20日目 カレーハウスゴッド
彼曰く、あそこにはカレーの神様がいる。
***
何でもない休日。
そんな日に彩りをもたらしてくれるのが外食。
継続が難しい時期にやってくれているのには本当に頭が下がる。
この企業努力、営業精神に私たち消費者は助けられている。
毎年神様に1年の無病息災を祈るように、感謝してお店の商品を食べるのだ。
吉祥寺サンロード内にある焼肉屋『炭きち』は昼に別の顔を持っている。
『カレーハウスゴッド』というカレー屋さんだ。
最近はいろんな店でテイクアウトカレーが増えているらしい。
カレー屋さんではなく、蕎麦屋やうどん屋、焼き鳥屋など、
もともとカレーを売っていないお店が、だ。
家庭の味といえばカレー、カレーといえばお家の味。
外食はしづらい、でも家事がめんどくさい。
こんなときに食べたいのはやっぱりカレーなんだよなぁ。
そんなサラリーマン、OLの願いを叶えてくれるかのようなお店の配慮。
カレーは世界を救ってくれているのだ。
ぽこぽこと後出しでカレーを出す店が多い中、
ゴッドは早くからカレーを作り始めていたらしい。
世間がコロナなど予期していなかったころから、
すでに神託を受けていたのかもしれない。
まさにゴッド、さすがの所業。
どんな神がかり的なおいしさのカレーが出てくるのかたのしみ。
こじんまりとした店内は焼肉屋を間借りしているため、
不似合いなダクトがついている。
誰かといる時は少し邪魔だけど、今日は一人なので無問題。
神に拝謁するときは一人静かに伺うべきなのだ(持論)。
今回神に頼んだのはチーズドライキーマカレー。
初見を相手にするときの王道は店一番のオススメを単体で頼むことだろうけれど、
野生的な気分だったので農家のベーコンをトッピング。
たまには贅沢させておくれ・・・。
ホールのお姉さんが1人
街のお店の醍醐味は店員さんの存在が身近に感じることだと思う。
密かになごみながら待つこと10分。
やってきたのは白い貴婦人。
雪のようにふわふわなパルミジャーノ・レッジャーノは、
茶色い本来の姿を隠すように白い外套を纏った美神のよう。
恐れ多くも失礼して中を覗くと卵が隠されていた。
嬉しいサプライズ、神の子まで味わえるとは。
うやうやしく割るようにして全体を絡めるように混ぜる。
期待に舌を躍らせながら口に含む。
濃密な肉の旨み。
舌でとろけるチーズの旨み。
全てをまとめるように絡む卵の旨み。
口の中で三層の旨みが広がっていく。
三位一体の相、まさしくゴッド級の美味しさ。
休日のご飯くらいはゆっくり食べたいと思っていたのに、
気づけばもう半分しかなくなっていた。
神の御光臨が短いことを寂しく思いながら、スパイスの三重奏を噛み締める。
お店を出てからもさっきの味が忘れられない。
私が食べ終わるころにはお客さんが増えて、店員さんも慌ただしくなった。
落ち着いたころを見計らってきて正解だったかもしれない。
また美味しいカレー屋さんを見つけてしまった。
1週間くらいここで食べ続けてもいいと思うくらい、満足したけど食べ足りない。
クセになるカレーがまた私を呼んでいる、そんな気がする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます