第2話 ゲーム感覚
「ここでフェイントを入れて…やはりこのシュートは確率30%ってところか。」
今日もブツブツ呟く。数ヶ月間、少なくとも週5回は体育館で見学させてもらっている。マネージャーがとても可愛いからでは、決してない。それをここに誓っておく。
三年生4人に、二年生6人、1年生は9人、マネージャーは三年生に1人。各選手の特徴や癖、得意プレイや弱点、パワーやスピードなど項目を細かく分け、一人一人を分析する。さらにコンビなどの相性も見ながら、その都度更新する。
育成シミュレーションゲームに似た感覚、さらに思い通りに進むことも少なく、指示すら出せない。攻略本もない。激ムズゲームより、何倍も難しい。クリアできないが、なんとも楽しいのだ。まぁゲーム好きなオタクと言われていた僕の頭の中は、他の人には理解されないだろう。でもそれで良い。一人で楽しむだけで、十分なのだ。まずい、楽しくて一人でニヤついてしまった。高校生を見てニヤついていては、変質者扱いされてしまう。
【今日はキャプテン原田のシュート率が低い。原因は、アップで軽く痛めた足首を無意識に庇っている、早めにアイシングすれば問題なさそうだが】
【センター堀口、左利きのためか左ターンは早いが左ターンが多すぎる、右ターン増やせば、攻めやすいだろう】
【一年、吉村。3ポイント確率は高い。クイックではまだ打てないがピンポイントでは使える、足も一年ではダントツ早い。少しナルシストかも、自信がある様子】
夢中で分析しているうちに、気付くと練習は終わってしまう。楽しい時間は短いとは、うまいこと言ったものだ。
「どーも!」
コートから声がかかる。山田先生だ。
山田先生「渡辺さん。下に来てもらっていいですか?そこの、用具室に。」
卓「え!あ、はい!今行きます、はい。」
と、急いで下へ降りた。
山田先生「こないだ話した通り、例のものは…」
卓「あ、はい。も、もちろんです。」
リュックから、大学ノートを6冊ほど取り出す。
見学の唯一の約束だった。
今度いつか私が希望したらノートを見せて下さいますか?僕は、ノーとは言えなかった。ノートだけに……。
山田先生「マネージャー、入りなさい。」
「失礼します」と、やはり不審に思っていたのか、無表情の女子マネージャーが、入ってくる。
!!?
「ちょっ、あっ、え。」
僕は何も言えないまま、先生がマネージャーにノートを渡す。
あれは何分間だったのか。僕にはとにかく長く感じた。
女子高生とおじさんの山田先生、二人はノートをガン見。僕はとにかく静かに、時が過ぎるのをただただ待った。
しばらくして、今日のノートを見ていたマネージャーが、急にコートへ走って向かった。
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