第73話 三人団が行く!
取りあえず、
アズランマントには、フードもついているし、リバーシブルだった。というか、ここいらのマントはたいていリバーシブルなんだそうだ。
そういったいでたちになったおかげか、俺を露骨に避ける通行人の数はめっきり減ったようだ。案外このマント、地味ではあるが優れモノなのかもしれない。
時刻はすでに
受け取り所の前はかなりの数の冒険者たちが列を作っていたが、意外とはけるのが早い。
一番短そうな列のしっぽに並んで、順番が来るのを待つ。
さっきの冒険者ギルドでは、順番を譲ってもらったが、今はマントのせいか威圧効果がないらしく譲ってもらえなかった。まあ、心の中では期待はしていたが、俺たちは
すこしずつ列がはけて、前に1グループだけになった時だった。
『大迷宮』の出入り口あたりが急に騒がしくなった。どうしたのかと思ってそちらを振り返って見ると、人だかりの中を、男女のグループがこっちにやって来る。
そのグループは結局俺たちの列の隣の列に並んだ。
そのグループが、前に進めるように、周りの連中が、列に並んでいた冒険者を列から追い出していく。で、そのグループの連中も当然といった顔をして最前列まで進み、待つことなく受け取り所で、はちきれんばかりのリュック数個分の中身を
ひとり『収納キューブ』持ちがいたようだが、容量がそんなになかったのか、鹿のようなモンスターの死骸が丸ごとではあるが4体だけ出て来た。周りの連中はそれを見て、「すごい」「さすがは」とか言ってはやし立てていた。
『トルシェ、あの連中のこと知ってるか?』
『あれは、迷宮都市に2パーティーいるといわれているSランク相当のパーティー「
『ふーん。いつもあんなふうなのか?』
『はい、いつもです』
『さっきの鹿はそれなりのモンスターなのか?』
『実物は初めてですが、サンダー・ディアじゃないでしょうか』
『なんだそれ?』
『体中に雷を
『そいつは強いのか?』
『Bランクのパーティーでは苦戦すると聞いたことがあります』
『と言うことは、シルバー・ファングなみってことか?』
『そう考えると、大したことないですね。あ、そろそろわたしたちの番ですよ』
「はーい、次の方」
「お願いします。ここの台だと入り切れないんでどこに出します?」
「出せるだけ出してもらえますか」
「わかりました。それじゃあ」
5匹のシルバー・ファングが一気に積みあがった。一番上に左耳を5つ添えている。
「これは、シルバー・ファング! しかも5匹、そしてどれも大きい。傷も首筋だけ! どんだけーー! あんたの『収納キューブ』も、ふう、ふう。どんだけーー!」
それまで注目を一身に集めていた『疾風迅雷』から、一気に注目がトルシェとうずたかく積まれたシルバー・ファングに集まった。トルシェのヤツ、狙ってたな。
『疾風迅雷』の連中もチラチラ俺たちを見ている。ほー、あれがAランクのギルド証か。やはり見た目は俺たちの銀色より連中の金色の方が強そうに見えないこともないな。
「あと、すごくでっかいのがもう一匹いるんだけど?」
「ちょっと待ってください。
おーい、ここのシルバー・ファングを解体所に早く運んでくれー!」
一匹を四、五人がかりで台車に乗せて奥の方に運んで行った。
それを、あと四回繰り返し、やっと台が空いたので、トルシェが最後に残った例の白い犬っころを台の上に出した。そいつ一匹で、台はいっぱいになってしまった。こいつにも、最後に残った耳を添えた。
「こいつは、スノー・ファング!」
まわりから、どよめきが起こった。こいつはスノー・ファングっていうのか。強いのか弱いのか分からないうちにトルシェが
しばらく待っていたら
「それで、あんたらのパーティー名はなんていうんだ?」
「三人なので、『三人団』」
「なんだそれーー!」
元気なおっさんだ。われわれのパーティー名も、
『いくらになった?』
「討伐報酬込みで金貨150枚になりました。シルバー・ファング5匹で金貨75枚、スノー・ファング一匹で金貨75枚になりました」
『仕事の内容からいって、もらいすぎな気もするが、「キューブ」がなければ、あれを運ぶのは大変だものな』
さっそくトルシェが支払い所で現金を受け取って来た。
「あと、この支払証明書をギルドの本体の窓口に持ってくと、Aランクになれるだろうって」
見せてもらった支払証明書には簡単に、モンスターの種類、数、支払われた金額がかかれていただけだったが、きれいにたおした結果の高査定だったんだろうから、金額をみれば、優良パーティーってわかるはずだからな。
まあ、簡単に上がれるようなランクだから、大したことはないんだろう。覚えていたらでいいな。おそらく忘れると思うけど。
『またギルドに戻るのは面倒だから、俺たちの拠点に戻るとするか』
「そうですね」「はい」
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