第29話 宿題合宿

 何日か家族と過ごし、地元のグルメを堪能した桜子はヒロに会いたくて神楽坂の別邸行きを決めた。


 家族は反対しなかった…というか一緒に来た。神楽坂は皇居が近いので桂子かつらこも馴染みがあり、家族お気に入りのエリアだ。

 ヒロの地元の春狩領の目黒からは南北線で約20分の近さだ。

 宿題合宿の名目できよ真太郎しんたろうも招待したので4人で宿題を片付けることになった。



「助かったよ、常陸ひたちの家にいると弟たちが邪魔で宿題どころじゃ無いから」


暴れん坊な弟が2人いる真太郎が疲れていた。


大二郎だいじろう三郎さぶろうが2人で遊んでいてくれたら楽なんだけど大二郎だいじろうはサッカーで日中はほとんどいないから俺1人で三郎さぶろうの相手をして、大二郎だいじろうが帰ってきたら大二郎だいじろうの相手だからな…あいつら全然疲れないんだ、おかしいよ」

 真太郎しんたろうが相当疲れている。


「僕も桜子ちゃんも一人っ子だから兄弟がいるのは羨ましいけど真太郎しんたろう君のところは大変そうだね」

「厚かましくお邪魔しちゃってすみません、もう…本当に疲れてて…助かります」


 良く気のつく栄一えいいちがエプロン姿で冷たい麦茶を持って来た。


真太郎しんたろう君の顔色が悪過ぎて、おじさん心配だよ…」

 本当に顔色が悪いし、やつれてゲッソリしている。

真太郎しんたろう君は宿題よりも静養が必要なんじゃない?」


「いえ常陸ひたちの家に戻ったら宿題に取り掛かるのは無理なので、こちらに滞在させて頂いている間に全部終わらせないと…」

 そう答えながら真太郎しんたろうがノートと教科書とノートパソコンを取り出す。


「あら? いつもと違うパソコン」

 真太郎しんたろうのノートパソコンが新しくなっていることに桜子が気がついた。


「前のは帰省した初日に弟たちに壊された。メーカーに問い合わせたら修理不可能だって。4月の入学に合わせて買ったばかりなのに…それでうちの両親も泊まり込みの宿題合宿に来る許可をくれた」


よく見れば教科書にも落書きされている。


「…終わらせるように頑張りましょうね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る