第223話 大内義隆くんが大きな船に乗ってやってきた
朝倉景紀さんと尼子詮久くんと合流した翌日、敦賀湊に弁財天級貨物艦と呼ばれる船が着岸した。元となったのは元就さまの御座艦である改
改
なおこの鉄のマストは、港に着いたとき45度の角度で船倉方向に傾斜し、鉤には定滑車と動滑車を組み合わせたカバーに覆われた複合滑車の装置が取り付けられる。そうクレーンだ。ちなみにこのクレーン。西暦を2000年超えても現役の技術だが、クレーンの原理そのものは紀元前3000年頃のメソポタミアに見ることが出来る。
そう。オカルト雑誌が定期的に読者の興味を煽る、巨大な石を積み上げた建造物の謎をなんとなく説明出来てしまう技術だ。ちなみに古代ギリシアの天才アルキメデスが、シラクサ防衛戦でクレーンを使って敵の軍船を一徹返しを行い見事転覆させ「シップ・シェイカー」とか「アルキメデスの鉤爪」とか無茶苦茶カッコイイ名前がついていたりする。
「大陸帰りか・・・」
船腹に「寧波→博多→温泉津→小浜→敦賀」と書かれた看板が掛かっているのを見て呟く。
「先生ご無沙汰しております」
真っ黒に日に焼けた筋肉逞しい青年、大内義隆くんが物凄い笑顔でこちらにやってくる。
「で、なにを持ってきたの?」
「こちらをどうぞ」
そういって大内義隆くんは手に持っていた取っ手のついた箱から一冊の冊子を取り出す。取っ手のついた箱は海に落ちた時のことを想定し、防水性が高くてかならず水に浮くように軽くしたもの。「鞄」と命名している。
「ふむ」
冊子に目を通すと、穀物として米が600石。小麦が200石。蕎麦が200石。
酒は米酒が4斗樽(一合升で400杯。約72リットル)で10樽。
食料以外の荷物だと、建築用に製材された木材とセメント。あと道に敷き詰める用のコンクリートブロックに古着などの生活用品。
今回の北陸街道の改修に従事する予定の労働従事者は後日別の船で2,000人ほどが到着するという。
「ところで、明の後継者問題は?うちの工作活動の結果はどうなりました?」
俺は大内義隆くんにお願いしていたことを尋ねる。ちなみに明の後継者問題というのは、明の現皇帝である嘉靖帝の血統の正当性を巡る大礼の議という明の廷臣200人ほどが殺されたり追放された事件のこと。200人近い官吏が抜けたということは、こちらに付け込む隙があるということだ。
「うちの先代の頃から付き合いがあった官吏を二人、金銭的な支援をして中央へと送り出しました。代わりに寧波の中堅と新人官吏を三人こちらに抱き込みました」
「良くやりました。これからあの国は、産出する銀が不足して経済が混乱しますから、監視を厳にしてください」
そういうと、大内義隆くんは小さく頭を下げる。
「そういえば、寧波沖に半年から一年間隔で毛利ではない帆船が来て、明の商人を相手に密貿易をしているようです」
「ああ、おそらく
「
俺の思い付きに、大内義隆くんが苦笑いを返す。ちなみに
「勘弁してください。『雪に紅椿』の赤は未だ先生以外に再現されていなくて、珍品として領内でも高値で取引されてるんですよ?他所に売ったことがバレたら吊るされてしまいます」
大内義隆くん。もうすっかり商人の顔である。まあ、頭に「私掠船免状を持った」がつくんだけどね・・・
「欧州の生きた情報が欲しいから、秋か冬に単独で彼らが近海に来たらお誘いしてください。
「御意」
大内義隆くんが悪い顔をした。
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