第22話

物理実験をしながら…


ピカピカになったフィルムケースが雑巾の上で太陽に照らされている。


「中学生の時にさ、フィルムケースの中に水素と酸素入れて反応させて飛ばすっていう授業があったの。」


「ああ、やった気がする。」


「でね、先生が、すぐに飛ばないからと言って触ってみたりしてはいけませんて言いながら手本をしてたのね。でも、先生がやったやつが三分ぐらいしても飛ばなかったから、先生が触ろうとしたのね。」


「フィルムケースが飛んだ?」


「うん。触ろうとしたときに飛んだ。顔には当たらなかったけどね。天井がへこんで、落ちてきたときに先生の頭の上にのった。」


「どうなった?」


「この実験は危ないので止めますって言ってやらせてもらえなかった。」


「じゃあ、今度やろっか。」


「うん。」


フィルムケースはまだ濡れていた。

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