悪の組織(小並感)



「ぷはぁーっ!うまい!」


ひとっ風呂浴びた後のフルーツ牛乳は最高だ。

多分この世に存在する液体の中で一番美味い。


空いたビンを横の黄色いカゴに入れた。


「お!タックミくんじゃーん、お風呂?」


「あ、今戻ってきた所です」


マコさんが温泉の方から戻ってきた。

髪や肌がまだ湿っており…なんかエロい。

というかそんな事よりも…


「…えっと…後ろの方…は?」


誰ですかその高身長イケメンは。

髪はサラッサラのストレート、整った顔立ち。

美容師にいそうだしこの人が下手な美容師でも会うためだけに来る人がいそうなくらいだ。


「はじめまして、ヒロミです。ヨロシク」


「よろしくお願いします…」


まてよこんな人いたっけか…

いやいやそんなことよりなんで2人でコッチに歩いてきたし???


「えっと…どういうご関係で…?」


「パートナーよ!」


稲妻が走った。


「私たち、すっごく相性いいんだよねーっ!」


マコさんがヒロミ(敢えての呼び捨て)に抱きついた。

火山大噴火。


「あ、あーはは、なるほど…じゃあまた明日…」


「おやすみー!」


「おやすみなさい」


ヒロミいぃぃぃぃぃぃぃいぃぃぃぃぃぃっっっ!!




「はぁ…」


バフッとベッドに横たわる。

無駄に広い部屋の中で、一人で埴輪みたいな顔をしていることだろう。


コンコンとノックの音がする。


「はいー…」


ガチャっと開けると、そこにはシンヤとマサキがいた。


「…どしたんすか先輩…そんな埴輪みたいな顔して…お化けでも見たんすか?」


「いや?何も?別に?何も?」


悲報、マコさんにイケメソパートナーがいる事を知ってしまったタクミ、キョドる。 


「ジュース買ってきたんで、一緒に初日の乾杯でもしようと思って!」


ニヒ!とマサキが満面の笑みだ。

シンヤは無理やり連れてこられたっぽい。


「すげぇな、こんな沢山…」


「おごらされたんですけどねー」


シンヤが冷たい目でマサキを見る。


「ホラ、入っていいよ、ひとりなのにだだっ広くて寂しかったからさぁ」


「「お邪魔しまーす!!」」


その後、結局他愛無い話が夜遅くまで盛り上がってしまい、12時を切ったところで睡眠時間が5時間も残されていないことに気づき、急いで寝た。




ただし一人を除いて。


夜の一時、むくりと椅子からシンヤは起きると、タクミが使っていたカップの鉢に綿棒を沿わせ、唾液を取って外に出た。


「対象のDNAを採取したぞ」


「さすがです御坊ちゃま!オレ達と三日後の合流を忘れないでくださいね!」


「もちろんだ」


「お坊っちゃま!くれぐれもセルリアンにだけは気をつけて!」


「あーもう!分かってるってば!」


面倒くさいなぁ…でも憎めない奴らだ。

よし…事は順調に運びそうだ。


「よし!我が『鹿目コーポレーション』に革命を起こして見せる!」


一人でシンヤはガッツポーズを決めると、タクミの部屋に戻って布団に潜った。




「グヒヒヒヒ…坊ちゃんはしっかりやってそうですぜ、旦那様ァ」


「後は私達に任せていただければ大丈夫でございます、旦那様」


「ご苦労」


フゥとタバコの煙が吐かれる。

革張りの黒い背もたれの椅子に腰掛けたまま、大柄な漢が答える。


「引き継ぎ調査を続けてくれ」


「「了解」」


男はタバコをもう一度咥えようとしたが、何かを思い出して再び口を開く。


「そういえば明日の朝食用の牛乳が無い。夜遅くで悪いんだがコンビニで買ってきてくれ。ほら、コンタカードだ」


「「了解!!」」


二人はそそくさと部屋を後にする。


この計画は失敗してはならない。

人類の進化と、鹿目コーポレーションの存続のために。


「ン"ン"ゲフンゲフン…また禁煙失敗した…」




翌朝。


最悪の目覚めである。

無論一番疲れているのはシンヤだった。


「ぁぁぁぁ肩だりいぃぃぃ」


「首が痛いね…」


「(死)」


「おっはよー!皆の衆!!」


僕たちは朝早くからロビーに整列させられている。

どうやらフレンズに会いに行くのだ。


「「「おはようございます…」」」


「フレンズちゃんに会いたい人ー!!」


「「「はーい…」」」


「…みんな元気無いね…どうしたの?」


「どうしたも何も…」


こんなの元気が出るはずない。

極寒。

猛吹雪。

おい40センチあるだろ雪。

夏だよな?夏だったよな?


「みんな防寒具もってるんだから大丈夫!」


(((だいじょばねぇよ…)))


「さぁ!モービル亭目指してしゅつぱーつ!」


げぇえぇぇぇぇぇえぇぇぇえ…




マサキは雪山の感情?を感じたらしく(正直何言ってるかわからないしラリってる)雪ではしゃぎ始めたが、僕とシンヤくんはげっそりだった。

ズバズバと雪に膝が埋まる。


「つめった…」


「ゴーゴー!」


「雪よ岩よわれらーがまもりー♪」


徒歩十分、除雪の住んでいるところまで歩く。


「到着ー!」


そこにはジャパリバスの下に大きなキャタピラが取り付けられた車両があった。

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