2日目 暇

彼曰く、思っていたよりも暇な時間多いんですね。


物事には波があると言われています。


風に吹かれる海の肌が、

砂浜に寄せては返す波を作り出すように。

やる気のみなぎっている人間が、

朝から張り切って作業に取り組んでいるのを見ていたのに、

夕方ごろには疲れ切った表情を顕わにして、

動いていた手がほとんど動かないほどに疲弊しているように。

だらだら作業している間にふと眠気が来てしまって、

割り切っていったん仮眠20分ほど取ると、

そのあとの時間の進みがものすごく短く感じたり。

程度が高くなる時もあれば、

程度が低くなる時もある。

時には一定になるタイミングもありますが、

概してそうした状態は長くは続かないもの。

しいて言えば、何もしない状態をあえて続けている時くらいでしょうか。

ナマケモノにもほどがあると、

首を斬られるか叱られるかで、

ひとまず檄が飛ぶこと間違いなしですね。

ある意味心に波は立つでしょう。

理不尽を押し付けられたことに対する荒波が。


こうした波と同じように、

物事にも波があるのです。

心の浮き沈みよりもコントロールしづらく、

打ち寄せる波よりはコントロールしやすい、

やろうと思えば波が発生する前に、

物事を完遂までもっていくことが可能な場合がありますが、

そうしたものは大した作業ではないことがほとんどです。

波が起きやすい作業とは、

長期間の作業が前提で、

作業工程をいくつも減る必要があり、

関わる人が多岐にわたり、

天気や季節などの自然に左右される部分もある、

つまりは面倒なことこの上ない仕事、というわけなのです。


そしてその面倒な仕事の集合には、

私の仕事も属しています。

面倒な仕事が空集合になることは、

きっとしばらくないでしょう。

人類と科学技術の進化は著しいというのに、

そうした改善、改良にはなかなか進まない。

宝の持ち腐れ感がありまくりですね。

おかわいそうな人類だこと。

暇な時間の必要性を感じておくべきだわ。

そう言い放つお嬢様がいてもおかしくありません。


それもそのはず、

昨今の労働問題を受け、

政府により労働時間を遵守するよう、

お達しが下部組織にまで届いているのです。

「働きすぎ、自己責任でご注意を」

簡単に言えばそうした内容のお触れです。


本当に守れるものかしら。

実効性の低さに若干の心配を覚えますが、

上からのお達しであれば従わざるを得ません。

今まで当然のように残業をしていた時間帯は消え、

労働への姿勢の引き締めが強化された形です。

これまでとは違う労働方式に急に変えるよう言われても、

なかなか納得いかないというか、

理解が追い付かないことは多々あります。

そもそも残業してようやく終えられている部分の合った仕事。

何もかも初めての新人はともかく、

従来の方式に慣れた人間は慣れるまで難しい。

そうした弊害はあるでしょう。

それでも罰則があると言われれば、

大人しく従うのが日本人です。

面倒なところにわざわざ波風立てないのも、

1つの生き方なのかもしれません。


QOLが上がるのは願ったり叶ったりですが、

新人である後輩には不満があるようで。

「自分で管理するのって難しいっすね」

仕事をしたくてたまらない時期だろうに、

難題も一緒に慣れなければならないとは。

不憫なことこの上ない。


しかし大丈夫ですよ新人君。

私も守れるか微妙なのですから。(当然威張ることではありませんが)


それでも何とか守るため、

波の低いときには残業せず、

高波に襲われているときは、

上限に気を付けて走り切る。

ときには先輩にお願したり、

方法はいろいろあるでしょう。

覚えたてにはつらいことかもしれませんが、

未来の大変な時期のためにも

「必要な暇な時間なのだ」と、

理解してもらえるように、

まずは私たちが見本になるように、

残業癖をなくすところから実行していかないといけませんね。

寝貯めをすることは出来なくても、

残業時間の貯金は作れるはずですから。

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