生徒会談話

 ステラ達を迎えに来てくれたのは、国立魔法女学院の生徒会長サンドリー・マルコラスと、生徒会役員から他二名。そして、交換留学を担当する教師1名。合計で4名だった。

 崩れた見た目の者など一人もおらず、立ち居振る舞いに品がある。

 ガーラヘル王立魔法学校は粗野で乱暴者が多かっただけに、なんだか圧倒されてしまう……。これが、共学と女子校の差なのか、両国の国民性の差なのか、少し気になるところではある。


 彼女たちが名乗り終わった後に、ステラ達も自己紹介し、馬車型魔導車に乗る運びとなった。

 サンドリーによると、この魔導車が馬車型なのは古き良き街の景観を損なわぬように……とのことだったが、我が校の生徒会長グウェルがステラを勝手に次期生徒会長と言い始め、さらには両生徒会長と同じ魔導車に連行したため、サンドリーの説明はあまり頭に入らなかった。

 しかし、あまりに早い蛮行は、ステラの友人達の目にも止まった。


「あ……。ステラ様が……」

「あたしも、そっち乗っちゃお~~!」


 レイチェルとエマが、すかさず同じ魔導車に乗ってくれたので、ひとまずは気まずい雰囲気から回避されたと考えてよさそうだ。


「ふぃ~。二人とも、助かったです」

「ステラは持ち運びしやすいから、ウッカリできないよ~~」

「むぅ……。レイチェルさんめ」

「あはは!」


「お主がチビなのは事実だろう!」

「好きでチビなわけではないんですけど!!」


 まぁ、これから成長出来そうもないので、あまり身長を気にしても仕方が無くはある……。

 ステラはガックリと肩を落とした。


 レイチェルやエマ、そしてアジ・ダハーカと談笑しているうちに、魔導車は走り出す。霧の中をそこそこのスピードで走るため、窓ガラスについた水滴が、横線を描く。

 それを指で辿ってみていると、斜め前から軽い笑い声が上がった。


「?」

「無邪気だな、と思った。ステラちゃんは可愛いね」

「え! ど、どーもです。ありがたき幸せです~」


 サンドリーによく分からない褒め方をされ、動揺する。相棒の軽口にも一瞬気がつかなかったくらいだ。


「ふむ。無邪気とな? 邪悪な存在だとも言われておるがな」

「……アジさん。余計な事言うなです!」


 相棒のビールっ腹をポイン、ポインと突き、黙らせる。

 列車の中で、エールをたしなんだからなのか、言動が若干危ういかんじだ。

 その間に、サンドリーはレイチェルやエマも、『話していると元気になる』だとか、『ミステリアスな美少女』だとかと褒めまくり、グウェルの事は完全にスルーしている。


 それが気に障ったのか、グウェルは厚かましいことを言いだした。


「俺様への賛辞が足りぬようだが? サンドリー・マルコラス」

「賛辞か……。あ~、……昨年、そう昨年! ウチの学院の生徒達からあれだけの目に遭わされても、今年また来てくれたんだ。その勇気には敬意を払わないわけにはいかない」

「フンッ。まぁな」


 彼等のやり取りに少しだけ興味をそそられる。


(この二人は顔見知りかぁ)


 そういえば、生徒会長は昨年も、一昨年も、この国へ来ていたそうだ。

 知り合いだとしても、何の不思議もない。


(女子校に少数の男子生徒が紛れ込んだら、モテモテなんだろうなぁ。でも、生徒会長のパワハラくさいノリは、うっとおしがられそうな気もする)


 ステラは勝手な評価を楽しみながら、生徒会長をジロジロと眺める。

 すると、その視線を勘違いしたのか、グウェルはステラについて語り出した。


「次期生徒会長のコイツはおかしな奴なんだ。自作のアイテムを日常的に、学校の売店で売り捌いている」

「えぇと。売店係なので、ちゃっかりとやってしまってるです……」

「自分の得意な事を、そんな感じでアピールしてるのかな? うまい方法だ」


 サンドリーの全肯定っぷりに後を押され、ステラはダメ元で”とある事”を提案してみた。


「そちらの学院で留学生をやっている間、学院内の売店に立たせてもらえたり出来ないでしょうか……? だ、駄目なら、全然諦められますが!!」


 彼女は不思議そうな表情で、二、三度目を瞬かせてから笑い出す。


「異国の地に渡っても、働かずにはいられないって事? 面白い子。そのくらいOK。あたしが許可を出そう」

「うわ~い!!」


 快諾してもらえて、テンションが上がる。

 この国において、ステラのアイテムはどんな評価を得るだろうか?

 歳が近かったら、遠慮のない意見をくれるだろうし、今から楽しみだ。


「絶対いろんな生徒達がステラのアイテム目的で並ぶよ!」

「出来る事があれば、何でも手伝う」


「レイチェルさんも、エマさんも、有り難うなんです! この国に来てみてよかったです!!」


「マイペースなものだな。せいぜいウチの国の評判を落とすようなモノは売るなよ」


 グウェルの軽口にムッとする。

 渡航日まで結構な時間があったため、ステラは多くのアイテムを作りだめ出来た。ステラが居ない間にガーラヘル国内で販売する分。そして帝国の冒険者ギルドに回す分。そして、国立魔法女学院で売ってみる分もアジ・ダハーカの収納にそこそこ保持しているのだ。

 


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