第6話

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 シャワーを浴びたあと、リビングへと戻った。

 そこでは咲が美味しそうにポテトチップスを食べていた。朝食で散々にカップ麺を食べていた咲だったが、その食欲は未だ健在のようだ。


 咲が満面の笑顔で一つまみを口に運んでいる姿をぼーっと眺めていると、たまたま咲と目が合う。

 大きな口をあけていた咲は、それから恥ずかしそうに口を閉じ、控えめに一口食べた。

 それから、ポテトチップスの袋を治のほうに傾けた。


「ど、どうぞ島崎さんも食べますか?」

「……ああ、ありがとな」


 うすしお味のそれを一口食べる。さっぱりとした味が口内へと広がる。


「この麦茶は飲んでいいのか?」


 テーブルにはペットボトルの麦茶がおかれていた。咲の前と治の前に一つずつだ。


「はい、どうぞ自由に飲んでください」

「ありがとな」


 用意されていたペットボトルの麦茶を口につけながら、治は対面のソファに腰掛け、それから一口分をもらった。

 喉を潤した治は、それから口元をぬぐって改めて先を見た。


「聞きたいことがあるって、言っていたけど何だ?」


 咲は控えめに視線を落としたあと、首を傾げた。


「……島崎さんって進路希望調査とか受けましたか?」

「あー、そういえば2年に上がったときにあったな」

「ですよね……それについてちょっと聞きたかったんです」

「将来の夢とかか?」

「はい、島崎さんって将来の夢ってありますか?」

「……」


 そう質問した咲の表情は暗い。

 治は伝えるかどうか迷っていると、咲がその表情のまま続けた。


「はい。高校二年生にもなると進路希望調査などありますよね? 私も先生から色々と言われたのですが、あまり良いのが思い浮かばなくて……島崎さんも同じ高校二年生なら何かわかるかもと思いまして」

「……なるほどな」


 将来の夢、と言われ治は苦笑した。

 すでに、治の中で夢は一つ、決まっていたからだ。


「どうですか? 島崎さんは何かありますか?」


 再度問われた治はこくりと強く頷いた。

 羞恥はあったが、それでも誰かに宣言できるくらいになりたい夢があった。


「もちろんだ。……俺は小説家として、誰かを喜ばせたいんだ」


 それを、はっきりと伝えたあと治は小さく息を吐いた。

 昨日会ったばかりの相手に伝えることに多少の葛藤はあったが、それでも治は堂々と言った。


 むしろ、昨日会ったばかりという大した関係がなかったことが良かったのかもしれない。

 治の言葉に、咲は首を傾げた。


「……そう、なんですね。小説家、ですか……凄いですね。私、そういう夢を持ったことがなくて」

「そっか。っていっても、今は売れない作家なんだが……いつかは、もっとたくさんの人に見てもらいたいと思っているんだ」

「か、活動しているんですか!?」


 驚いたように咲が声をあげた。

 その反応が、恥ずかしかったが頬をかきながら頷いた。

 

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