寝顔

こっそりと貴女の寝顔を見つめている時間は、私にとって至福のひと時。


先輩は昼休憩になると更衣室で昼寝をする。仰向けでタオルを目の上に乗せるのが、その時の常だ。


薄暗い部屋で、彼女の胸がゆっくりと上下する。白くて整った肌と、熟れたさくらんぼみたいに瑞々しい唇のコントラストに、視線が吸い寄せらていく。

それで胸がぎゅう、と押し潰されそうになる。



美味しそう、美味しそう。絶対に美味しそう。その唇絶対に美味しそう。


キスしたい、キスしてみたい。ちょっとでいいからキスしてみたい。



無防備な唇に欲が疼いてしまって、出来もしない口付けを切望していた。



頭中が邪念で落ち着かないままに、私も新井さんの横に静かに寝そべってみる。



距離がさっきより近くなったのもあって、寝息がすーすーと微かに聞こえた。目を閉じてみたけど、心臓はまだ忙しく動いて煩い。



隣でお昼寝、なんだか幸せ過ぎて落ち着かないな……。


貴女との距離は20cm。

少し手を伸ばせば0cm。

そして、少し顔を近づければ0cm。


リアルにやっちゃえば、もうこの職場には居られやしなくなるけど。


ふぅーっ、と息を吐き切って片腕で目を覆った。



好き過ぎて、困る。けど、側に居れるだけで堪らなく幸せだと沸々と思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る