大盾使いの少女と聖賢女はホウオウの力の一端を受け取る

  突然光出したホウオウの魔石に驚くティファ。ティファは少し後ろに下がり、リッカを守るように大盾を構える。が、更に2人を驚かせる出来事が起こる。


『我を倒せし勇敢なる少女達よ。その強さ素晴らしきものであった』


「えっ!?この声!?まさかこの魔石から!!?」


ティファは驚いてそう言ったが、自分で言った言葉が信じられず呆然と立ち尽くす。しかし、近くにいるリッカが声を発していない事から、それ以外の事は考えられない。リッカも同じ結論に達してるのか、同じように信じられない眼差し魔石を見つめている。


『目覚めてから久々に楽しき戦であった。あれはかつて勇敢なる5人の戦士達との戦いを思い起こさせるような……そんな戦であった』


その魔石からの声に敵意を感じなかった。なので、ティファは少しだけ警戒を解いた。


『其方らの強さに敬意を表し、我が力の一端を其方らに。そして、いずれ其方らが其方らと同様の力の持ち主と絆を結んだ時、その者にも我が力を一端を渡そう』


魔石がそう言った瞬間、魔石から眩い光が放たれ、2人は思わず目を瞑る。2人が恐る恐る目を開けると……魔石はもう光っておらず、普通の魔石に戻っていた。が、


「ッ!?あぅ……!?」


「くっ……!?何……!?頭に何かが流れ込んでくる……!?」


  突然、2人は激しい頭痛に襲われ、2人共頭を抑えてその場にしゃがみ込む。その頭痛はほんの僅かの出来事で、頭痛が治ると、2人はまるで信じられない物を見るように自分達の手を見つめている。


「リッカ……私……初めて技を習得しちゃったんだけど……」


「私もよ……まさか魔術師である私が技を覚えるなんて……」


基本、大盾使いも魔術師もあまり技を覚える事はない。一応、大盾使いは技を覚えなくもないが、その数は剣士などの職業に比べあまりに少ない。魔術師に至っては絶対に覚えない。代わりに魔法を覚えるので必要としないのである。


「悪いけど、早速使わせてもらうわ」


「えっ、あっ、うん。どうぞ」


別に了承をとる必要はないのだが、なんとなくティファに了承の確認をとるリッカ。ティファもポカンとしたまま了承の返事をする。


「それじゃあ……『万物たる癒しの炎』!!」


リッカが技を発動させると、リッカの周りを炎が包む。ティファは突然リッカが炎に包まれたのを見て、慌てて助け出そうとするが、リッカがそれを手で制す。そして、リッカを包んでいた炎が消えると、リッカにある変化が起きた。


「えっ!?リッカ!?髪の毛の色が戻ってる!?」


魔力0になり、リッカの髪の毛は真っ白になっていたのだが、炎が消えた直後にリッカの髪の毛の色は元の真紅の色に戻っていたのである。その事に驚愕して呆然とするティファに、リッカはクスリと笑って説明する。


「そうみたいね。『万物たる癒しの炎』は、あらゆるものを全て回復させる炎よ。HPやMPだけじゃなく、下がったステータスに、状態異常。瀕死状態の人も回復出来る優れものよ」


リッカの説明に、ティファはあまりのとんでもなさポカンとしてしまうが、ふと、ある事が気になって問いかける。


「ねぇ、技ってMPを消費するよね?当然その『万物たる癒しの炎』もだよね?」


「えぇ、やっぱりこれだけのものだから、私でもかなり消費されたわ」


「でも、さっきMPも回復出来るって……」


「えぇ、MPも魔力も全回復よ」


  リッカの言葉に、ティファは思わず引きつった笑みを浮かべる。『万物たる癒しの炎』を使用すれば、MPも魔力も全回復し、また魔法をバンバン放ち放題という事になる。ティファが歩く防壁なら、リッカはこれにより歩く魔法砲台になったようなものだ。しかも、球は打ち放題である。


