元就の野望~全国版~。わたしはガチャを駆使して補佐します
那田野狐
第0章 お約束
第1話 すべての始まり
その日俺は、大学時代の友人である小田信英が出張でこちらに来るというので一杯飲みながら晩飯を食うことになった。そして偶然、俺はゲームセンターで遊んでいる大学生らしい人たちの驚くべき声を聞いた・・・
「毛利の武将なんで全員眼鏡かけてんの?ありえん。端的に言ってダサいよな」
背の高いドワーフっぽい(簡単に言えば大変に恰幅の良い)男がカードを眺めながら笑う。
「それに比べて越後(新潟本州部)の龍たん最高」
ポスターがビームサーベルのように刺さったリュックを背負った背の高いエラの張った糸目の男が笑う。ええっと越後の龍たんってあれか?上杉謙信のことか?いや、謙信女性説は前からあるのは知ってるけど、たん?
「やっぱ織田ですよ。ノブちゃん×犬千代最強」
胸部装甲の厚いロリ体型の女が腐った・・・いや、まあ信長と利家は実際腐った関係だったらしいけど・・・発言をする。
「いーや、甲斐(山梨)の虎、武田信玄と高坂昌信だよ」
芸能人ですか?みたいな整った顔の女性がきゃーっと叫ぶ。なんというか発言にしか共通点がみられない集団である。あれかな、大学の漫研とかのサークル仲間なのだろうか?
そして彼らは、どうやら日本の戦国時代を舞台にしたゲームを遊んでいるらしい。
「そうなの?」
思わず隣りにいた信英に聞くが、目を大きく逸らされた。
信英は俺が広島出身で、野球はカープ。お好み焼きは広島(風とか焼きとは絶対言わない)。
戦国時代のシミュレーションゲームならまずは毛利を選択。非常に郷土愛に溢れている事を知っている。
「なんてこった・・・」
「あ、いや、眼鏡をかけているのがダサいんじゃ」
「きさーん眼鏡っ子否定すっとぉ」
「なんじゃワレ!エセ博多弁使うの辞めろというとるじゃろうが?」
非常にくだらない口げんかが勃発・・・とはならない。怪しい方言は話題を打ち切るための合図だ。ふたりして居酒屋でそこそこ飲んで〆のラーメンを食って・・・
『毛利武将なんで眼鏡かけてんの?ダサいよな』
不意に学生たちの声が蘇る。
「くそ」
思わず舌打ちするが、その時偶然、前から歩いてきた人間と肩がぶつかる。
「ああん?」
舌打ちを聞かれたのか、今時こんな奴いないだろうという白い上下のスーツに赤いネクタイというチンピラ兄ちゃんに襟首をつかまれる。
「ごめんなさい。やろ?」
ああ、舌打ち、ぶつかるじゃなくぶつかる、舌打ちと取られたらしい。
「あ、ごめ・・・」
隣りにいた信英が謝ろうとした瞬間、チンピラ兄ちゃんの拳が俺の顔面にヒットする。
「な、てめぇ!」
反射的に俺はチンピラ兄ちゃんの脛に蹴りを放つ。と、タイミングを合わせたかのように信英もチンピラ兄ちゃんの股間も蹴る。じつに過剰防衛!
そして同時にふたりして逃げる。兎に角逃げる。この辺はむしりとった衣笠ってうぷ。ふたりしてリバース・・・けろろ~
「ふう。エライ目に遭った」
コンビニで安い水を買ってうがい。これで少しは落ち着いた。帰るか・・・
しかしなんだ。昨日ユーチューブで見た、一昔前のゲーム機のCMみたいな展開だったな。たしかセーガーとかドリームキャストとか言ってたな。日本じゃ珍しい自虐CMとか言ってた気がする。
そうそう同じ会社の一世代前のゲーム機のCMも面白かったな。たしか、せがた三四郎だっけ?
益体もないことを思い出しながら、自宅前の交差点に到着。チカチカと渡らない側の横断歩道の歩行者用信号が点滅を始めるのが見える。
もうすぐ信号が、変わ・・・ったな。
俺と信英はゆっくりと横断歩道を渡り始める。
と「ぱぱぱぱーん」不意に鳴り響くクラクション。
「はあ?」
思わずクラクションが鳴る方を見る。
見ると、そこには交差点で強引に右折しようとした軽自動車と、それを避けようと咄嗟に右にハンドルを切ったトラックの姿が!
「ちょ、直撃ぃ!?」
どん
鈍い音と共に、俺と信英の身体はトラックに弾き飛ばされ、ごきりと背中から砕ける音が、これは信号機の鉄柱に背骨を砕かれた?・・・ちょっと待ってくれ。なんでこんなにリアルに・・・
「み、ミンチよりひでぇ」
トラックのバンパーに圧し潰されながら信英が叫んだ瞬間、俺は真っ白な世界に飛んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます