Soul Keeper(s)

HalTo

1話 青辿の霹靂

2015年 春

桜舞い散る季節のとある街中、テーブルを前に一人の中年がこう言う。

「あぁ、今日も今日とてマジック日和だ!」

彼はどうやら街頭芸人、それもマジシャンのようだ。

「あ?いいんだよ、バレなきゃフェアフェア!」

明らかに誰もいない空中に向かって言う。

「どうせ金なんかロクに払いやしねーんだ、その位いいじゃねぇか…」

そんなやり取りを一人でやってるうちに観客が集まってきた。

「おお、集まってきたな。行くぞ『オーバ』革命revolutionだ。」

鮮やかな手つきで次々とマジックを成功させていく。

お世辞にも天才的と呼べるものではないが彼のパフォーマンスは観客の心を魅了していく。

その時、

「なあ、その浮いてるものは何だ?」

「!?」

観客は一人の少年の突飛過ぎる発言により唖然としている。

何故なら少年の指す方向には風船やドローンはおろか、チリ一つない虚空だったからだ。

マジシャンは言う。

「興が覚めてしまったみたいだな、悪いな、少し早いが今日はもうお開きだ。」

そう言うと、集まっていた観客は帰っていった。

しばらくして、

「なあ、のか?」

マジシャンは続ける。

「もし見えてるんだったら…ほれ、口止め料だ。とっととおうちに帰んな。」

マジシャンはポケットから1万円を差し出した。

「いや…帰る家がないんだ。」

少年は言う。

「なんだ、今どき流行りの家出少年ってやつか?」

マジシャンの質問に渋い表情で少年は答える。

「いや…厳密にはわからない。家はおろか、自分の素性や何故ここにいるのかの一切の記憶がないんだ。」

「…は?」

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