第15話 研究の成果
研一郎がこの家に来て一か月が過ぎていた、研一郎は天井を見ながら、不思議な気分に浸っていた、ベットの隣ではジェニファーがすやすやと幸せそうに眠っている。
今朝、ウインステッド一家に、勿論ジェニファーも一緒だ、に研究課程を見せた、それは何の変哲もない只の30センチ四方の金属の箱だった。
「これは何かね」とカーターが質問した、
ウインステッド財閥の創始者だ、ジェニファーから、きっと面白いものが見れるはずだと説得され見物に来ていた。
「発電機です」あっさりと研一郎が答えた。
「発電機かね」
カーターが言った、皆の落胆と怒りが滲み出ていた、ジェニファーも落胆の表情をしていた。
ジェニファーの父ジェフリーが詰問した。
「一ヶ月を掛けて只の発電機を作っただけか、ジェニファー」と露骨な怒りを見せた。
「研一郎さん、どう言う事」
研一郎は、全く慌てる風もなく微笑んでいた。
その表情がまた皆の怒りを呼んだようだ。
ジェフリーが怒りの言葉を言いそうになるのを研一郎が手で制した、一族の総帥を手で制してしまった。
これには、祖父もジェニファーもジェフリーの妻も驚いた。
「この発電機一台で、小さな町の電力を1カ月程賄えるでしょう」
この言葉に、皆は研一郎と箱とを交互に見交わし信じられないと言った顔をした。
「電力供給だけなら、もっと小さく出来たのですが、安全装置と保安装置を追加しましたので少し大きくなってしまいました」
研一郎の機能については全く疑いを持っていない言葉に皆が取り込まれてしまった。
息子のジェフリーが質問しようとするのをカーターが止め、自分が質問した
「確認はどうするつもりだ、どうやって我々を納得させる」
「そうですね、この屋敷は、かなりの電気を使っていますし当然、非常時の自家発電の設備もあるはずです、その自家発電の変わりに設置し本線を遮断して下さい、安全装置がありますので、感電したり、過供給にはなりません」
祖父のカーターが現在の会長である息子のジェフリーに顔を向け頷いた。
ジェフリーが電話で屋敷の管理主任を呼んだ、暫くしてやって来た男に研一郎が言った事を説明し箱を持たせた。
カーターが問うた。
「それで、国中の需要を満たすには、どれ程の大きさが必要かね」
「あれでも、供給は可能です、が、一分も持ちません、燃料切れです、単純に電力量計算すると1メートル四方で1年になります、国中を一箇所に集約する事はお勧めできません、送電の為に効率が悪いのです、各州に一箇所づつ設置すれば10年稼動します、実は永久機関にも出来ますがしていません」
カーターが再度尋ねた。
「なぜかね」
「悪用防止です」
その時、電話がなり、準備が整ったとの連絡が入った、カーターが頷き、ジェフリーが受話器に向かって話すと直ぐに、朝なのに点いていた部屋の奥のライトが一旦消え又点いた。
今度は祖父のジェフリーが問うた。
「これだけかね、これでいつまでかね」
「こんなに大きな屋敷といえども10年位の電気代は無料でしょうね」
「ジェフ、直ぐに外して厳重保管しなさい」
祖父のカーターが現在の会長の息子に命じた。
「お爺様、保管しても何もなりません、研究所に戻して屋敷の警備を厳重にするべきと思いますが」
「おぉ、儂とした事が、すっかり慌ててしまった、余りの大発明にな」
それから、研一郎が箱の安全装置と保安装置の説明をし、全米電力供給会社の設立へ向けての計画作りに一日を費やした。
箱の安全装置とは、出力端子に人が触れた時を想定し閉回路が接続されると抵抗測定し負荷がある時のみ電力を供給する仕組みの事だった。
この仕組みには一つ問題があった、この機構をそのまま流用し電力供給を行うと、どこかで意図的にショートさせると供給地区全域が停電してしまう。
つまり容易にテロが行えると言う事を意味していた。
その為、商業化には、このシステムを除去するか他の方法を考える必要があった。
保安装置とは、内部構造を探ろうとする者への防御である。
この技術を応用すると原爆、水爆の比ではない破壊力を生む、その為、X線防御、MRI防御に加え外装破壊時の内部構造溶解のシステムが組み込まれていた。
このシステムを聞きカーターは研一郎の思慮深さに驚き感銘したようだった。
彼も息子のジェフリーも軍事利用を決して望んではいなかった。
研一郎は満足していた、ジェニファーの言う通り一族はお金に余り執着していなかった。
無尽蔵とも言える電力を得て、電気料金を只同然のような金額に設定した。
料金設定に加味されたのは、初期設備費と保全、保安要員費、送電線の賃料、と少々の儲けだけだった。
この屋敷に来て、次の日から研究所の建設が始まり、完成まで研一郎は車庫の片隅で作業をした。
一族の建設会社だけに最優先の指示だったらしく24時間の工事を行い2週間で完成させた。
後で聞くとジェニファーの強い強い押しがあった様である。
それは脅迫とも言えるようなものだったと後に父ジェフリーと祖父カーターの言葉だった。
完成した研究所は、研一郎の希望以上の出来で研究に集中できる様に工夫がなされていた。
何よりジェニファーが付きっ切りの助手を務めてくれ組み立て作業には十二分な活躍をしてくれた、そして二人は・・・・。
研一郎が横を見るとジェニーが目覚め、微笑みながらじいっと研一郎の顔を見ていた、
「ケン、どうしたの」
「うん、君と出会ってからの事を思い出していた」
「後悔しているの」
「いや、後悔など、するものか、君と知り合えた事以外はどうでもいいよ」
「知り合えただけ・・・」
「うむ~」
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