第96話 嵩んだ弾薬費

 ハンター達が必死に小型タンクランチュラと交戦している。

 通信機からシカラベの指示が飛んでいる。


「逃げる個体は無視しろ!

 そいつらを倒しても賞金が出るわけじゃねえ!

 親の防衛をしているのなら、親を撃破すれば周囲に散る可能性もある!

 親の撃破を主目的に考えろ!

 2番!

 マーキングはどうなってる!」


「こちら2番!

 親個体に誘導機を設置しても、子がそれを破壊している!

 ……ちょっと待て!?

 親から誘導機を剥がして離脱していく個体がいた!

 誘導機を付けたまま、1番の車両の方に向かっている!

 誘導設定を変えないと、ロケット弾がそっちに飛んでいくぞ!」


くそが!

 親個体は移動不可能だな!

 多少威力が下がるが仕方ない!

 誘導設定を親個体の座標に変更する!

 2番は作業を子の撃破に切り替えろ!

 ロケットランチャー持ちの連中は1分間隔で攻撃だ!

 発射のタイミングを通信機からのカウントに合わせろ!」


 通信機から機械音声が繰り返される。


「59、58、57……」


 全員の通信機から同一の音声が流れている。

 ハンター達の耳にその指示は届いていたが、大半の者はそれどころではなかった。




 アキラが非常に険しい表情で、舌をまないように、思わず叫んでしまわないように、歯を食いしばりながら周囲の敵を銃撃している。

 怒鳴り散らしたところで改善などしない状況が周囲に広がっていた。

 小型のタンクランチュラが、機械の子蜘蛛ぐもの群れが、荒っぽい運転を続けているアキラの車両を取り囲もうとしているのだ。


 激しい揺れの中でも問題なく会話ができる念話の利点を活かして、アキラが戦いながら理不尽な疑問をアルファに尋ねる。


『アルファ!

 何で俺だけこんなに囲まれているんだ!?』


『アキラだけではないわ。

 シカラベの車両も囲まれているわ』


『あれは指令車だからだろう!?

 車体も大きくて目立って頑丈そうで脅威になるからだ!

 目立つ機銃だって付いているからだ!

 俺の車は他の車と大して差はないじゃないか!

 何で俺だけ狙われるんだ!?』


 当初子蜘蛛ぐも達は親蜘蛛ぐもから周囲に放射状に広がっていった。

 そして周囲のハンター達を区別なく襲っているように見えた。

 しかし周囲にある程度広がってからは、シカラベの車両とアキラの車両を取り囲むようにして優先的に攻撃し始めた。


 勿論もちろん他のハンター達も襲われている。

 しかし明らかにシカラベとアキラを優先的に襲っていた。


 アルファが苦笑しながら話す。


『初めに偶然敵の目標に成りやすい場所にいて、応戦して無傷で子蜘蛛ぐもを真っ先に倒したから、敵の交戦アルゴリズムから強敵として優先撃破対象にでも設定されたのかもね。

 運が悪かったとでも思いましょう』


 アキラが自棄やけになって笑いながら話す。


『俺の運が悪いからか!?

 そう言われたらもうどうしようもないな!』


 アキラも自分の運の悪さは自覚している。

 そう言われてしまったら、後はその不運がアルファのサポートで対処可能なものであることを祈るしかない。


 不規則に蛇行している揺れる車両の上で、車両の慣性を強化服の操作で受け流しながら、車体の壁に足を付けてCWH対物突撃銃の専用弾の反動を押さえつけて、車両の一番近くにいる機械の蜘蛛くもを銃撃する。

 重心移動を僅かでも誤ればすぐにでも車外に放り出される不安定な状況で、アキラは死に物狂いで必死に応戦し続けていた。


 既に周囲には破壊された小型のタンクランチュラの残骸が幾つも散らばっている。

 しかし敵の砲撃が弱まる気配は全くない。


『アルファ!

 幾ら何でも多くないか!?

 もう結構倒してるよな!?

 他のハンターも戦っているし、シカラベの車両搭載の機銃でだってかなり倒しているはずだ!

 これだけ倒しているのに、何で一向に数が減らないんだ!?』


 アキラも、シカラベ達も、他のハンター達も、既に相当数の子蜘蛛ぐもを撃破している。

 しかし敵の圧力が弱まっているような気配は全く感じられない。


『あの親蜘蛛ぐものデカい腹にみっちりたっぷり詰まっていたとしても、幾ら何でも限度があるだろう!

 この数は変だぞ!

 幾ら俺の運が悪いとしても、その所為で分裂して増殖したりはしないだろう!?

 親蜘蛛ぐもが交戦前に食事中だったとしても、食べていた車両を材料にして子蜘蛛ぐもを造っていたとしても、やっぱり限度があるだろう!?』


 アルファが言いにくそうな表情で話す。


『その件に関しては、残念なお知らせがあるわ』


『何だよ!?

