跳躍

ヘカトンケイルは外に出ると只管ハケでマグロ寿司に何かを塗っていた。


「・・・ヘカトンケイル、 一体何をしている?」


オーモリが見かねて尋ねた。


「時間が無いのならば美しい彫刻寿司を作れない、 しかし手持無沙汰だ

ならば簡単に出来る創作活動をする必要があるだろう?」

「聞かれても困るんだが・・・それで?」

「ハケでマグロにつやを出す為にニスを塗っている」

「お前は一体何をしているんだ」

「気持ち強くなる気がする」

「本当に一体何をしているんだ」


ぎゅるんとヘカトンケイルが振り返る。


「如何した?」

「戦闘音だ、 少し行って来る」


そう言うなりヘカトンケイルは跳躍した。


「なんだと!?」


オーモリは驚愕した、 明らかに人間が飛べる高さと距離では無い。

闇のパワーか!!

ヘカトンケイルは跳躍、 飛行しながら戦場に辿り着く着地の前に

大量のニスを塗ったマグロ寿司の乱舞で敵を薙ぎ払った!!


「ぐわっ!?」

「ぎゃ!!」

「何だ!?」


一人物影に隠れられたが二人仕留めた。


「ヘカトンケイル様!!」

「離れて居ろ」


交戦中だった部下のソルジャースシを下がらせるヘカトンケイル。


「隠れず出て来い、 スシブレーダーならば戦うのが美しいと心得よ」

「っ!!」


挑発されたジューンの手下のヤミ・アプレンティス

"カニカマ"はスシブレードを射出した!!

繰り出したのはカニカマである!! 蟹の模造品であるカニカマ寿司!!

カニカマに比べ大分弱い!! しかしその安さから大量にカニカマを持っていたのだ!!

次々と繰り出されるカニカマ!!


「ほう、 ならばこちらも物量で勝負だ」


カニカマが列となって襲い掛かるのならばヘカトンケイルの攻撃は正に波頭だった。

ヘカトンケイルのマントの中から大量に飛んで来るマグロ寿司

全てにニスが塗られつやつやと輝くその姿はまるで天の川の様だった・・・


「美しい・・・」


カニカマの最後の言葉はそれだった。

カニカマは文字通り血肉一つ残さずに消滅したのだった。


「弱いな、 醜い相手だった」


侮蔑の言葉を吐くヘカトンケイル。


「ヘカトンケイル様!! 助かりました!!」


ソルジャースシが礼を言う。


「ふむ、 お前一人か?」

「えぇ、 敵は情報を私から奪う為に仲間を殺されました」

「なるほど、 分かった、 では・・・ふむ、 また戦闘か」

「え?」

「離れて居ろ」


言うや否や再び跳躍するヘカトンケイル。

更なる戦場を見つけた様だった。


「ふむ、 今度は美しい敵だと良いな」


ヘカトンケイルはそんな願望を抱きながら攻撃を開始するのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る