第214話 交渉の前提条件
仮設基地の食堂で大勢のハンターが暇を潰している。不測の事態に備えた待機要員達で、大まかに2種類の者達に分かれている。大規模遺跡探索への参加を希望したが定員等の都合で許可が下りず、遺跡探索側で追加の人手が
その後者達の中に、エレナ達の姿があった。エレナ達もイナベの代理人から大規模遺跡探索の誘いを受けたのだが、交渉中にアキラも参加することを知って合流を希望すると、
アキラには多数の旧世界製情報端末が眠る場所での遺物収集を期待している。だがエレナ達と一緒に行動させると、それを控える可能性がある。それは
雑談の途中でサラが何となく尋ねる。
「ねえエレナ。本当に待機組で良かったの?」
エレナが少し不思議そうな顔をする。
「ん? サラは参加したかったの? どうしてもって言うのなら、今からでも掛け合ってみるけど」
「うーん。起こるかどうかも分からないことを、黙って待っているよりはね。でもどうしてもって程じゃないわ。ただ、座っているだけで収入になるとはいえ、特に何もせずに待機しているってのは、エレナはあんまり好きじゃなかったはず、と思っただけよ」
親友の疑問にエレナが少し複雑な笑顔を浮かべる。
「……ちょっと
サラも少し複雑な笑顔を浮かべる。
「確かに、ちょっと
エレナ達は今もアキラに好かれているとは思っている。だがアキラとの関係が一度絶縁手前にまで至ったのも事実だ。かつての好感を、危険なミハゾノ街遺跡に損得度外視で来てくれたほどの好印象を取り戻せているかと問われれば、余り自信がなかった。
それでも一緒に食事に行った時の様子なら、関係を十分に改善できたと思いたかった。そう期待するように、その慢心を
その時、エレナ達の貸出端末に通知が届いた。エレナが通知内容を確認して表情を少し険しくする。
「……その何かが起きた訳ね」
「アキラはその手の何かに巻き込まれる変な運でも持っているのかしら。こんなことを言うのも悪いけど、あんまり意外じゃなかったわ」
「アキラはそれでも生き残ってきた。強くなる訳だわ」
エレナ達はそう言って苦笑を浮かべた後、すぐに気を切り替えて真面目な顔で動き始めた。通知内容は遺跡奥部の部隊からの通信が途絶したことと、その状況確認用の新たな部隊の派遣指示だった。
クズスハラ街遺跡の外周部と奥部の境目辺りでは、警備のハンター達がイナベの担当区画に勝手に入ろうとする者を食い止める任に就いていた。
警備といっても侵入者を武力で食い止めるのではなく、高性能な広域索敵機器で警備区域を監視するのが主な仕事だ。不審者と思われる者を見付けた場合は、汎用通信で注意し、警告し、仮設基地に連絡する。可能なら追い払う。その程度の仕事だった。遺跡奥部の未到達地域への侵入を試みる者は当然相応に武装している。依頼元もそのような者達と戦えるような実力者を警備に配置できるほど金も人も余ってはいないのだ。
トガミとレイナもその警備の仕事を受けていた。それぞれの警備区域はかなり広く設定されているので、周辺にいるのはレイナ達だけだ。
警備とはいえ久々のハンター稼業。レイナはそう思って意気込んでいたのだが、何も起こらないので暇を持て余し始めていた。
「
「警備なんだ。暇なのは良いことだ」
「そうだけど……。ねえ、ちょっとその辺で遺物収集でもしない? ちょっとぐらい離れても索敵機器との通信範囲だから、離れていても監視は出来るでしょう?」
「程々にしておけよ」
レイナが行くのは構わないが自分は行かない。暗にそう答えたトガミの返事を聞いて、レイナは少し不服そうな表情を浮かべた。だが文句は言わず、遺物収集にも行かなかった。
トガミはそのレイナの様子に少し不思議そうにしていた。だがそれだけで、それ以上の反応もなかった。しかしカナエは笑いを堪えるように口に手を当てると、表情を
「何よ」
「いや、何でもないっすよ? 自分から言い出してトガミ少年の許可も下りたのに、何で行かないのかなって、ちょっと疑問に思っただけっす。他意はないっすよ」
「そう」
レイナは笑顔を少し
トガミはそのレイナの様子にいろいろ思いはしたものの、
シオリがレイナ達の思考を推察して口を挟む。
「お嬢様。トガミ様が許可を出したとはいえ、私達はトガミ様の依頼に割り込んでいる立場で御座います。本来の仕事を
「わ、分かってるわ。だから止めたでしょう?」
「思い付きを口に出す前に、少し考えることをお勧めいたします」
「分かったって。気を付けるわ」
トガミはやはりそうかと思い、レイナは少し焦ってごまかし、カナエはいろいろ気付いて苦笑し、シオリはそ知らぬ顔を通した。
レイナが場の空気を押し流して
「そういえばクズスハラ街遺跡にも怪談ってあるわよね。ほら、誘う亡霊ってやつ。あれっていろいろ
「まあ、そんなところだろうな。
「大丈夫よ。その辺の危険性はよく分かってるわ。でもその手の旧世界の幽霊って言われている存在と会えたら、遺物収集抜きにいろいろ聞いてみたいとは思うけどね」
「まあ、それは分かる。旧世界時代の話とか聞けたら面白そうだしな」
「でしょう? そういうのもハンターの
機嫌良く談笑しているレイナに、シオリが少し真面目な表情で口を挟む。
「お嬢様」
「分かってるって。探しに行ったりしないわ」
「そうではなく……」
シオリはそこで表情に迷いを見せて口を
「カナエ。今度は何?」
「何でもないっす、……と答えても良いっすけど、そうっすね、最近はお嬢も頑張っているし、ハンターとして独り立ちする可能性に期待を込めて、
「どういう意味?」
「お嬢。
レイナが戸惑いながらシオリに視線を向ける。
「……シオリ。何か隠してるの?」
「お嬢。世の中には取り扱いの難しい情報なんて山ほどあるっす。問題は、お嬢にその情報を取り扱える能力があるかどうか、それだけっすよ。情報管理もハンターの資質っす。下手に知ると命に
カナエは楽しげに笑いながら、警告を兼ねた脅しを混ぜていた。レイナがたじろいで困惑を強める。
「さあ、お嬢! その情報を聞くのが正解か、聞かないのが正解か、お嬢のハンターとしての才覚が問われているっすよ! ……たっぷり悩んで暇を潰して下さいっす」
レイナはシオリとカナエに視線を
「カナエ。何の
「過保護な
「それは私の仕事よ」
「お嬢に情報の取り扱い方を教える。若しくはお嬢に代わって管理する。どっちのことを言っているのかは知らないっすけど、どっちにしても
「勝手に人を殺さないでちょうだい」
「じゃあ、
少し真面目な表情で聞き返すカナエの態度に、シオリが軽い驚きを見せる。だがレイナは軽く驚いた程度では済まなかった。
「シ、シオリ、死亡時の指示書って……」
「あ、いえ、お嬢様、それはですね?」
少し慌ててごまかそうとするシオリに割り込むように、カナエが真面目な声で
「お嬢。私も
レイナはかなりたじろいでいた。カナエの態度からいつものような
「お嬢もまだまだ半人前っすね。
レイナよりも先にトガミが吹き出した。それでレイナが更に慌て出す。
「な、何を言い出すのよ!?」
「自覚無しっすか。下手に勘違いさせるのも残酷だと思うっすけどねー」
カナエがいつものようにレイナ達を
