第2話 入学直前のヒロ
「何ですって?」
少し影のある美少年が不機嫌そうに問う。
「言った通りだよ、ヒロ」
「………」
ヒロが父親を睨む。
「桜子ちゃんと仲直りしなさい。四方を武蔵領に囲まれた我が
いつになく厳しい父親の言葉に言い返せないヒロ。
「来週、
領主の子弟が通う大和学園は大和(奈良県に相当する)にあり、全国の領地から領主の子弟が集まる。13歳で入学して卒業は18歳だ。
実はヒロは入学を心待ちにしていた。
なぜなら疎遠になっていた桜子とクラスメイトになり毎日一緒に過ごせるし、いつでも可愛い桜子を見ることが出来るからだ。
ちょっとした行き違いから疎遠になり、現在は公式行事で年に何度か会うくらいしか出来ないが桜子は世界で一番可愛い。間違いなく桜子が一番だ。
「梅子…、おいで」
尻尾をぶん回して駆け寄る愛犬の梅子を抱き寄せてギュッとして、梅子の頭のてっぺんにチュッとした。
いつも全力で好きと訴えてくる愛犬の梅子。その全力好意や素直な尻尾が桜子を彷彿とさせるから可愛いくてならない。
もらわれてきた子犬を桜子と名付けて抱きしめているところを父親に見られたことは忘れたい黒歴史だ。(父親に諭されて梅子に改名した) もちろん世界で1番可愛いのは桜子で、2番目に可愛いのは梅子だ。
「お前…再会した桜子ちゃんに同じことしちゃダメだぞ。桜子ちゃんは犬じゃないからな」
「……分かってる」
本当に分かってるのかな…と不安でならない父だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます