現代魔じゅちゅ師は異世界に憧れる
ホタル。
第0話 音のない世界
クラシック、と呼ばれる音楽が流れている。
「ここに隠れてなさい」
「いい、絶対にバレないように息を殺してね」
お父さんとお母さんは俺をリビングの下の小さな空間に閉じ込めた。
いや、守る為に隠したというのをこの時の俺は知らなかったんだ。
真っ暗で何も見えない。
暗くてクラクテくらくて。
音は聞こえる。
お母さんとお父さんはよくわからない言葉を発しているのが聞こえる。
それと、知らない声と知りもしない言葉がいくつも聞こえる。
バチッ、バチッと何かがぶつかり合う音が聞こえてくる。
ぐじゃぐじゃと何かが踏みにじられる音が聞こえてくる。
「――――ッ」
ポツンッ、ポツンッと俺のいるところに生暖かい物が流れ込んでくる。
今ならわかる。
それはお母さんとお父さんが俺を守る為に流した血……だという事を。
そして、血は溜まって溜まって血だまりを作っていく。
俺は意識を手放した。
※
俺は知らない場所、知らないベッドで目が覚めた。
「おはよう」
「おはよ……」
反射的に答えてしまったが、その先か続かなかった。
そこにいるのは、
「おじいちゃん? あれ、でも死んじゃったって? えっ、でも目の前にいるのはおじいちゃんで――――」
「――――混乱に混乱を重ねるかもしれないが先に言っておこう」
その内容は、当時5歳の俺には酷な物だった。
混乱なんて物では済まされない。
意味が全く理解出来なかった。
「お母さんとお父さんは亡くなったよ」
「……えっ? それって? でもおじいちゃんも亡くなった、死んじゃったんだよね?」
「ワシはこの通りまだピンピンしておる」
「……」
俺は言葉が出なかった。
それほどまでに理解したくないと思いながら、嫌でも意識して、状況を理解し始める。
体の力は入らないし、生きる気力すらも消え……否、その時思い出したんだ。
あの場には俺とお母さんとお父さん以外の存在がいた事に。
「誰が?」
それだけで、おじいちゃんは言葉の意味を理解してくれて教えてくれた。
いや、見せてくれた。
俺の両親を殺したヤツらの名前が書かれている紙を。
たが、1つだけ変だ。
その紙に書かれた名前の約半分は赤く塗り潰されている。
「おじいちゃん、これは?」
「それは……それはワシが討った数だよ」
「おじいちゃんが?」
その時の俺には、おじいちゃんが凄い人には見えなかった。
今思えば、この人に魔術を教えてもらえてよかった。
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