第7話



俺が住んでいる場所は都会でも田舎でもない。 それに都会でもないから電車もあまり来ないので逃したら30分は待ちぼうけを食らう。


だから急いで駅に向かいたいのに……

なのに朝日奈と来たらちんたらちんたら歩いている。


「朝日奈、お前って帰る気ある?」


「あるある! もう私の心の中はベッドの中だよ」


「そうか、通りで足取りがおぼつかないはずだな」


朝日奈に振り回され無駄に校内ぐるぐるして部室に行き大分時間を食った。


「新村君新村君、私道路側なんだけどその事について何か意見は?」


「特になし」


「え〜、私一応女の子なんだから新村君がそこは気を利かせて変わってあげるのがセオリーじゃない?」


「だって勝手についてきてんのは朝日奈だろ? それに俺はそんな経験ないからわかんないわ」


「もう! だったら私がおしえてあげる!」


朝日奈は俺の先を行き俺の前を塞ぎ道路側へ移れと言わんばかりだ。

なんかここまでされると癪なので余計に避けたくなくなってきた。


だが朝日奈は自分の体ごと俺を押して道路側へ追いやった。

そして腕を組んできた。


「にひひ、これで新村君はそっち側固定でしょ〜」


「あのさ、余計歩きづらくなったんだけど……」


「ここまでしてその感想って…… 新村君って私の事なんだと思ってるわけ?プライド粉々、もしかして本当にホモ?」


「んな訳あるかよ、朝日奈はもうちょっとお淑やかにしてればなぁ」


「わかってないなぁ、こんなのが私の良いとこなのよ? その内新村君もわかるよ。 ひゃっ!」


何がわかるんだよ? と思ったがこのままこいつと喋っていると本当に間に合わなくなる。


俺は急ぎ足に変わるが朝日奈は腕を組んだまま離さない。シュールだから離した方がいいぞ?


そしてなんとか間に合った。

朝日奈を見ると疲れたのかゼイゼイ言ってた。


「ハァッハァッ、こ、この…… 急に走り……」


朝日奈が言い終わる前に電車が来た。

俺が急いで乗ると朝日奈もよろよろと入ってきた。 俺は空いている席に座ると朝日奈も隣に座ってきた。


「はぁ〜、疲れた。 もうくたくた……」


そう言って俺に寄り掛かった。 電車がしばらく進んで次の駅に止まると他の高校の生徒も入ってきた。 俺が関わり合いになりたくない男子と女子のグループだ。 そして俺たちが目に入ると……


「あれぇ〜? 柚じゃん」


「え、何々? あ、ホントだ」


「隼人……」


朝日奈をチラッと見るととても冷たい表情に変わっていた。


その隼人とやらが話しかけてきた。 なるほどイケメンだ。 朝日奈とつり合うくらいの。


「柚、お前俺を振っておいて今そんな奴と付き合ってるのか? もしかしてそういうのがタイプなのか?」


「友達だよ」


「ほらぁ、隼人そんなのいいじゃん?私らと仲良くすれば」


取り巻きの女子が隼人にくっつきそう言う。 だが隼人はそいつらを押し退け朝日奈に向かうと……


「なぁ? 俺らもっかい付き合わね?柚やっぱ可愛いわ」


「私はそんな気なし。その子たちと仲良くしてれば?」


「あんた生意気じゃない?ちょっと可愛いからって」


取り巻きの女子が朝日奈を睨む。

すると朝日奈が肩を震わせている。 怖いのか? と思ったら


「あはははッ、あ〜可笑しい。 自分のレベルが低いからって私にひがまないでくれる?」


俺は絶句した。 こいつ状況わかってんのか? 一気にそこの女子全員敵に回したぞ……


「てめぇ、いい度胸じゃん?」


すると電車が駅に着き止まる。


「いいからお前ら行くぞ。 隼人が女子のグループに言った。 どうやらここで降りるらしい、最初からわかって言ってたのか朝日奈は?


「柚、お前が俺と付き合うならいつでもオッケーだから」


「てめぇ後で覚えとけよ!」


そう言いそいつらは降りていった。

こいつ何考えてんだ? 厄介な奴かもしれないな……

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