ノーティス

味噌なす

第一章 序章 夜凪

 激しい咆哮に似た、まるで獣から発せられたようなそれは集団となってぶつかり合った。

 俺は無我夢中で戦火の飛び交う荒野をかけた。恐らく明日を迎えることはないだろう。

それでもほんの少しの希望があるならば、そう思うことのみが身体の原動力となっているのだろう。不思議と走る足は止まらなかった。

 高らかな音をたてながら鉄の塊が自分の数メートル近くで着弾した。

 爆風に飲み込まれ身体は後方へと大きく飛び上がりそれを認知した頃には地面に叩きつけられていた。全身に激痛がはしる。

「っ〜〜!!」

 言葉にならない声とともに悶絶してしまいそうになる。治ったかと思うとまた痛くなる。これの反復だった。痛みで意識が薄れていたが仲間達が無残に倒れていく音だけは聞こえた。やがて何も聞こえなくなった。


 気を失っていたのであろう。

 一体何時間気絶していたのか。すでに陽が沈みかけていた。

 辺りを見渡すと先程までの爆音達は嘘のように静まり返り、残っていたのは兵士の死体と戦いの跡だけだった。

 俺はその光景を泣くでも蹲るでもなくただ目を見開き佇むだけだった。

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