15日目 挽肉と米

彼曰く、2回目でも変わらぬいいお味。


 ***


遂に決行日。

私は今日この日のために今週を生き延びた。

何なら先月末から行きたいねぇという話はしていたから、

2週間のお預けを食らっていたことになる。

でもようやく行くことができる。

あの味をまた食べることができる・・・。

行く前からよだれが溢れてくる。

食欲が止まらないっ。


車で行けたらいいのだけどお店の近くの駐車場は小さいし、

裏路地入ったところにあるから仕方なく電車で行くことに。

ゴトンゴトンの音とともに腹の虫が鳴っている気がする。

車体が揺れるたびに胃酸が揺れるのを感じる。

胃酸が溢れる前によだれも出てきたので、

着く前におぼれるかもしれないとか考えてたら駅に着いた。

駅から歩いて5分ほど。

オシャレと若者の街、吉祥寺。

感染対策のポップやのぼりを無視するように人だかりのできた商店街。

その喧騒を少し離れて住宅の多いエリアに入りかけたところにある目当ての店。


「挽肉と米」


ハンバーグ定食のみを提供しているこのお店の良いところは、

その日の肉はその日に挽いて、注文を受けてから焼いていくスタイル。

ラウンドキッチン風オープンスペースで、店内は肉の香りと炭焼の煙でいっぱい。

1階部分は打ちっぱなしで換気が心配なところもありましたが、

焼肉店くらい煙が出るお店です、換気対策がしっかりしているのは当然ですか。

匂いがつくことは全く気にしていなかったのですが、

それにも寛容な先輩でよかったです。

寛容な先輩でも今日くらいはいっぱい食べてもいいじゃないとはならず、

最近は1食の量が減ってしまっている模様。

ハンバーグの量は3個までで選ぶことができ、

彼女は2個、私は3個注文しました。


目の前で肉が焼かれていく。

店員さんの手元にある挽肉を丸めてその場で成形。

黒い焼き場に置かれた肉の塊から、ジュゥゥゥという芳しい音が、

濃厚な肉の香りとともに体を揺らす。

先ほどの電車よりも幾分激しく。

その分欲求は高まり、見慣れたハンバーグ色になるまでが待ちきれなかった。

ご飯、みそ汁の提供に合わせて1つ目のハンバーグが置かれる。

置き場の下には少量の炭と灰。

優しい遠赤外線で焼き立てを長く保てるようにしている優しさ。

素晴らしい心遣い。


1個目はそのまま何もつけずに。

通のような食べ方を店員さんから手ほどきされそのままバクり。

肉のうまみが口の中で弾ける。ゴロゴロとした食感が歯を押し返す。

肉汁がいつまでも口に残る。飲み込んでからも鼻と喉にハンバーグが残っている。

噛めば噛むほど美味しさが止まらない。

初めて来たときと同じ味、変わらない味っていいね。

2個目は大根おろしと自家製ポン酢。

先ほどの荒々しい残り香を打ち消すような清涼感。

みずみずしい大根おろしが舌をリセットしてくれて、

のどごしもすっきりさっぱり。

同じハンバーグなのにこうも変わってしまうのか!

驚かせてくれるじゃない・・・。

3個目は豊富なトッピングで。

数ある中でも好きなのは青唐辛子の塩レモン漬け。

さっぱり食べられるのはもちろんのこと、ピリッとした刺激が癖になる。

もう1つはヤンニョム。キムチの素らしい。

旨辛で、これはご飯が進んでしまう。

ご飯が進みすぎてもう3杯目。

肉1つにつき米1杯。

この店に着た瞬間からそのコンビは絶対だったのです。

そして私はそこにさらにもう1杯。

定食に1つ無料でついてくる卵をご飯に入れて、

半分残しておいたハンバーグと食べる醤油をその上に乗せる。

塊を崩しながら米と一緒に口に入れるともう止まらない。

幸せしかない。

今私は茶碗に幸せを詰め込んでるのだ。

ああああ、食べられてよかったあああ!


先輩もご満悦の様子。

ダイエットを始めて1食の量が減って悔しいというのが今日の格言。

店を出る時にしっかりドア枠に頭をぶつけてフィニッシュです。

今日のご飯もありがとうございました!

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