空も飛べるはず

カフェインの精霊

プロローグ

プロローグ

知ってたよ。

出会った時から、君はいっつも自分勝手で。


君はいっつもフラフラしてばかりで。

付いていくのが精一杯だよ。


毎回僕が走らされて。

今回も僕だよ。




「ハァ、ハァ、ハァハァ、ハァッ」



盗んだバイクも吹っ飛んだ。

足はとっくにズタボロなのにまだ走り続ける。


機械の音の様に、無機質な叫び声が轟く。

見つかったみたいだ、でも走り抜けるしかない。

右足の向きをいきなり変えると、乳酸が溜まって攣りそうだ。

もう僕はアドレナリンだけで動いているのかもしれない。


–その棍棒のような触手が振り下ろされた–


いや、違う。


君だ。


僕は、君の笑った顔がもう一度見たいだけなんだ。

ただ、それだけに。


動かされている。




誰にも、もう邪魔なんてさせない。


何者にも阻ませたりはしない。


握った爪の食い込んだ先から血が滲むほどに。



見つけた。

そこに君がいた。


「フルルちゃん…!フルルぅ!!!」



きっと僕は酷い顔をしているだろう。


ワンデイのコンタクトはよれて、トップスもビショビショ。


もう少し。


もう少しだけなんだ。







僕は、割れた窓に飛び込みながら、彼女の名前を。


呼ぶ。

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