 やっぱり分裂とかしているのか!?』


『違うわ。

 子蜘蛛ぐもは親蜘蛛ぐもの腹以外からも出現しているの。

 周囲の荒野から集まってきているのよ。

 親蜘蛛ぐもは女王ありならぬ女王蜘蛛ぐもで、小型の同機体を生産して周囲の荒野にばらまいていたのかもしれないわ。

 そして生産拠点をまもらせるために周囲の子機を集結させているのかもしれないわ』


蜘蛛くもってそういう生態なのか!?』


『さあね。

 普通の蜘蛛くもからは大砲や無限軌道が生えたりはしないから、いろいろ違うのかもしれないわ』


 アキラの表情が引きる。


『ぜ、全部倒さないといけないのか?

 もしそうなら、後どれだけ残っているんだ?』


 減る気配すら見えない敵の数が、アキラの体力と精神と弾薬を削り取っていく。

 じわじわと殺されているような錯覚を、CWH対物突撃銃の専用弾を食らってばらばらに吹き飛ぶ敵の光景を見て誤魔化ごまかしている。


 だがその誤魔化ごまかしも、敵の数に限りがあることを前提としたものだ。

 その前提を覆すような状況がアキラを更に疲弊させていた。


『分からないわ。

 シカラベの予想通り、親蜘蛛ぐもを倒せば逃げていくかもしれない。

 でも全滅させる覚悟で戦いましょう。

 シカラベの予想が間違っていたとしても、全滅させれば関係ないわ』


 通信機からロケットランチャーでの攻撃タイミングを合わせるための機械音声が聞こえる。


「……6、5、4……」


 アキラが慌ててロケットランチャーを準備する。

 狙う必要はない。

 引き金を引きさえすれば自動誘導で飛んでいく。

 タイミングを合わせて引き金を引く。


「……1、0」


 アキラが撃った分も合わせて、計10発のロケット弾が上空に飛んでいく。

 そして空中で大きく軌道を変えて親機のタンクランチュラへ飛び込んでいく。


 親機の周辺にいる子機が次々に砲弾を放ってロケット弾を迎撃する。

 親機まで届いたロケット弾は6発。

 初回の攻撃のように親機の巨体に接着した誘導装置による誘導ではないので、多少着弾位置がずれている。

 それでも無数の爆発が親機を呑み込んだ。


 巨大なタンクランチュラは健在だ。

 少なくとも子機は逃げようとせず、親機の護衛を続けている。


 通信機から機械音声が繰り返される。


「59、58、57……」


 アキラが表情をゆがめる。


『本当に頑丈だな。

 賞金が掛かるわけだ。

 もう一度初回の攻撃ができれば流石さすがに倒せるんだろうけど』


『そうするためには、それを邪魔する子機を倒さないといけないわ。

 子機と交戦中でさっきの攻撃に参加できた人数も少ないしね』


 襲いかかってくる子蜘蛛ぐもの群れに対処しながら、ロケットランチャーでの一斉攻撃に加わるのは至難の業だ。

 対応できたハンターは僅かだった。


『とにかく子蜘蛛ぐもの数を減らすしかないのか』


『そういうことよ。

 私もサポートするから頑張りなさい』


『ああ、そうだな』


 他に手段などないのだ。

 その手段が状況を改善させると信じて、アキラは必死に戦い続けた。


 アキラが必死に戦って多くの敵を倒すほど、敵はアキラを強力な個体と評価して優先的に撃破しようとする。

 アキラの周りに更に多くの敵が集まり、それらを倒すことで更にアキラの優先度が上昇していく。

 その繰り返しだった。

 アキラはそのことに気付いていなかった。


 アルファは気付いていたが、黙っていた。

 教えても意味がないからだ。


 なお、アキラが初めに他のハンターより優先的に襲われた理由は、移動中のアキラの狙撃が原因だ。

 パルガの指示が出る前に遠方のモンスターを一撃で倒したあの狙撃を、偶然近くにいたタンクランチュラの子機が見ていたのだ。

 それにより、ほんの僅かだがアキラの優先度が他のハンター達より上がっていたのだ。


 あの狙撃がなければ、アキラは他のハンター達と同程度の脅威としか認識されなかった。

 これはアルファも知らないことだ。


 アキラは運が悪かった。

 それだけは、アルファの言葉通りだった。




 トガミは必死だった。

 アルファの非常に荒っぽい運転の所為で激しく揺れる車体から投げ出されないように、必死に車体にしがみつきながら、周囲の機械蜘蛛ぐもを何とか倒そうとしていた。


 だが倒せない。

 揺れる車体からの銃撃は非常に困難で、敵もかなりの速度で移動しているのだ。

 狙い撃つのを諦めて乱射に切り替えているが、それでも弾をき散らすのが精一杯で牽制けんせい程度にしかなっていない。

 偶然当たった銃弾で小型の子蜘蛛ぐもを数体倒しはしたが、それだけだ。


 ロケットランチャーによる一斉攻撃にも参加できていない。

 舌をみそうでろくに口も開けない。

 実力を認められて賞金首討伐に参加したのだというのに、自分は大して役に立っていない。


(……くそっ!