「それで、ティファも覚えたんでしょ?見せてよ」


「えっ、うん。いくよ!『7色の盾』!!」


ティファがそう叫ぶと、ティファの両隣に3つの盾、合計6つの盾が出現した。ティファの持ってる盾を含めれば7つの盾である。ただ、その色はティファの持ってる盾とは異なり、赤・黄色・オレンジ・青・紫・白色の盾である。


「へぇ〜……6つの盾を生み出す技なのね」


「うん!しかも!ありがたい事に!盾一つにつき防御力1削るだけでいいから、MPを使う必要は一切ないの!」


「なるほど……それは確かにティファにはありがたい話ね」


ティファのMPは極端に少ない。MPをかなり消費するものだったら使用不可能の可能性があったが、防御力を削るだけなら、∞の数値を持つティファなら何回でも出現させられるだろう。


「それだけじゃなくてね!この子達!私の思う通りに動くんだよ!ほら!」


突然、6つの盾があっちに移動したり、挙句には空を飛んでグルグル回っている。そんな光景を見たリッカは思わず引きつった笑みを浮かべる。が、更に驚くべきは


「ちなみにこの盾はリッカも持つ事が出来て、この盾の防御力は私の防御力と同じなんだよ!」


「えっ?つまりそれって……私も防御力∞の盾を持って身を守れるって事?」


「うん!そういう事!」


これはある意味でとんでもない技だとリッカは思った。この盾を使えば、あらゆる方面の防御が可能になり、味方も防御力∞を身につけて行動が可能なのである。ただでさえ守りに特化したティファが、更に守りに特化した技を得たのである。


「ただ、唯一の難点はその6つの盾では『プロリフレ』と『シールドパニシュ』のスキルは使えない事かな」


「いや、十分過ぎるから。スキルなんていらないから」


『シールドパニシュ』が7つ分使えたら恐ろし過ぎる。『プロリフレ』ならいいかもしれないが、盾が∞の防御力を用しているなら、攻撃手段を持ってるリッカからすれば必要ないとしか思えない。


「……それにしても、この技をくれたのってやっぱりあのホウオウかな?」


「あの声の言う事が本当ならそうでしょうね。夢だと思いたいけど、現にこんな凄い技を貰ってるしね」


ティファとリッカはホウオウの魔石を見つめながら言葉を交わす。2人共、あの声を聞いた後、技を覚えた。しかも、技もどことなくあのホウオウの力に似てると2人共感じたので、恐らく間違いないだろう。もう一度確かめたくても、魔石は戦いに満足したかのように静かにただの魔石になっている。


「お〜い……!やっぱりティファちゃんにリッカちゃん!ここで一体何があったんだぁ〜!?」


そんな風に声をかけられて、2人は声のする方を振り向くと、1人の男性冒険者が2人に駆け寄って来た。どうやら、その冒険者は近くの町で依頼をこなしていたようだが、遠目で巨大な鳥を視認し、確認した後に巨大な爆発が起こって、慌てて現場に向かって来たらしい。


  そこで、ティファ達はその場で起こった事を全部間違いなく説明した。男性冒険者は、ホウオウが現れた事実と、ホウオウをたった2人の少女が撃退した事実、そして何よりとどめのあの爆発をティファが引き起こした事に驚いたが、2人が嘘を言う娘ではないと分かっているのと、証拠となるホウオウの魔石や「ホウオウの羽根」、更にはリッカがギルドカードに残った先程の戦闘映像を男性冒険者に提出したので、男性冒険者は2人の言葉を信じた。

  そして、男性冒険者はギルドには自分が先に報告するから、2人は近くにある村でゆっくり休むように指示を出した。2人共、ダメージらしいダメージは負ってないので肉体的な疲れていないが、休みたいのは確かだったので、男性冒険者の指示に従って近くの村に立ち寄って一泊してから王都ギルドディアに帰還した。

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