カナエは珍しくレイナを気遣っている。盲信の従者を連れた無能なお嬢様という当初の印象は、レイナの頑張りを見て既に大分薄れていた。口を出しているのは少々情も湧いたからだ。どうでもいいと思っているのなら、破滅しようが知ったことではないと思い、最低限の仕事だけして余計な口出しはしない。ただ気遣いの方向性がシオリとは異なっているだけだ。
自分達も死ぬ時は死ぬ。その後の状況に自力で対処できる能力を身に付けなければ、レイナの将来は暗いものになる。シオリの忠誠を否定する気はないが、その忠義が自身の死を許容させているのならば、レイナにシオリの死後の状況への対応能力を身に付けさせるのもその忠義の内だ。カナエはそう考えていた。
シオリもそれは分かっている。だが今は自分が対処すれば済む話であり、その
カナエの冷やかしが終わった後、レイナは指摘された情報の取り扱いについて
「シオリ。さっき言い掛けたこと、出来れば教えて。でも無理にとは言わないわ。私にそれを知る実力がないと思って話すのを止めたのなら、我が
シオリは少し驚いた様子を見せた後、優しく
「……分かりました。覚悟は
「うん」
レイナ達の主従の
「何を話すつもりなのかは知らないけど、部外者がここに1人いることを忘れないでくれよ? 俺が聞いちゃ
「一緒に聞く分には構いませんが、私がお嬢様に教えるのを
「そうか。じゃあ、知って損は無さそうだし、聞かせてもらう」
シオリが軽く
「では、お話しします。先ほどお嬢様方が話題にしていたクズスハラ街遺跡の怪談、誘う亡霊ですが、恐らくクガマヤマ都市によって意図的に書き換えられています」
レイナが少々拍子抜けに思いながら
「シオリ。ごめん。その程度の話を
「書き換え前の内容に問題があります。そもそも誘う亡霊とは、元々は誘う亡霊シリーズと呼ばれた複数の
元々クガマヤマ都市は坂下重工が主導したクズスハラ街遺跡攻略の
そしてある日、坂下重工はクズスハラ街遺跡の攻略から
坂下重工が手を引いた理由は不明で、様々な推察や関連する
坂下重工が遺跡の管理人格と取引して撤退と引き換えに旧世界の技術を取得した。管理人格に脅されて渋々撤退した。密約を結んで遺跡外周部の低規模な遺跡探索に抑えている。それらの
レイナはそれらの話を興味深いとは思ったが、
「何となくだけど、所詮は
「お嬢様。重要な部分は都市がその元々の
レイナが思わず顔を
「そこまでするほどに知られたくないことって、例えば何?」
「そうですね。誘う亡霊シリーズの中に、裏切りを誘う亡霊というものがあります。ハンター達に取引を持ち掛けて、自分の
「ああ、それで、その誘いに乗ったら結局は死んでしまうって怪談に話を
「遺跡の管理人格と密約を結んだ坂下重工が、表向きの撤退理由を作成する
「そ、そこまでする?」
「大規模な投資を済ませた事業を中止するには相応の理由が必要です。まあ、これは私の推察ですので、
レイナは少し焦りながら真面目な顔で何度も
トガミが少し迷ってから興味に負けてシオリに尋ねる。
「シオリさんが何で元の
「私達には独自の情報網が存在しており、お嬢様がハンター稼業でクズスハラ街遺跡に立ち寄ることを考慮して、念の
察したトガミが真面目な態度で答える。
「分かった。もう聞かない」
「ありがとう御座います」
情報の取り扱いを少し間違えたが、口封じの実例になるのは避けられた。トガミはそう判断して
そこで仮設基地から連絡が入る。トガミが少し不思議に思いながら応答する。
「こちら65番。異常なし。定時連絡にしては早くないか?」
本部からの話を聞いたトガミが表情を少し険しくする。
「了解。何かあれば連絡する」
「トガミ。何かあったの?」
「俺達に通信が
トガミは軽い冗談のつもりで最後にそう付け加えた。だがレイナは全く笑えなかった。
ヤナギサワの部隊が遺跡の廃ビルとなった高層ビルの屋上から地上の様子を眺めている。
「
多数のハンター達。更に奥部側から出現したモンスターの群れ。人型兵器の部隊。無数の機械系モンスター。地上ではそれらが入り交じって激戦を繰り広げている。空中戦が可能な人型兵器や機械系モンスター達が空中で大量の弾丸を
「俺や本部から何らかの指示が出るまで状況に手を出すな。それが主任の指示だ。今は高みの見物を続けるのが俺達の仕事だよ」
各自の統率も
「それで、主任は?」
ヤナギサワの部隊が一斉に空中に銃を向けて乱射する。空中で着弾音が響き、まるで空間に穴を開けたように被弾の穴だけが空中に現れる。少し遅れて着弾の衝撃で迷彩を剥がされた機械系モンスターが姿を現し、飛行機能の損傷で落下していく。
「音信不通のままだ。12時間以上連絡がない場合、俺は死んだと
巨大な流れ弾が部隊の周囲に連続して着弾していく。屋上の床が吹き飛ばされていく。
「また何か
部隊は再び一斉に銃を構えると、遠距離にいた流れ弾の発生元を軽々と粉砕した。
「さあな。主任の仕業なら
ヤナギサワの部隊と地上のハンター達の戦力差は歴然だ。だが事態を把握できていないという点において、彼らもこの混戦の構成要素にすぎなかった。
ツバキと人型兵器部隊の戦闘が続いている。戦況は一方的だ。数十体の機体でたった1体の自動人形を取り囲んでいるのにも
自身の管理区域に
黒い機体達が巨大な銃を構えて銃撃する。人の腕よりも太い大型の弾丸がツバキに殺到する。だがその無数の弾丸はツバキの手前で透明な分厚い壁に
銃撃が
機体の中でその光景を見た部隊員達が険しい表情を浮かべる。焦りの混ざった通信が飛び交う。
「またか! 畜生! どういう防御手段だ!?
「知るか! 何らかのバリア系ならその維持にエネルギーを消費しているはずだ! 今は無駄じゃねえと信じて撃つしかねえぞ! 増援はどうなってるんだ!」
「長距離通信が死んでる! 短距離通信が
「仮設基地まで戻った機体が都市の防衛隊に連絡を入れる! 都市防衛の本隊が来るはずだ! それまで持ち
巨大な砲を装備した機体がツバキを狙う。直径がツバキの身長よりも長い巨大な砲弾が撃ち出され、空気を押し
ツバキは
次の瞬間、別方向から巨大なチェーンソー型の近接装備を大きく振りかぶりながら距離を詰めていた機体が、発光しながら高速で動く刃をツバキに勢い良く高速で振り下ろす。銃という遠距離攻撃の利点を捨ててまで近接戦闘での威力を向上させた装備の一撃が、機体の出力を限界まで振り絞って繰り出される。
ツバキはその一撃を平然と片手で受け止めた。その衝撃はツバキの足下を
ツバキがそのまま腕を振るうと、近接装備を握っていた機体はその勢いで腕を千切られ、放り投げられた人形のように大きく吹き飛ばされた。更にツバキに投げ付けられた近接装備を空中で食らい、機体を乗員ごと上下に両断されながら遠くまで飛ばされて消えていった。
突っ立っていただけのツバキに行動を促した一撃は、人型兵器部隊の者達に更なる衝撃を与えた。
「何なんだあれは!? 旧世界製自動人形とはいえ限度があるだろう!? いや、あれこそが本来の旧世界製なのか!?」
「……軍事用、なのだろうな。あんな外見だが、そこらの遺跡で見付かる警備用や愛玩用とは基本性能が根本的に違うのだろう。……離脱する! 散開し、十分な距離を取れ!」
現場の戦力では勝ち目はない。隊長機のその判断で部隊が下がっていく。ツバキの足止めを兼ねて周辺のビル群を銃撃して倒壊させながら離れていった。
倒壊するビルの一棟がツバキの方向へ倒れていく。ツバキはそちらに視線を向けると、回し蹴りを放った。当然だが脚そのものは宙を