 俺が!

 この俺が!)


 近くの敵を銃撃しながら、トガミは不甲斐ふがい無い自身への怒りで震えていた。




 数体の子蜘蛛ぐもがアキラの車へ突進してくる。

 生体砲弾が尽きたのか、既に車にかなり近付いているのにもかかわらず、砲撃もせずに勢いよく突っ込んでくる。


 アキラが近づいてくる個体を順に銃撃していく。

 敵が砲撃できないとしても、勢いよく車両に体当たりされるだけでも厳しいのだ。

 車が横転などしてしまえば致命的な状況になり兼ねない。


 ここでアキラは撃破する個体の優先順位を誤った。

 車両との距離を基準に優先順位を決めていたのだが、個体の体長も考慮に入れるべきだった。


 体長1メートルほどの個体を撃破している間に、体長2メートルほどの大きめの個体が距離を詰めてくる。

 それでもその大きめの個体が車両に体当たりをする前に、アキラはその個体の胴体部分を銃撃して撃破した。


 次の瞬間、大きめの個体の腹部がはじけ飛んだ。

 その腹部から孫蜘蛛ぐもと呼ぶべき更に小さな個体が飛び散ったのだ。


 複数の孫蜘蛛ぐもが宙を舞ってアキラの方へ飛んでくる。

 アキラは思わずその孫蜘蛛ぐもを殴り飛ばした。

 だが一匹殴り飛ばした程度では、車両まで飛び散ってくる他の個体まで防ぐことはできない。


 アキラが慌てながらそれらの孫蜘蛛ぐもを見る。


『何だこれ!

 また増えるのか!?』


 アルファが素早く指示を出す。


『アキラ!

 車両に取り付いた個体をすぐに除去して!

 車が食われているわ!』


 アキラが慌てて車に引っ付いている孫蜘蛛ぐもを見る。

 孫蜘蛛ぐも達が車両の装甲タイルや座席などに食いついていた。

 アキラの視界がアルファによって拡張され、優先的に除去するべき孫蜘蛛ぐもが強調表示される。


 車の制御装置を食われでもしたらおしまいだ。

 アキラは意識を集中して、体感時間をゆがませて、強化服を操作して、可能な限り急いで孫蜘蛛ぐもに対処する。


 座席にいた個体を蹴り飛ばし、ハンドルをかじっている個体を引き剥がして車外に捨てる。

 ボンネットの装甲タイルを剥がそうとしている個体にCWH対物突撃銃を向けて、慌ててAAH突撃銃に持ち替えて銃撃する。

 CWH対物突撃銃の専用弾などを車両に撃ち込んだら大変なことになる。

 AAH突撃銃の通常弾を銃弾の角度に注意して命中させて車両から引き剥がしていく。


 車にはまだ大量の孫蜘蛛ぐもが取り付いている。

 急いで銃撃してその数を減らしていく。

 倒す必要はない。

 車両から引き剥がすのが最優先だ。


 アキラがぎょっとする。

 トガミが車両の内部にいる孫蜘蛛ぐもに大口径の銃を向けていた。


「よせ!」


 アキラは思わずそう叫んで、トガミが狙っていた個体を素早く蹴り上げて、殴り飛ばして車外に吹き飛ばした。


「何やってるんだ!?

 そんな銃で車両を銃撃するな!

 車が壊れるだろう!」


 トガミが慌てながら反論する。


「こんな時に何を言ってるんだ!

 荒野仕様の車両がそれぐらいで壊れるか!」


「俺の車だぞ!?」


 どちらかといえば、正論を言っているのはトガミの方だ。

 だがアキラはトガミも自分と同じようにCWH対物突撃銃の専用弾のような強力な弾丸を使用していると思っており、その銃弾で自分の車両を吹き飛ばそうとしているように見えて大声で言い返した。


 二人が無駄な言い争いをしている間にも、アキラの車両は孫蜘蛛ぐもかじられ続けている。


 アルファがアキラに指示を出す。


『アキラ。

 勢いを付けて引き剥がしてみるから、振り落とされないようにって伝えて』


 アキラは指示の意味が分からずに一瞬だけ怪訝けげんな表情を浮かべたが、すぐに気付いてトガミに叫ぶ。


「振り落とされないようにつかまれ!」


 だがトガミはいきなり怒鳴られて驚きの表情を浮かべるだけで、その指示に対応できなかった。


 アルファが車体を激しく回転させながら急激にUターンさせる。

 慣性と遠心力で車体に取り付いていた孫蜘蛛ぐも達が飛び散っていく。

 そしてトガミも一緒に車外に投げ出された。

 アキラは宙に浮いたトガミに手を伸ばしたが、届かなかった。


 トガミが宙を舞い、地面にたたき付けられる。

 強化服がその衝撃から彼の体をまもったが、銃もない状態で置き去りにされてしまった。

 Uターンした車がどんどん離れていく。


「ふ、ふざけ……!」


 ふざけるな、と言い切る前にトガミの表情が凍り付く。

 体長2メートルほどの小型タンクランチュラがトガミに襲いかかろうとしていた。

 生体砲弾が切れているのか、あるいは食料を必要としているのか、トガミに食いつこうとしている。


 トガミも曲がり形にも反カツヤ派に押し上げられるだけの実力者だ。

 反射的に強化服の全力で蹴りを放っていた。

 だがその渾身こんしんの一撃は、子蜘蛛ぐもの小型車並の体を僅かに揺らがせて、敵の攻撃を数秒遅れさせただけに終わった。


 死の認識がトガミの意識を加速させ、世界の歩みを遅くする。

 トガミの視界にゆっくりと近付いてくる敵の姿が映っている。

 その濃密な時間の中で、トガミが絶叫をあげようとする。


 次の瞬間、トガミを襲おうとしていた子蜘蛛ぐもが、上空からアキラに両脚で踏みつけられた。

 その痛烈な一撃が子蜘蛛ぐもの巨体を大きくゆがませて、地面に少しめり込ませた。


 唖然あぜんとしているトガミの前で、アキラが足下の子蜘蛛ぐもにCWH対物突撃銃を向けて引き金を引く。

 専用弾の直撃を受けた子蜘蛛ぐもがばらばらの金属部品となって飛び散った。


 アキラは更に周囲の別個体をCWH対物突撃銃で銃撃し続ける。

 アキラ達を襲おうとしていた子蜘蛛ぐも達が次々に粉砕されていく。


 アキラの車が再びUターンして戻ってくる。

 他の個体に距離を詰められる前に、アキラはトガミをつかんで完璧なタイミングで車に飛び乗った。


 二度の高速Uターンで車両に取り付いていた孫蜘蛛ぐもの除去は済んでいた。

 アキラがトガミを後部座席に少し乱暴に投げる。

 トガミは唖然あぜんとし続けていた。


 アルファが苦笑しながら話す。


『アキラ。

 ちょっと危なかったわよ?』


 アキラが少し険しい表情で答える。


『仕方ないだろう。

 こんな状況で戦力を減らしてたまるか』


『アキラの車両に置いておいても大した戦力にはなりそうにないわよ。

 邪魔にもなったしね』


『そうだな。

 だから』


 アキラが軽く笑って話す。


『シカラベの要望通り、シカラベの車へ投げ込もう』




 シカラベの車両もアキラと同じようにタンクランチュラの孫蜘蛛ぐもに襲われていた。

 車両に近付いてきた子蜘蛛を破壊したらその腹から飛び散ったのだ。

 車載の機銃では、車両の側面にいるそれらの個体を破壊することは無理だ。


 制御装置に表示されている車の耐久値が徐々に減っていく。

 シカラベがそれを見て舌打ちする。


「仕方ねえ。

 自力で何とかするか」


 シカラベは車を自動運転に切り替えると、移動中の車両から外に出て車体に貼り付いている孫蜘蛛ぐもを除去するために車両後部の扉を開く。

 すると、近付いてくるアキラの車両を発見した。


 アキラは車両をシカラベの車両に近づけると、トガミをつかんでシカラベの車両へ投げ飛ばした。

 シカラベが空中のトガミをつかんで車内に入れると、アキラはそのまま離れていった。


 シカラベが笑いながら話す。


「あいつ、本当に俺の車に投げ込みやがった。

 有言実行なやつだな」


 投げ飛ばされたトガミが唖然あぜんとし続けている。

 シカラベがトガミを軽く蹴って正気に戻す。


「お帰り。

 ちょうど良い時に帰ってきたな。

 トガミ。

 車の運転はできるな?」


 トガミは状況をいろいろと把握できずにあたふたしている。

 シカラベがトガミの頭を強く振って意識を自分に向けさせる。


「トガミ!

 運転できるのか!

 できねえのか!

 どうなんだ!」


「で、できる」


「俺の代わりに運転しろ。

 自動運転だと限度があるからな。

 何かあれば連絡しろ」


 シカラベはそう指示を出すと、開いた後部扉の天井の部分をつかんで、器用に車両の上に登っていった。

 そして車両の上から側面に貼り付いている孫蜘蛛ぐもを次々に銃撃して車体から剥がしていく。

 剥がれて落下し地面に落ちた孫蜘蛛ぐもが、車にかれてばらばらになっていた。


 我に返ったトガミは慌てて運転席に向かった。




 アキラがシカラベの様子を見て驚いている。


すごいな。

 あんなことよくできるな。

 車体の上だぞ?

 落ちたらどうするんだ?』


 アルファが微笑ほほえんで話す。


『感心して見ていないで、アキラも自分の仕事に戻りなさい。

 子蜘蛛ぐもの数も少しずつ減ってきたわ』


『おっと、そうだった』


『彼を振り落とす心配がなくなったから、車の速度をもっと上げるわ。

 気を付けてね』


『ちょっと待て。

 あれでも手加減していたのか?』


『そういうこと。

 行くわよ』


 車が急加速する。

 アキラは慌てて体勢を直した。


 ハンター達の必死の応戦の甲斐かいもあって、戦況は少しずつハンター側に傾きつつあった。

 アキラも車の制御装置の故障を疑わせるほど荒い運転をし続けるアルファに、愚痴に近い自棄やけの言葉を何度も吐きながら、小型戦車のような機械蜘蛛ぐもを必死に破壊し続けていく。


 戦況がこのまま推移し続けていけば、いずれはシカラベ達の勝利で終わるだろう。

 しかしそれはあり得ないのだ。

 戦闘を継続するためもっとも必要な弾薬がその前に尽きるからだ。


 アルファからその説明を聞いたアキラが心底嫌そうな表情を浮かべる。


『本当なのか?

 本当にこのままだと勝てないのか?』


『このままならね。

 恐らく本来は初めの一斉攻撃をもう一度繰り返せば勝ちだったのよ。

 現在の状況はシカラベ達にとってもかなり予想外の状況のはずよ』


『じゃあ何ですぐに撤退しなかったんだ?

 勝ち目がないなら、戦っても弾薬費が無駄に掛かるだけだろう』


『勝ち目がなくなったわけではないからね。

 それに周辺の荒野から追加の増援さえ来なければ、増援が来てもその量が少数なら、とっくに勝っていたわ。

 もう少しで勝てるって状況が続いて、撤退の判断を先延ばしにしたのね。

 恐らくもう次の賞金首用の弾薬もぎ込んでいるはずよ。

 だからそう簡単には撤退できないわ。

 そしてこれは結果論であって、これから何とかして勝てば、戦闘を継続した判断は正しかったことになるわ』


『でもこのままだと勝てないんだろう?

 どうするんだ?』


『多分その辺の指示がそろそろシカラベから来ると思うわ』


 アルファの予想は正しく、通信機からシカラベの指示が出る。


「全員に通達!

 次の一斉攻撃で最後だ。

 それで倒せなければ撤退だ。

 ロケット弾の誘導設定を変更して、空中待機時間を限界まで上げて攻撃する。

 次の合図で配布したロケットランチャーを撃ち尽くすつもりで攻撃しろ。

 ロケットランチャーを撃ち尽くした後は、ロケット弾を迎撃しようとしている個体を優先的に撃破しろ。

 次で最後だ!

 死ぬ気でやれよ!

 賞金が手に入らなければ、お前らへの報酬も出ねえぞ!」


 アキラが軽く笑った後で大きく息を吐き、真剣な表情に変えて気を引き締める。


『よし。

 何があろうと次で最後だ。

 できれば勝って終わらせる。

 頑張ろう』


 アルファが微笑ほほえんで話す。


『大分余裕も出てきたようね。

 良いことだわ』


『まあな。

 大分慣れてきた。

 後はその慣れに、大金を手に入れる慣れを付け加えるだけだ。

 大赤字に慣れるのは御免だ』


『私もできる限り協力するわ。

 さあ、最後の一撃の準備をしましょう……と、言いたいところだけど、誰か来るわね』


 アキラが怪訝けげんな表情で周囲を確認すると、一台の車が周囲の敵を撃破しながら近付いてきていた。

 それはネルゴの車で、乗っているのも彼だけだ。


 ネルゴはそのままアキラのそばに車を着けるとアキラに話しかけてくる。


「やあ。

 私はネルゴという。

 そちらに御一緒しても良いかな?

 私に支給されたロケットランチャーはもうほとんど消費してしまっていてね」


 アキラの車にはアキラとトガミの分のロケットランチャーが積まれている。

 トガミは一斉攻撃にろくに参加できていなかったので、ロケットランチャーは十分余っている。


「まあ、それはこっちも助かるから構わないけど」


「感謝する」


 ネルゴはそう答えると、アキラの車に飛び乗ってきた。

 移動中の車両にもかかわらず普通に全く体勢を崩さずに、彼の分のロケットランチャーの残りを持って、着地音すらほとんどなしに飛び乗ってきた。


 アキラがネルゴの動きを見て少し驚く。

 ネルゴがそのアキラに話す。


「どうかしたかな?」


「あ、いや、すごい自然な動きだったから少し驚いたんだ」


「それなりに金をかけている機体なのでね。

 おっと、戦闘中だったな」


 ネルゴが周囲の敵を攻撃する。

 アキラも少し慌てて別の個体を銃撃する。


「ところで、君の名前はアキラ、だったかな?」


「そうだけど」


「先ほどの戦闘を見せてもらっていた。

 素晴らしい動きだ。

 私は見ての通りサイボーグだが、君も実は義体だったりするのかな?」


「いや、俺は生身だ。

 強化服は着ているけど」


「ふむ。

 君は強化服使いか」


 ネルゴは周囲の敵を問題なく対処しながらアキラをじっと見ている。

 アキラが何となく気圧けおされたような態度で話す。


「な、何だよ」


「いや、失礼。

 職業柄、君のような強者つわものに興味があってね。

 強化服を着ているとはいえ、生身でその動きとは大したものだ。

 何らかの身体拡張処理を受けているのかな?

 あるいは厳しい訓練のたまものかな?」


「ナノマシンとかでの身体強化はしていない。

 訓練は……、自己流だ。

 どちらかといえば訓練の成果だな」


「そうか。

 それは素晴らしい」


 アキラが調子を狂わされたように僅かに怪訝けげんそうな表情を浮かべる。


『な、何だこいつ。

 アルファ。

 何か分かるか?』


『見た目通りのサイボーグで、先ほどの動きを見る限り機体の性能を十全に発揮できる実力者。

 分かるのはそれぐらいね。

 アキラに興味があるのは、まあ、アキラが子供にしては大活躍しているから、それなりに興味が湧いたってだけだと思うけど』


『そ、そうか』


 アキラは妙な居心地の悪さを覚えながらも、それ以上は気にせずに敵の対応を続けていく。

 今は戦闘中だ。

 そして最後の攻撃の前段階なのだ。

 余計なことに意識を割く余裕はない。


 ネルゴもそれ以上は特に話さずに的確に敵を撃破していった。


 通信機からの機械音声のカウントと一緒にシカラベの声が聞こえる。


「そろそろだ!

 俺が撤退を指示するまで、ひたすら撃ち続けろ!

 この最後の攻撃に参加できなかったやつは、役立たずだと判断する!

 生き残っても真面まともに報酬を受け取れると思うなよ!」


「5、4、3……」


 アキラ達がロケットランチャーを構える。

 アキラは両手で構えているので1発分だ。

 そしてネルゴは4本の腕それぞれで構えているので4発分だった。

 アキラがそのネルゴを見て少し引いていた。


「2、1、0」


 機械音声のカウントに合わせて、アキラ達が一斉にロケット弾を放つ。

 同じ車両から計5発のロケット弾が飛んでいく。

 他のハンター達もシカラベの脅しで可能な限りロケット弾の発射を試みていた。

 無数のロケット弾が次々に空中に飛んでいく。


 次のロケット弾を発射しようとするアキラをネルゴが止める。


「ロケット弾の発射は私が請け負おう。

 腕は私の方が多いからな。

 君は敵の迎撃の阻止に回ってくれ」


「わ、分かった」


 アキラがロケット弾の迎撃を試みている子蜘蛛ぐもにCWH対物突撃銃を向けて銃撃する。

 アルファの的確なサポートの助力もあって、最大効率で敵の迎撃を阻止していた。


 そのアキラの背後で、ネルゴが次々にロケット弾を放ち続けながら、アキラの実力を注意深く観察していた。


 無数のロケット弾が滞空時間を調整しながら宙を舞う。

 そして着弾タイミングを各自で自動修正して一斉に敵に襲いかかる。

 子蜘蛛ぐもが迎撃を試みるが、シカラベ達やアキラの妨害に遭って失敗していた。

 そして無数のロケット弾が巨大なタンクランチュラにほぼ同時に着弾し、初回の攻撃よりも更に痛烈な爆発が発生した。


 アキラが顔をゆがめる。


『これで倒せなかったら、もう本当にどうしようもないぞ!』


 アルファが笑って答える。


『そうね。

 でも大丈夫だったみたいよ?

 あれを見て』


 巨大なタンクランチュラの各部位がばらばらになって飛び散っていた。

 そして周囲にいた子蜘蛛ぐもが機能を停止していた。

 その場で止まったり、勢いよく移動している途中で制御を失って他の個体とぶつかって転倒したりしていた。


『恐らく親機の制御下にあった状態で親機が破壊されたから、子機の方も同時に制御装置ごと停止したようね。

 もう大丈夫よ』


『勝ったんだな?』


勿論もちろんよ』


 アキラが大きく息を吐く。

 勝利の実感は歓喜よりも安堵あんどをもたらしていた。


 ネルゴがどことなく気安い態度でアキラに話す。


「無事に倒せたようだな。

 何よりだ。

 では、私はおいとましよう。

 縁があればまたお目にかかろう」


 ネルゴはそう言い残して自分の車に飛び乗ると、そのまま去っていった。


 アキラが少し気ががれたように話す。


『結局、あいつは何だったんだ?』


『さあね。

 まあ、私達が気にすることではないわ』


『それもそうだな。

 ……ああ、疲れた』


 アキラが心底疲れた表情で運転席に座る。

 アルファが笑ってアキラをねぎらう。


『お疲れ様。

 アキラ』


 8億オーラムの賞金首は、こうしてシカラベが率いるハンターチームに討伐された。




 シカラベ達は賞金首を討伐した後もしばらくその場にとどまっていた。

 通常のモンスターの討伐とは異なり、討伐後もいろいろやることがあるのだ。


 シカラベがすぐにハンターオフィスにタンクランチュラの討伐に成功したことを連絡する。

 装甲兵員輸送車に積んでいる高出力の通信機を使用し、荒野に配置しておいたドランカムの中継器を介して都市まで連絡できるように、事前に手筈てはずを整えておいたのだ。


 賞金首を討伐した連絡をハンターから受けたハンターオフィスは、討伐の確認と賞金首の死体や残骸の運搬のための人員を派遣する。

 そこで倒した賞金首を引き渡したり、倒したハンターを確認したり、いろいろな手続きを行うのだ。


 賞金首の死体や残骸はハンターオフィスに所有権があることになっている。

 賞金首に認定されるほどのモンスターは倒された後でも価値があるのだ。

 生物系モンスターならば特異な変異を起こしていることが多い。

 機械系モンスターならば希少な金属や部品、装置を保持していることがある。

 それらは企業の研究室に運ばれていろいろ調べられるのだ。


 賞金首の死体が残っていないと賞金が支払われない、などということはない。

 木っ端微塵みじんになった賞金首をき集めてこい、などとハンターに指示することが不要なめ事の元になることぐらいハンターオフィスも理解している。


 ただし賞金首の死体等が明確に残っていて、賞金首を倒したハンターがそれをハンターオフィスに引き渡すのを拒否する場合は、要交渉となる。

 場合によっては賞金が支払われないこともある。

 金に困っていないハンターが名誉を求めて賞金首を倒し、賞金を受け取らずに倒した賞金首を剥製はくせいにして自宅に飾るなどということもたまにあるのだ。


 それらの事情からシカラベ達はその場にとどまっていた。

 ただし全員が休んでいるわけではない。

 今回の戦闘での功績が微妙な者には作業が割り振られていた。

 主に借金返済のために参加した者達だ。


 作業内容はタンクランチュラの残骸と機能を停止した子個体などの収集だ。

 タンクランチュラの破壊された砲塔、千切れた足、飛び散った装甲などを集めていた。

 別に賞金首討伐に賞金首の残骸を集める義理も義務もない。

 放置してもハンターオフィスの作業員が後で勝手に集めるだろう。


 それでもシカラベが指示を出したのは、ハンターオフィス賞金首討伐後の手続きを速やかに終わらせるためだ。

 賞金首はタンクランチュラだけではない。

 後3体いるのだ。

 もう終わったような気分の者が多い中で、シカラベはまだまだこれからだと考えていた。




 アキラは待機場所で昼食を取っていた。

 朝食の時間を考えると少々遅めの昼食だ。

 自分の車に寄りかかって楽な姿勢を取り、持ち込んだ携帯食を並べてゆっくり食事を取っていた。


 アルファがアキラの前に座って微笑ほほえみながら食事を取っている。

 勿論もちろん、実際に食事を取っているわけではなく、ただの映像情報にすぎない。

 気分の問題だ。


 アキラが自前のサンドイッチを食べながら、アルファが口に運んでいるサンドイッチを見る。


『……何か、そっちのは随分美味うまそうだな』


『アキラも食べてみる?

