Metallica

それでも、この世界に神様はきっといるのだ。


ギゥーーーー!!!!!!!


耳をつんざくような音がして、それから弾かれた足根が木々をへし折り、辺りに光の柱が2本出来上がる。


逃げ出すものは、誰もいない。


やはり、この森からは、命の気配が失せている。


「セイム君?大丈夫?」


突如、現れたそれは、大きな白いねこだった。


それから、2回またあの音がして光の柱が加えて4本出来上がりそれらは、繋がり大きな陽だまりに変わる。


「ミズキさん!ジゼルさんが!」


「えっ?」


セイムは、ロォズガンナーと死闘を繰り広げる双子をすっかり無視しジゼルの様子を確かめた。

顔からは、血の気が引き。呼吸すらしていないない。

ぐったりと力の抜けた肩を、何度もゆすり名前を呼ぶが反応は無い。

ジゼルの心臓は、その時殆どとまっていた。


彼は、2回浅く呼吸し何とかして彼女を助ける方法を考えた。



「・・・考えろ・・・!考えろ!!」


「セイム君。人工呼吸しなきゃ」


「人工呼吸・・・?」



セイムは、流れ落ちる冷や汗を砂まみれの袖で乱暴に何度もぬぐって必死の思いで思考を巡らせた。


人工呼吸ではだめだ。


心臓が止まっているのだ!


そして、思いつく。


「もし、僕に、与えられた能力なら・・・!」


「髭が・・?・・・・セイム君!?」




・・・・・・・!!!!




「・・・お願いします」


ジゼルの右胸部と左わき腹上部に当てた手から幾つかの稲妻がほとばしる。


「神様っ!!」


『ライドザライトニング!!!』


昼間の森が下から照らされて、二人を中心に一瞬影が伸び。

ジゼルは、一度大きく息を吸い込んで白い肌には段々と血の気が戻り始めた。


「ジゼルさん!ジゼルさん・・・!よかった・・・」


「セイム?それに、ねこさん?どうしてまた?」


「ミズキだよ」


「助けに来て下さったのですね?どうもありがとう」


「ジゼルさん!ずっとずっとここで暮らしましょう!もう2度と、どこかに行きたいなんて僕言いませんから・・・!」


セイムは、情けなくすすり泣いてその涙を出来るだけ誰にも見せないように、ジゼルの手を握った両手で隠した。


「セイムー!ジゼルー!平気だった?!」「私の『ウッドペッカー』に貫け

無い物なんて、存在しちゃいけないの・・・」


辺りは、めちゃくちゃに荒れて、セイムたちの所にも眩いほどの日差しが斜めに射していた。


「セイムさん。行きましょう。わたくし達も・・・」


ジゼルは人々をゆっくりと見まわして優しく握られた手を握り返しながら言った。

唐突な発言の意味を、セイムは理解していた。


「でも・・。もし何かあったら僕は」


「私は、まだたくさんあなたと空を飛んで、一緒に笑って、悲しみたいのです。この世界の誰よりも!」


「この世界の、誰よりも・・・・?」


「この世界の誰よりもです!」


「僕も。僕は・・・。・・・よろしくお願いします」


切り裂かれた森から覗く大空から一羽の鳥が舞い降りて、湖の魚を一匹攫っていった。


緑がかった構造色の首回り、力強い大きな翼と紺色と白の風切り羽。


それは、いつか見た。あのオオダルマバトだった。

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