動揺

あかい、縞模様の猫が見ている。


私は蜜柑を一房、

爆ぜてしまわないよう、細心の注意を払って毟り取る。


あかい縞模様の猫が見ている。


摘まみ上げて口へと運び入れる。


あかい縞模様の猫が見ている。


少し数が足りない奥歯で、

細胞の細やかさなど考える隙もなく、暴力的に押し潰す。


あかい縞模様の猫が見ている。


耐えきれず噴き出た甘酸っぱい液体を、薄皮と共に全て飲み込んだ。



あかい縞模様の猫は、ねむっていた。

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