第295話 今度こそ完膚なきまでに勝つ
『レイヴェル、とりあえず一人エルフを捕まえて!』
「あぁ、わかった!」
そう言うとレイヴェルは攻撃を仕掛けてきていたエルフの一人を捕まえて無理矢理押さえ込んだ。依然として他のエルフには攻撃されているが、その攻撃はクロエが全て防いでいる。
「捕まえたぞ!」
『ありがとうレイヴェル!』
クロエはレイヴェルの捕まえたエルフに意識を集中し、その体を調べる。
エルフの体にクロエの力を流し込み、おかしな部分を探す作業。体を隅々までスキャンするイメージでその体を調べる。
『見つけた!』
その結果見つけたのは、そのエルフのものとは違う魔紋。そしてその魔紋の形にクロエは覚えがあった。昨日戦ったクランの魔力だ。そしてその魔力に混じっているワンダーランドの力。
一度掴んでしまえば後は早い。今のエルフ達はワンダーランドの力で操られた状態。つまりワンダーランドがどこかで操っていることになる。その力の痕跡を辿ればワンダーランドの元にたどり着けるというわけだ。
『ここで壊せたら……ううん、そんなことしても場当たり的な対処にしかならない。やっぱり直接止めないと』
「そうだな。追えるか?」
『それは大丈夫だけど、とりあえず今いるこのエルフ達を振り切らないと』
「そうだな。このまま放っていくのも気が引けるが、いつまでも相手はしてられない。大砲も壊してるし、しばらくは放っておいても大丈夫だろ」
すでに当初の目的だった砲撃の阻止は大砲を破壊することで完了している。今レイヴェルのことを襲っているエルフ達のことを除けば、この場にいる目的はなかった。
『レイヴェル、目に見えるようにするからエルフの体から出てる線を追って!』
クロエはレイヴェルの目にエルフの体から出ている線を見えるようにして追えるようにした。
レイヴェルはその印を頼りにエルフの追撃を振り払いながら距離を取と、そのまま一気に加速して距離を取る。
「なんとか振り切れたか。コメットとアイアルの方も大丈夫だといいんだが」
『……今は二人とキュウを信じるしかないよ。それに、私達がワンダーランド達を止めることができたらそれがそのまま二人の助けになる。今はできることをやろう』
「そうだな。そのためにも急ぐか」
レイヴェル達は砲撃を止めたが、それでもまだ砲撃音は鳴っている。つまりコメットアイアルが向かった方はまだ止めることができてないということだ。そしてアイアル達の方にもワンダーランドに支配されたエルフ達がいるであろうことは明白だった。
レイヴェル達ですら手こずったあのエルフ達にコメットとアイアル、そしてキュウだけで対処できるかと問われれば難しいかもしれないとレイヴェルは答えるだろう。それだけ無尽蔵に起き上がってくる兵士というのは厄介だった。
レイヴェルは少しでも二人の手助けになれるようにとクランとワンダーランドの元へと急ぐ。
『この方向って……』
「あぁ、聖天樹の方だ」
エルフの国の象徴とも言える場所。レイヴェル達は少しずつそこに近づいていた。
まるで誘い込まれるように。
「誘われてそうだな……でも行くしかない」
『うん。今度は絶対に完膚なきまでに勝つ! やろうレイヴェル!』
そのまま聖天樹まで飛んで行くレイヴェルとクロエ。
そこに近づくにつれてクランとワンダーランドの気配が強くなる。以前はひた隠しにしていた気配をもはや隠そうともしていなかった。
そして――。
『あ、やっと来たよクラン。思ったよりも遅かったかな』
「……別にこなくても良かったのに」
待ち構えていたクランはすでに道化の仮面を被り、臨戦態勢となっていた。
『まぁいいじゃない。どうぜ準備が終わるまでは回収もできないんだし。今度こそ絶対に完膚なきまでに勝つ。そう決めたしね』
こうしてレイヴェルとクロエはクラン、ワンダーランドの二人と再び対峙した。
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