禁じられた山に向かう騎士達

ミンガンのレーア伯爵令嬢が住まうサイト城では

ダークネスシ帝国の闇のスシブレーダー達に占拠されていた。


「何ぃ?  レーア伯爵令嬢の護衛部隊の隊長が居ねぇだぁ?」


サイト城に侵攻した侵攻部隊隊長、 チキンヘッドはその名の通りの鶏の頭をしている。

正に鶏冠に来ながら部下に聞き返した。


「は、 はい!! 如何やら数名を連れ出して禁じられた山へ向かった模様です」

「禁じられた山ぁ? 何だそりゃあ?」

「何でも山の神とやらが居て力を与えてくれるとか何とか・・・

噂によると山の神の怒りに触れて死んでしまった者も居るとか」

「下らねぇな!! 神とやらが居たのならばこの世界は魔王に侵略されてねぇわ!!」


コッコッコと高笑いするチキンヘッド。


「いかがいたしましょうか」

「レーア伯爵令嬢は既にジューンが捕えているんだろう?

既に勝敗は決した、 我々はここでお宝とやらとご対面と行こうじゃ無いか」

「では追撃は無しで・・・」

「いや、 とりあえずソルジャースシを三人程送れ」

「はっ、 編成は如何しましょう」

「カルビとウィンナーで」

「分かりました」


ソルジャースシとはダークネスシ帝国の

闇のスシブレーダー達の中でも最下級のスシブレーダーである。

最下級と侮るなかれ、 一般的な村人でも闇のスシブレーダーになれば

戦闘職の騎士と同等の存在になる、 そして帝国から支給されたスシブレードを装備すれば

騎士等容易く捻じ伏せられる存在になる。

とは言えソルジャースシは最下級スシブレーダー。

一般的な闇のスシブレーダーたるヤミ・アプレンティスよりも弱い存在である。

チキンヘッドの階級はヤミ・アプレンティス、 多少闇のスシブレーダーとしての力は有るが

まだまだ上位のヤミ・マスター、 スシの暗黒卿には及ばない。

文字通りひよこである。


「コッコッコ!! この城に隠されたお宝さえ有れば俺も・・・コッコッコ!!」


サンシャイン王国には建国以前より守り抜かれた宝が有ると言う。

その宝を使えば物理法則等容易く捻じ曲げられるらしい。

チキンヘッドはサイト城にある宝を使い上位の闇のスシブレーダーになるつもりなのだ。

まだ見ぬ未来を夢想しながらチキンヘッドは遥か彼方に見える山を見る。

禁じられた山、 その山を見つめていた。


「神頼みをした時点で人間は終わりなのだよ・・・コッコッコ!!」






高笑いをしているチキンヘッドの眼下、 街道を走る数匹の馬。

部隊長ハルトとその部下達である、 成生でレーア伯爵令嬢御付きの執事バルトも居る。

彼等は禁忌とされる場所である禁じられた山に向かっていた。


「はぁ・・・はぁ・・・」


執事バルドは慣れない馬の扱いに苦戦しながら馬を走らせていた。


「追手が来る前に急ぐぞ!!」

「「おお!!」」


ハルトは部下達に檄を飛ばす。

禁じられた山、 神によって様々な恩恵が得られる事も有るが厄災も振りかかる。

神の意志一つで発狂する事も有るのだ。


「でも本当にそんな事が有るのかねぇ・・・」


ハルトの部下であるゴハン・ソロが不審がる。


「ゴハン、 お前さんは傭兵で最近北から実際に見た事が無いから信じ難いだろう

だが実際に有った事なんだ」


騎士の一人であるハウが馬で並走しながら喋る。


「あの山に入ると如何なる摂理かは不明だが知識が頭の中に入るのだ

大昔に拳法の知識が頭に降りて来た者は天下無双の拳法家になった」

「伝説とかそう言う事じゃねぇのか?」

「少し前にも魔王の侵攻により実験が行われた

その結果、 何処かの森の正確な見取り図の知識を得たり

この国の脱税者のリストを把握したり、 知っちゃいけない事を知ったのか自殺したり・・・

色んな奴等が居たんだ」

「眉唾な話だけどなぁ・・・」

「今の俺達にはその眉唾にすがるしかない・・・!!」


ハウが振り向く。

軽鎧に身を包んだソルジャースシが馬に乗ってやって来た!!


「畜生!! 追手だ!!」

「もう来たのか!! くっそ!! ハルトの旦那!! 如何するよ!?」

「部隊長!! スシブレードの射程に入られたら終わりです!!

我々が囮になるのでその隙に行って下さい!!」


数名の騎士がその場に留まる。


「くっ・・・すまない!!」

「ハルト様!! 囮ならば私が!!」


バルトが叫ぶ。


「いや、 レーア様御付きの執事を危険な目に遭わせているだけでも申し訳無いのに

死ぬような目に遭わせる訳には行かない・・・」

「そんな!!」

「バルト!! 其方には戦闘以外に出来る事が有るだろう!! 裏方は其方に任せるのだ!!」

「!!」


バルトはそれ以降黙った。

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