案内
「こっちが私たちの職場までのバスが出る駅。明日は朝早くから働いて貰うから、朝5時に起きてね」
「朝5時に?早いなぁ…カズキ起きれるの?」
「マコさんが起きろって言うならもちろん…」
一樹は完全にマコさんの虜になっている。
ほうら見ろ。
なんだあの恍惚とした表情。
「明日はまずフレンズと触れ合ってもらうわよ!みんなとっても可愛くていい子たちだから、気を楽にしてね」
「そういえば、前に一度パークに来たことがありますけど、今日はフレンズに会えてませんね。港で出迎えてくれるのに」
僕は周りを見渡すが、確かに影一つ見えない。
「最近何故か全然出てきてくれなくなっちゃったのよ…変よね、こんなにいないのは初めて…」
「何言ってんだよタクミ、フレンズは居なくてもマコさんがいるだろ?」
一樹は俺にだけ聞こえるように小声でそう言って、マコさんの身体のラインを人差し指でなぞる仕草をした。
↑19歳非童貞の図
確かに綺麗なボディだ、お尻からうなじまでスッキリ整って…ルネサンス時代の女神の絵、いやそれ以上にエッチな…ぼ、僕は何を考えてるんだ!!
↑19歳童貞の図
「ちょっとぉ〜、話聞いてる?」
「「聞いてます聞いてます…」」
マコさんは少し訝しむような顔をして、それからクスリと笑ってみせた。
尊いなって…
カチャっと缶のタブを回して開ける。
そしてマコさんはぐぐぐっと飲み干すと、赤くなった顔で、おじさんのように「ぷは〜っ!」とかました。
「酒、飲むんですね…てか、ここ僕たちの部屋ですけど?!」
「私は22だし、君たちの世話係だからいいの♪」
「3つ上…イイ…(ボソリ)」
「飲みない飲みない♪」
とマコさんが酒を勧めてくる。
「デヘヘェ…じゃあお言葉にあ「ダメですって!」
一樹コイツ…もう犯罪も厭わないつもりだ…
僕はゼロカロリーコーラをコップにそっと注いで、それからぐっと飲んだ。
全く、この部屋から酒の空き缶が出たのを見つかったらなんと言われるか…
「あ、君たちの担当するフレンズの表が出たけど、見たい人っ!」
「はいはいはいはいはいはい!!!!」
「カズキ、落ち着け」
お尻のポケットからマコさんが折りたたんだプリントを引っ張り出す。
「ジャーン!こっちら〜!」
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橘一樹:アードウルフ 確定済み
猪俣拓海:フンボルトペンギン 確定済み
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「「おお〜!!」」
「タクミぃ〜ずりいぞ、お前フルルちゃんじゃないか!!」
そう、流石に下調べをしてきたし、前にも一度来てるから分かってる。
フンボルトペンギンことフルルは、パークの人気アイドルグループのメンバーの一人。
天然ッ子キャラクターが売りのフレンズだ。
「やったねぇ〜タクミ君?フルルちゃんは可愛いよ〜?」
「タクミ〜ずりいぞ〜」
可愛いのは知ってる。
知ってるけど…
日本国民全員が知ってるようなアイドルのお世話を?僕が?僕なんかが?は?
てか今思ったけど獣医学あんまり関係なくない?
いやそんな事より今は僕みたいなゴミムシみたいなやつでアイドルとやっていけるのか???
「えっえっでも僕に勤まる訳が…ウッ…」
何だよ二人してそのジトっとした目はよォ…
「ハァ〜」
思わず溜息が漏れる。
楽しみではあるけど、明らかに僕の仕事じゃない…
マコさんがベロベロに酔っ払った11時ごろ、流石に僕たちの部屋に寝かせて置くのはちょっと"宜しくない"ので、近くを通った同僚の方に部屋まで運ぶのを手伝って貰った。
マコさんは道中三回吐いたが。
一樹は「何で帰すんだよ馬鹿野郎!酔ったらチャンス!酔ったらチャンスだろうが!!」と残念がったのだが。
ゴミ箱はおつまみのゴミで一杯だ。
歯を磨いてシャワーを浴びたら寝てしまおう。
というか、明日5時起きなのにこんな時間にまで起きててしまった。
早く寝ないと。
と、言ってもこんな初日に寝られる訳がない。
一樹とピロートーク。
やらしい意味はない。
「タクミさぁ、マコさんの事どう思う?」
「ぅぅーん…美人だなーって///」
「ハハ、あの胸元とかエロいと思ってんだろ?このムッツリ野郎!!」
「ん、んな事ないし!」
「じゃあよ、どう思う?俺とマコさぁん…」
「別に…」
「お似合いだと思うんだよねー!年上なのもイイ」
会話はそこら辺までしか覚えていない。
気がついたら、眠っていた…
のは数時間だけ。
夜中の3:30に叩き起こされた。
ビーッ!ビーッ!とアラーム。
「おいカズキ!アラーム早えよ…ゲッ?!」
カズキは既に作業着に着替えていた。
「できる男は計画的に、だぜ?」
「どの口が言ってんだよ…」
急かされてシャワーを浴び、覚醒する。
パシパシと両頬を叩いて、鏡に呟いた。
「大丈夫、うまくいく」
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