喧噪の港

ウェッジ達は港の方に向かった。

港ではズタボロになった船の残骸を海から引き上げたり

大怪我を負った船員を運んだりしながら魚の引き上げが行われていた。

絶叫を挙げている船員や俯いて泣いている男も居る。

血の匂いが辺りを包んでいる、 魚の血だけじゃない、 人間の血も流れている。


「ほら、 退いた退いた!!」


魚を積んだ担架がウェッジの前を通る。


「いやいや、 待て待て、 魚を持って来ている場合じゃねぇだろ

怪我人を先に運べや」


ウェッジは思わず突っ込んでしまった。


「オタクらも出稼ぎ?」

「ん?」


港の作業員の一人が尋ねる。


「いや・・・出稼ぎじゃない」

「あ、 そう、 兄さん良い体しているから良い金になるよ」

「気持ち悪いな・・・と言うか変な船が出ている間は漁には出ないって聞いたぞ?」

「あぁ、 地元の連中は出ねぇよ、 危ないからな

でも何も知らない出稼ぎの連中は喜んで漁に出ているよ」

「・・・・・」


ドン引きするウェッジ。


「アンタも如何だい? 三ヶ月で一千万は稼げるぞ?」

「悪いが断る、 命の方が大事だ」

「そうかい・・・」


ウェッジの後ろの二人をちらちらと見る作業員。


「何だ?」

「いや、 イイ女だなと思って」

「殴り飛ばすぞ」

「ははは、 悪い悪い」

「・・・兄さん、 少し怖いわ

荒くれ者が居ない食べ物を食べる場所は無いかしら」


シャルは別に怖くは無いが情報を得る所と言えば飲食店である

ここで飲食店の情報を手に入れるのは当然である。


「んー、 アマギゴエって店なら閑古鳥が鳴いて居るぜ?」

「それはちょっと・・・閑古鳥が鳴いているのは味が悪いそうなイメージが」

「いや、 評判は良かったんだ、 この前までは」

「この前まで?」

「アマギゴエの看板娘が闇のスシブレーダー達の抗争に巻き込まれて

店主が闇のスシブレーダー嫌いになっちまってな」

「・・・・・ふむ・・・」


ウェッジは少し考えこんだ。


「他に店は有る?」

「あぁ、 逆に荒くれ者が多過ぎて揉め事が起こらない

ニョハネスって酒場が有るが、 でも」

「多過ぎて揉め事が起こらないって如何言う事?」

「荒くれ者が多過ぎるから逆に秩序が出来上がるって仕組みだ」

「カオスな店だ・・・行ってみるか?」

「そうね・・・行ってみましょうか・・・」


人が多いのならば集まる情報も多いだろうと推測しニョハネスに向かってみる。


「あ、 夜しか空いてねぇぞ?」

「・・・まだ昼だからじゃあアマギゴエとやらに行ってみるよ、 ありがとう」

「如何いたしまして」


アマギゴエに向かうウェッジ達三人組だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る