第4話 その2

「どーも、ゆーめいドリームです。実は僕ら現役高校生のコンビなんです。10代なんですよ」

「わたしはアラフィフですけどね」

「違うでしょ。なんで嘘つくの」

「フィフティーンのフィフだし」

「だったら合ってるけど。「アラ」はいらないでしょ」

「アラ。失礼しました」

「でね、僕ら高校生ってことで……」

「スルー?」

「休み時間とか教室にいると、クラスメイトの会話が聞こえてくることありませんか?」

「あーある~。聞きたくないのに聞こえてきちゃうんだよね」

「そんなとき、『あーこいつ知ったかぶりしてんな!』って思うことありますよね?」

「えー、例えを出してくれないと、ちょっとわかんないなぁ」

「もう!わがままアラフィフだな。例えばさ、クラスのギャルが会話中、ずーっと『おたまじゃくし』のことを『おじゃまたくし』って言ってたりすることない?」

「ないわ~。そもそもギャルは、おたまじゃくしの話なんてしないし」

「そうかもしれないけど「知ったかぶり」の例えで『おじゃまたくし』なんだけど」

「いや、そもそもそのギャルの会話って、彼氏とドライブしてたら、急にタクシーが割り込んできて、キャッ!『お邪魔タクシー!』って話でしょ。よくある普通の会話だよね」

「あーなるほどね……って、そうじゃなくて、わかりやすい例えが欲しいって言ったから」

「ぜんぜんわかりやすくなかった」

「あーすみませんね。じゃあ例えばさ、すごくたま~に「未曾有」のこと知ったかぶりして「みぞうゆう」って言う人いるでしょ」

「あ~いるね。それはよくいるね。すごくいるよね。また普通の話する気?」

「いや、これこそレアケースでしょ。ふつう女子高生が「未曾有」なんて言葉使わないし」

「もし使ってたら、それこそ「未曾有」の事態だよね」

「うまい!」

「普通!」

「言い返すなよ!もう時間がもったいないから、ネタやるよ」

「はい」

「今から僕が「こっそり会話を聞いてる男子」をやるから「知ったかぶりしてる女子」やってくれないかな」

「いいよ。あんたが「陰キャ」で、わたしが「陽キャ」ね」

「そんな設定ひとことも言ってないけど」

「うーん、できるかな~。普段わたし、知ったかぶりなんてしないからな~」

「お願いしますよ!演技なんで、一回だけ、一回だけでいいから」

「なんかイヤだな、そのお願いの仕方。はいはい、わかりましたよ。やりますよ」

「はい、それじゃはじめますよ。……あーくっそー、うっせーな。アイツらまた大声で喋ってるよ」

「あはは~!ウチら陽キャだからさ~!」

「うわ、あいつ自分のこと陽キャって言ってるよ」

「今日もね『ふとももシュシュ』つけてきたんだ」

「お、さすが陽キャ。太ももにシュシュつけてるんだ」

「ふとももに「アースジェット」を「シュッシュッ」って」

「それ『ふとももシュッシュッ』!しかもアースジェットなら『ふとももブシューブシュー』だから」

「でさ~インスタ見てくれた?あれ渋谷の『マルキュー』で買ったんだ」

「さすが陽キャ。渋谷の109でオシャレなものを買ったんだな。何買ったんだ?」

「チョコクロワッサン」

「それ『サンマルキュー』だよ!確かに渋谷にあるけどさ、そもそもサンマルクをマルキューなんて略さないから」

「でね、ついでに原宿寄って、あれ飲んだんだ」

「おっ、もしかして……」

「カピバラ」

「タピオカだね。『ピ』しか合ってないね」

「で、飲んだらチクチクしてさ」

「えっ?ホントにカピバラ?」

「違った。プニプニだった」

「チクチクとプニプニ!1文字も合ってないね!ほらほら、だんだん友達が『こいつ知ったかぶりじゃね?』って顔で見てるぞ」

「でねでね、家に帰ってから『ジュンテンドースティッチ』で『つぶつぶの森』やったんだ」

「もういろいろ間違ってんな!」

「あ、ごめんごめん。違った。間違えた。『あつまれどうぶつの森』を略して、みんな言ってるよね。略して『あま森』」

「冷てっ!って、誰も言ってねえよ!もう知ったかぶりはやめろ!」

「失礼しました~」

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