第26話 彼女の私服。
「あっ、せんぱい! こっちですこっち」
休日の昼。今日は
待ち合わせの駅前へ着くとすぐに、恋人である
「よっ」
「こんにちは、せんぱい」
「まだ美咲だけか?」
「そうみたいです」
初音と、もう1人の謎の男はまだ到着していないらしい。あーこのまま2人でデートを開始してしまいたい。
それからふと美咲の様子を窺うと、なんだか妙にもじもじとしながら、こちらをちらちらと何か言って欲しそうに見ていた。
「どうかしたか?」
「あ、いえその…………」
やはりもじもじと、歯切れの悪い美咲。
だがそこで、美咲の求めることに俺も気づく。
口にするのは少し憚られたが、これもデートの定番というやつだと思うから。
俺はなんとかその言葉を口にした。
「あーその、似合ってる。その服」
「ほ、ほんとですか……!?」
「ああ。か、かか可愛いと、思う」
「せんぱいがまた可愛いって……可愛いって〜〜〜〜うぅ〜〜〜〜」
俺が言うと、美咲は不安そうな様子が一転、その場でぴょんぴょんと小さく跳ねながら、嬉しさと恥ずかしさの隠し切れないかのようなニヤケ顔を両手で押さえた。
そう、服だ。今日は休日であり、もちろん美咲も俺も、いつもの制服姿ではない。
私服姿の美咲が、目の前にいる。
美咲の服装はレースのあしらわれた、たまご色のワンピース。
シンプルだが美咲の元気ながら清楚なイメージに合っている。
それでいて、肩や二の腕はフリルでしっかり隠れているのに、胸元はゆったりとしていて普段は隠れた肌色ががよく見える。
夏が押し寄せてきている今の季節感にも合っていて、とても涼しげだ。
そしてさらりと流れる黒髪には、初デートの時にプレゼントした桜の髪留め。
それだけでも、嬉しくてたまらない気持ちになる。
と、まあ色々言ったが何が言いたいかというと。
可愛い。
俺の彼女可愛すぎるんだが!?
感想求めてもじもじしてたり似合ってるって言った瞬間嬉しそうにぴょんぴょん跳ねたりなんなのこの子!?
しかし彼女の可愛さに心の中で悶えていると、さらなる追撃が。
「あ、ありがとうございます、せんぱい。とっても嬉しいです。せ、せんぱいに褒められたくて、頑張ったんですよ……?」
あーもうなんなのこの子!
上目遣いヤバいって。
俺のために服を選んでくれたんだと思うとそれだけでもう愛おしさが止まらなくなる。
もう抱きしめたい。このままお持ち帰りでオーケーなのでは!?
初音さんのデートプランとかいらないのでは!?
「それにその、……せんぱいもその服、カッコいいですよ……♪」
「ごふっ……!?」
「せ、せんぱい!? どうしたんですか!? お腹痛いんですか!?」
「い、いや……なんでもない。それより、ありがとな。俺なんかの服まで褒めてくれて……」
「いえ、せんぱいは本当にカッコいいですから♡」
「お、おう……」
本当に、嘘偽りはないという笑顔で言う美咲。
あぶないあぶない。あまりの不意打ちすぎて思わず吐血してしまうところだった。
まさか自分の服が褒められるなんて思ってなかった。カッコいいなんて生まれて初めて言われた。
秘技・マネキン買いに感謝!!
そしてひそかにそれを教えてくれた初音神に感謝!
……もうデート終わりでよくない?
今日のところは満足です。
というかこの先耐えられる気がしない。
休日の私服デートとは、制服で行うデートとはまた違うものらしい。
こんな褒め合いから始まるとか。
どんな試練だ。悶え死ぬわ。
彼女が可愛すぎるわ。
「「………………」」
それからお互いにちらちらと相手を見たりしながら、でも何も話すことができず無言。
お互いの顔がこれ以上ないくらい朱く染まっていることはお察し。
そしてもうこれどうすればいいの、と思い始めたとき。あっけらかんとした明るい声が俺たちに掛けられた。
「あ、いたいた〜。ごめーん待った!?」
現れたのは俺の幼馴染である金髪の少女・
そして初音が連れてきた男。ちらと見ると、いかにも優男といった感じのイケメンだった。
「いやめっちゃ待ったわ」
「あ、ひど。そこは今来たとこ、でしょ? そんなんじゃ彼氏やってけないよ?」
「いやおまえの彼氏ではないし」
「はいはいそうですか〜」
他愛のない軽口を交わす俺と初音。
初音のおかげでやっと緊張から解放された気がする。
いや、ダブルデートで良かったわ。
美咲と2人で休日の私服デートはまだレベルが足りてなかったわ……。
〜〜〜〜〜〜
更新遅れました〜。申し訳ないです。
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