ツバキが
「取りあえず、ここに群がる雑兵は追い返した。後は行動可能範囲のゴミを潰していくか」
可能であればクガマヤマ都市まで歩いて行きたいのだが、ツバキにそこまでの権限はない。今ここにいることでさえ、通常の権限からかなり逸脱している。非常時を根拠とした規約の拡大解釈を駆使して
歩き出そうとしたツバキが足を止める。そしてビルの倒壊で出来た
男が引き金を引く。発射された弾丸は弾道上の物体を消滅させるように貫通し、その質量を弾頭に吸収しながらツバキへ直進する。そして
次の瞬間、弾丸は弾道上の物体を削り取った分も含めてその質量を非常に効率良くエネルギーに変化させ、大爆発した。
一帯の全てを消滅させるかのような大爆発の衝撃波が周囲の大気を極限まで圧縮する。一時的に超高密度の色無しの霧が生成される。すると超高密度の色無しの霧に特有の事象が発生し、本来なら周囲に広範囲に四散する衝撃波をエネルギーとして吸収し、距離による威力の減衰を指数関数的に増加させた。
その結果、爆発地点から一定距離の空間を球形に
ツバキは体の7割程を失った状態でその場の近くに立っていた。そして残りの3割も糸が切れたように崩れ落ちた。
ツバキを攻撃した男はヤナギサワだった。ヤナギサワは旧世界製の特殊強化服を着用し、対滅弾頭対応の特殊銃を構え、高度な迷彩機能で身を隠して、ずっと機会を
爆心地に来たヤナギサワが自動人形の残骸を見て顔を険しくする。
「
ヤナギサワが反射的に身を
更にツバキが
ヤナギサワが相手の腕を
「初めまして。私はヤナギサワという者だ。この区域の管理人格だな? そちらと交渉したい」
ツバキは冷たい表情をヤナギサワに向けている。
「交渉相手をまずは銃撃するのがそちらの文化か? 交渉が成立するとはとても思えないな」
「まずはこちらの力を示した。それだけだ。そちらも踏み潰せる
ヤナギサワが軽く飛び
「加えて、これだ。どうかな?」
ツバキが表情を不機嫌なものに変える。
「それを見せればこちらが大人しく言うことを聞くと
ヤナギサワが浮かべる笑顔に若干虚勢が混ざる。だがまだ余裕を保っている。
「思っていない。だが、礼儀に欠ける者を交渉のテーブルに着かせる程度の効力はある。そうだろう?」
ツバキの顔から不機嫌さが消える。だがその表情は冷たいままだ。
「では、武器を捨ててもらおう。
ヤナギサワの笑顔が
ヤナギサワとツバキの間に数秒の沈黙が流れる。同じ時間だが、両者の体感時間には著しい隔たりが存在していた。そしてヤナギサワの顔に流れる汗が少し増した頃、ツバキが愛想良く
「良いでしょう。では、こちらへ。交渉の場まで御案内します」
「ここじゃ駄目なのか?」
「交渉に適した場所とはとても思えませんので」
「確かに」
ツバキは
更に2体、全く同じ自動人形が迷彩を解いて姿を現す。計3体となったツバキの内、1体はヤナギサワを自身の管理区域内に案内する
ヤナギサワがツバキの後に続いて歩きながら思う。
(これで同程度の性能の機体が4機か。予備機はあと何体残っている? 10か? 100か? 1000か? 坂下重工が割に合わないとクズスハラ街遺跡から手を引く訳だ)
そして笑みを不敵なものに変える。
(だがそれもあれを知らないからだ。知っていれば探索を強行していただろう。俺は知っている。手に入れるのは、俺だ。この交渉が成功すれば後方連絡線の延長に問題はほぼ無くなる。危険な
ヤナギサワが表情から笑みを消す。
(あと少しだ)
その表情には、途方もない覚悟と決意が込められていた。
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