 はい。

 あーん』


 アルファは笑ってそう話すと、自分が食べていたサンドイッチをアキラの口元近くに持ってくる。

 ふっくらとしたパン。

 新鮮な野菜。

 ソースの滴る肉。

 それらで構成された非常に美味おいしそうなサンドイッチには、アルファの歯形が付いていた。


 アキラが顔をしかめる。


『そういう嫌がらせは止めようじゃないか』


 視覚から味覚を刺激するそのサンドイッチは実在していないのだ。

 アキラが手を伸ばしても触れることはできないのだ。

 口に含もうとしても舌に触れ味わうことは不可能なのだ。


 笑いを堪えているアルファの前で、アキラは不服そうに表情をゆがめながら自前のサンドイッチを食べた。

 朝食で食べたものと同じものだが、心し物足りなさを感じた。


『良し。

 決めた。

 帰ったらもっと良いものを食べよう。

 値段を気にせずに美味うまそうなのを食べよう』


 アキラの決意の籠もった宣言を聞いて、アルファが笑いながら話す。


『それで良いのよ。

 アキラもそれぐらいの贅沢ぜいたくは覚えないとね。

 私もこんな真似まねをした甲斐かいがあったわ』


うそだ。

 絶対揶揄からかっただけだ』


『あら。

 アキラにうそなんか言わないわ。

 今までも、これからもね』


 アルファは楽しそうに笑ってそう答えた。

 アキラは黙って手元のサンドイッチを食べきった。




 シカラベ達は装甲兵員輸送車の近くで休憩を取っていた。

 トガミも同じ場所にいた。

 ハンターオフィスに報告する賞金首討伐チームの人員を集めているのだ。

 それはシカラベ、ヤマノベ、パルガ、トガミの4人だ。


 シカラベが僅かに苛立いらだちながらつぶやく。


「遅えな。

 ハンターオフィスの連中はまだ来ないのか?」


 シカラベはすぐにでも次の賞金首討伐に向かいたかった。

 しかしハンターオフィスの職員と賞金首討伐の後手続きを済ませるまではこの場で待機しなければならない。


 ヤマノベが上機嫌に笑いながらシカラベをなだめる。


「落ち着けよ。

 俺達の最低限の目標は達成したんだ。

 後はじっくりやっていこうぜ」


 パルガも機嫌良く話す。


「少なくとも賞金首討伐の一番乗りは俺達だ。

 他の賞金首が倒されたって連絡も来ていない。

 次の目標を万全の状態で倒すための休憩時間だと思っておけよ。

 今すぐに移動したって、俺達はも角、他の連中は疲労やら何やらで使い物になるかは微妙だぞ?」


 仲間達の話を聞いてシカラベも機嫌を戻した。


「……。

 そうだな。

 焦りすぎたか。

 俺らしくもねえ」


 賞金首を倒したことで気分が高揚しすぎているのかもしれない。

 シカラベはそう判断して落ち着こうと軽く息を吐いた。


 ヤマノベが笑って話す。


「しかしタンクランチュラは強かったな。

 あれで8億は軽い詐欺だ。

 12億は欲しいところだ」


 パルガも笑って話す。


「いや、14億は欲しい。

 久々に大変だった。

 それなりに死人も出てるんだ。

 何人死んだんだっけ?」


「5人だ。

 借金持ちの連中に死者が出た。

 内1名は逃げだそうとして監視役に撃たれたやつだけどな」


「実質4人か。

 まあ、賞金首戦の被害と考えれば上出来だろう」


 ヤマノベとパルガは上機嫌だ。

 だがシカラベは僅かに浮かない顔をしている。

 ヤマノベがそれに気付いて尋ねる。


「どうした?

 しけた顔して」


「賞金。

 8億なんだよな」


「そうだ。

 確かにあの強さで賞金が8億ってのは残念だが、別に赤字ってわけじゃねえだろう。

 俺達に怪我けが人も出なかったんだ。

 お前がしけた顔をするほど悪い結果か?」


 シカラベが少し面倒そうな懸念のある表情を浮かべる。


「弾薬費が予定をかなり超えてかさんだ。

 8億から経費を抜いて、頭数で割って、……アキラがその額で納得するか。

 それがちょっとな。

 結構微妙だ。

 アキラはネルゴのように俺達の口利き目的で参加したわけじゃねえ。

 純粋に金だ。

 ……幾らそういう契約だったからって、あの額で納得するかどうか。

 微妙なんだよなあ」


 かさんだ弾薬費は見積もりの甘さであり、激戦と苦戦の証拠だ。

 そして今後の交渉の難度を上げる要因でもある。

 かさんだ弾薬費は金があれば解決した様々な問題を面倒なものに変えてしまう。

 ハンター稼業には金が必要なのだ。


 ヤマノベとパルガが顔を見合わせて笑う。

 パルガが笑って話す。


「アキラとの交渉はシカラベの仕事だ。

 まあ頑張りな」


 賞金首を撃破したハンターチームのリーダーなのだというのに、シカラベは浮かない顔でめ息を吐いた。

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