って、お前、ラルムか?」
石像からでてきた男は、悪態をつきながらラルム君をみた。
ラルム君もなんだか変な顔、もしかして知り合い?
「ぐはっ……」
まだ話そうとしていた男を、素早く近づいたラルム君が杖で気絶させた。
いつものラルム君らしくない短絡的な行動だった。
「知り合い……だったの?」
リッカからの質問。もしそうだとしたらやっぱり、疑問の残る動きだった。
一瞬、焦ったような表情を浮かべたけど、すぐに観念したようにラルム君は語りだす。
「彼は……同じ学園の先輩です。ですが呪術に手を染め、追放されたのです」
曰く、魔術と呪術はまるで違うものらしい。人を貶めるため、傷つけるため、それが呪術。
「なぜ彼がここにいるかはわかりませんが、あとは『法の番人』に任せましょう」
『法の番人』……たしかネオスティアにおける警察みたいなギルドだっけかな。
……それってたしか裁判官とかじゃなかったっけ?
前にネオスティアにきた人が間違えて設立したのだろうか?
呪術師の人とか疑問は残るけどさ。
まぁ、それでもひとまず。
「あたしたちの勝ちだ!」
「「「イエーイ!!!」」」
パーティー4人揃ってのハイタッチ。
ありきたりなセリフだけど、この勝利はみんなの勝利だった。
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